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長谷川高「“ガラガラポン”の時代を生き抜くための経済・投資入門」

私が騙された“元経産省・ハーバード卒”詐欺師の手口…投資の「儲け話」は詐欺の証し

文=長谷川高/長谷川不動産経済社代表
私が騙された“元経産省・ハーバード卒”詐欺師の手口…投資の「儲け話」は詐欺の証しの画像1
「Getty Images」より

不景気になると詐欺的な話が増えてくる

 景気が悪くなってきました。そうすると必ず増えてくるのが詐欺師と詐欺的なうまい話です。一般的には、そんな輩や話に引っかかることはないと思われるかもしれませんが、いまだ古典的な「M資金」に有名経済人が乗ってしまうことからわかるように、現実の詐欺話は実に巧妙なものが多いのです。近年では、若者が若者を都心のカフェ等で詐欺的商法に勧誘しているのをよく見かけます。誠に残念なことです。今や新宿や赤坂、六本木等のカフェに行くたびに見かけることができます。

ある天才的詐欺師の話

私が騙された“元経産省・ハーバード卒”詐欺師の手口…投資の「儲け話」は詐欺の証しの画像2
『不動産2.0』(長谷川高/イースト・プレス)

 さて今回は、まず最初に、かつて私自身も騙されそうになったプロの詐欺師の話をご紹介したいと思います。

 不動産業界に四半世紀以上おりますと、詐欺師的な人には何度となく会ったことがあります。詐欺的な「プロジェクト」を含めれば相当な数に……。しかし、大体が詐欺的な話は、常にうま過ぎる何かが存在しますし、また、そういったものを持ち込む方の顔や目つきは、やはりどこかおかしいものです。よって、個人的には、そういった「うまい話」にはひっかからないと自信があったのです、が。

突如披露宴に現れた元経産省・ハーバード卒

 以前、後輩の結婚式にお招きいただき、ある地方都市に行ったことがあります。その友人から事前に「式の時の長谷川さんの隣は鷹林さん(仮名)が座りますので、ぜひ名刺交換してください」と言われていました。この鷹林氏はその地方都市の名家に生まれ、京都大学を出て経産省に入り、米ハーバード大学大学院に留学しMBAを取得。その後、会社を起業するために経産省を辞めた事業家であり、当時日本に進出してきた米国系大手企業専門の経営および建築コンサルタント会社を経営しているということでした。私の友人は、鷹林氏とあることで知り合い、偶然出身地が同じであったため意気投合し、さらには同氏に気に入られすでにいろいろと仕事をもらっているというのです。友人は設計事務所を経営しており、鷹林氏がもってくる外資系企業の東京本社ビル計画や箱根の迎賓館建設計画等のプランを入れているとのことでした。「随分すごい人と知り合ったな! ぜひ名刺交換させてもらうよ。ありがとう!」と。当時、不動産バブル崩壊により、景気はドン底で、久しぶりに聞く景気の良い話でした。

 しかし、式が始まっても鷹林氏の席だけが空席のままです。「忙しい人だから遅刻かな」と思っていると、フランク永井のような声で「遅れてすみません」と突如現れました。まさに見るからに品のある元エリート官僚といった感じの紳士でした。銀座の英國屋で仕立てたようなスーツにネクタイ。特にネクタイが七色に輝いていたのをよく覚えています。また、経産省を若くして飛び出す起業家としての「胆力」も、その体と顔つきに感じられました。「これはすごい! 確かにすごい人物だ!」。

 同氏が登場して、何やら披露宴そのものが混乱し始めました。「しばしご歓談を」の合図で、業界関係者(建築、設計、不動産関係者など)は新郎新婦に誰も酒を注ぎに行かずに、その鷹林氏のところに長い列をつくりました。名刺交換を待つ列です。異様な光景でした。

 当然私も並びましたが、新郎の大学時代の有名指導教授までも、なぜか列に加わっていました。すごいオーラだったのです。式の途中で私は隣席であることを良いことに、何かと話し掛けては「なるほど! すごいですね!」と感服し大きくうなずいていました(今、冷静に考えると、どれもどこか辻褄が合わないおかしな話ではあったのですが……)。

「東京に戻りましたら、再度ご挨拶にお伺いさせていただきます」と言い、その後、東京に帰り、年末でしたが新婚の友人に「鷹林さんの事務所にぜひ一度一緒に行ってくれ」と依頼しました。しかし、忙しいのかなかなかアポが取れず、いつの間にか年が明けてしまいました。新年を迎え、再度依頼の電話入れました。「お前、忙しいのはわかるけど、早くちゃんともう一度紹介してよ!」と(相手が後輩なのでこんな口調でした)。

