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女性の自殺者が急増の衝撃…カウンセラーに聞く電話相談の実態と最善の対処法

文=高橋よしこ/ライター
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「gettyimages」より

 新型コロナ禍に見舞われた2020年は、自殺者数が急増している。警察庁の発表によると、1月から10月末までの総数は1万7219人で、前年同期を160人上回った。また、10月の自殺者数は2153人(前年同月比39.9%増加)で、特に女性が前年同月比83%と増えていることが衝撃を呼んだ。

 芸能人の自殺も相次いだ今年、それを伝えるニュースの最後に「一人で悩まずに相談してください」と、「いのちの電話」などの連絡先が記されていたのを目にした人も多いだろう。実際、どのような相談が多く、またどのように対処しているのか。電話相談を行っているカウンセラーの山崎かおるさんに話を聞いた。

無意識に「死にたい」と送っていた女性

「開口一番『死にたい』と口にされる電話の向こうにいる方のつらさ、苦しみに寄り添うことが何より大切です。家族や友達、恋人など近しい人に言えない、話しても受け止めてもらえない、話したら迷惑かなと考え、死にたいと思うほどのしんどさを抱えている人は本当に多いです。語弊があるかもしれませんが、あえて言いますと、死にたいと思ってしまうことを否定も肯定もせず、ただ寄り添い、受け止めることが必要だと思います」(山崎さん)

 これが、山崎さんの信条である。苦しんでいる相手の言葉を肯定も否定もしない。そして、黙って話を聞いてあげることで、相談者の精神的ストレスは和らいでいく。「そのための電話相談です」と山崎さんは語る。

 そんな山崎さんに、印象に残っている相談内容を聞いてみた。

「家にいたくなくて外を歩いている、という方からのお電話でした。死にたいなどと口にはしませんが、話の中で三浦春馬さんの一件が出てくるなど、気になる相談でした。家庭内でストレスを抱えており、その源は旦那さん。子どもたちとはとても仲が良く、いつも自分の味方をしてくれるそうで、子どもへの愛情の深さは感じました。

 相談者は、お子さんが小さいときにうつ病を患ったそうです。子育てに忙しく通院をやめ、お子さんのためにがんばり続けてきたものの、ここにきてうつの症状が再び顔を出してきました。親友に『死にたい』とLINEをしたら『何を言っているの! 子どものことを考えなさい!』と叱咤され、我に返ったそうです。無意識に送ったLINEを客観的に見つめることができたようで、『怖くなった』とこぼしていました。『お子さんたちのためにも、まずはあなたの健康が一番ですよ』と病院での受診を勧めると、行くことを約束してくれました」(同)

 このように、相談者本人も気づかない形で、いわば無意識に死を選ぶ人は少なくない、と山崎さんは語る。そこに至るまでには、計り知れないほどの葛藤があるのだろう。

 この相談者は、子どもを育てなければならない親という自分の立場を自覚できたのか、最後には「聞いてもらって本当に良かった」と謝辞を述べたそうだ。

LGBTの男性が見せた胸の内

 また、恋愛について悩んだ末の相談も少なくない。

「夜中の2時くらいに『昨日、首吊りを図ったが失敗して、一晩警察のお世話になりましたが、眠れないんです』というLGBTの男性からの入電がありました。40代半ばで、好きになる相手は年下が多く、お付き合いしても人生を共に過ごすパートナーになることはほとんどない。このまま一生をひとりで生きていくと思うとさびしくて不安で……と自殺企図に至ったそうです。『彼氏といるときはどのように過ごしていましたか?』と質問をすると、『部屋を掃除して、恋人が好きな映画を観ながらゆっくり過ごすことが日課になっていた』とうれしそうに話してくれました」(同)

 相談者が話すことを聞いた上で、質問を交えて会話のキャッチボールをする。これも、心の奥の孤独に寄り添うために大切なことだ。そうするうちに、相談者の声のトーンは次第に明るくなり、笑い声も交じり始めたという。

「『本当は私、映画の趣味は恋人と合わなかった。無理してアクション映画を観ていて、自分の好きな恋愛ものを我慢してたの』と、これまで自分だけの中に隠していた本心を話してくれました。昨夜、自殺企図をした人とは思えない一面が出たことに少し安堵しました。LGBTの方のコミュニティはそうでない方々のコミュニティより狭く、相談相手もいなかったようです」(同)

 そして、「人間は好きになった人のために一生懸命何かをしてしまうものだけど、我慢しないで、これからは自分を一番にかわいがってあげよう」と話すと、力のある声で「そうします」と言って電話を終えたという。

「黙って聞き役に徹する」カウンセラーの役割

「お話の中で『私の悩みなんて他の人に比べたら小さい、大したことないです』と言う方がよくいらっしゃいますが、そんなとき、私は『悩みに大小はないです』とお伝えしています。生きるのがしんどい、しかし、何とか乗り越えよう。そう必死にもがいているからこそ、電話をかけてきます。場合によっては、『これからはがんばらなくてもいい時代になっていく』と伝えています。

 はっきり言えば、こちらからのアドバイスなんていらないのかもしれません。なぜなら、相談者の方々は、しんどさをひとりで抱えてきたから、ただ聞いてほしい、受け止めてほしい。だからこそ、電話をしてくるのだと思います。私もそうですが、嫌なことや落ち込んだことがあったら、誰かに聞いてもらうことでホッとしますよね。黙って聞き役に徹することが、カウンセラーの役割だと思います」(同)

 身近に深い悩みを抱えた人がいる場合、私たちは対処に迷うこともあるが、ただ黙って聞いてあげることが、ベストな方法なのかもしれない。

(文=高橋よしこ/ライター)

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