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ローランド上場廃止→再上場で、米投資ファンドはどのように巨額利益を得たのか?

文=編集部

MBOをめぐり創業者と経営陣が対立

 創業者は故・梯郁太郎氏。電子ピアノやドラム、ギター、シンセサイザーなど、世界に通用する電子楽器を数多く世に送り出した。1980年代に演奏情報を電子信号に変換して伝送するための世界共通の規格「MIDI(ミディ)」を生み出した功績が評価され、2013年、米グラミー賞のテクニカル・グラミー賞を日本人として初めて個人で受賞した。

「スタンダードがないと業界は発展しない」との信念のもと、MIDIを無料で公開した。社内外で反対意見が多数あったが、無料で公開したため一気に世界で普及。楽曲制作や音響、カラオケなどさまざまな場面で活用される世界の共通言語のひとつとなった。

 創業者の梯氏と社長の三木純一氏が対立した。三木氏ら経営陣が米投資ファンド、タイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んでMBOを計画していることに対し、梯氏は「MBOはタイヨウによる乗っ取りだ」と主張し、反対した。

 両者の対立は、ローランドの子会社、ローランド ディー.ジー.(DG)(浜松市、東証1部上場)の経営をめぐってだった。DGは広告・看板向けインクジェットプリンターで世界首位級の優良企業だ。ローランドはMBOに先立ち、DG株の一部をDGに売却。DGはローランドの連結決算の対象から外れた。

 14年6月27日、ローランドの定時株主総会に車イスで出席した梯氏は「MBOをやると、DG(の株)もそのままついてくる。(タイヨウにとって)こんなおいしい話はない。それ、わかっていますか」と質問。MBOではドル箱のDGを手に入れるタイヨウだけが利益を得る、「投資ファンドによる乗っ取りだ」と反対したわけだ。三木社長は「DGに関しては、タイヨウは経営権を取るつもりのないことが表明されている」と反論した。

 三木社長が代表取締役を務める特別目的会社が実施したTOBは成立。ローランドは14年10月、上場廃止となった。

タイヨウは労せずしてローランドとローランドDGを手に入れた?

 上場廃止後、買い付け会社とローランドは合併し、新しいローランドが発足した。タイヨウによるローランド買収作戦は、すべてうまくいった。買い付け会社はTOB資金416億円のうち325億円を、りそな銀行から借りた。残り91億円をタイヨウが出資した。ローランドがDG株をDGに売却した代金114億円は借入金の返済に充てられる。だから、りそな銀行は気前よく融資した。

 ローランドはDG株の20%を売却した後も、DGの議決権の25%を保有していた。DGが取得した自社株には議決権がない。タイヨウは保有していた分と合わせると、DGの議決権の割合は37%に高まり、拒否権をもつ圧倒的な大株主になったわけだ。

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