 すると後輩曰く――。

「実は……、長谷川さん、昨年末から少しずつわかってきたのですが、鷹林は前歴のある詐欺師ということがわかりました」

「えっ!?」

「学歴も経産省も全部嘘でした」

「お前と同じ○○県出身というのは?」

「それは本当なのですが、実家は資産家ではなく牛乳屋で、高校もろくに行っていないようで」

「えっ〜? 牛乳屋? 山ももっているんじゃないの! しかし、なんで詐欺師だとわかったの?」

「約1年前からスタートしているプロジェクト(外資系企業の本社建設等々のこと)が全部何一つとして進まないので、疑問に思った(コンサル契約している)ゼネコンが独自で調べたら、前歴のあるプロの詐欺師だと」

「実害は?」

「うちは人件費だけですが、ゼネコン各社は一社当たり数千万円のコンサル料をすでに払っていまして、総額数億円。彼にやられていました」

 その鷹林氏はすでに逃亡し、その後、八王子の山の中のアパートに家族と隠れているのを発見したが、すでに所持金は数万円のみだったと。明らかにこれは詐欺行為ですが、詐欺を法的に立証するのは非常に難しいそうで、ゼネコン各社は損害賠償請求も諦めるしかないと。

すぐに現場復帰していた詐欺師

 しかし、この話には続きがあり、この鷹林氏(仮名)はその後「流通業界専門のコンサルタント」になって世間に復帰しました。大手一流物販店がいくつもクライアントに付いており、もちろん社名も本名も変えてです。さらには本も出版しています。

 ところがどっこい、上には上がいるもので、同氏から建築コンサルタント時代に被害にあった「あちらの世界」の方が一人いて、その方だけは、その鷹林氏から月々それなりの顧問料を取っているらしいのです。過去の彼の経歴をばらして再度廃業に追い込むよりも、このまま生かして顧問料をもらうほうがメリットがあると踏んだようです。

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 私は、自分は人の真贋を見抜けるほうだと思っていたのですが、あの詐欺師だけは少し話しただけでは、1%たりとも見抜くことはできませんでした。まさに雰囲気、話術、天才的詐欺師でした。あんな人間が不動産取引に現れたら、私は見抜くことができるでしょうか? 今なら見抜けると思いますが、いやそう思いたいです。

詐欺的な投資話の見分け方

 これからも皆さんの前に前述のような天才詐欺師が現れることはないとは思いますが、詐欺的勧誘、特に詐欺的な投資話は繰り返しやって来ると思います。その簡単な見分け方をお伝えします。

(1)向こうからやって来る投資話には原則乗らない。

 うまい儲け話は、向こうから、それも無料でわざわざやって来ることはありません。芸能人やスポーツ選手がよく騙されるのは「自分が特別な存在だからこんなうまい話が集まるのだ」と100%の勘違いをしているからなのです。とにかく、向こうからメールや電話、DMでやって来るような話には乗らないことです。

 もしも皆さん自身が、ものすごい儲け話を持っていたとしたら、広く不特定多数の他人に話すでしょうか? さらには、こちらが経費を掛けて募集などするでしょうか? 証券会社が売っているような投資商品でも、旨味のあるように見えるものは(あくまでそう見えるだけですが)募集の経費をほとんど掛けずにすぐに完売してしまうものです。

(2)「絶対儲かる。100%損はしない」といった言葉を使う方の話は避ける。

 金融や投資を多少なりとも勉強したならば、この世に絶対うまくいく儲け話や100%リスクのない投資といったものが存在しないことは常識なのです。そうであるのにもかかわらず、この種の言葉を使うということは、その人間がまったくの素人であるか、または確信犯であるのは明白です。私ならその言葉が出た時点で席を立ちます。

(3)信頼できる兄弟や親友が持ってきた話でも信用しない。

 ビジネスにおいては、一般的にその話を誰がもってくるかで、その信憑性を判断することが多いです。私も同じです。しかし、実は、その親友や兄弟親戚もすでに騙されて信用しきっていることが多いのが、詐欺行為の怖いところです。これはまさに新興宗教の勧誘と同じ構図です。仮にあなたの恩人が持ってきたとしても、まがい物はまがい物でしかないのです。

(4)詐欺の被害にあっても諦めない。取り返せる時もある。

 私の知り合いが、ある巧妙な投資話を信じて約4億円を銀行から借金をして詐欺的な事業に投資してしまいました。騙した詐欺師はそれまでも有名芸能人を何人も騙してきたある意味プロでした。その人間の生まれの良さと高学歴だけは本当でしたが、事業計画はすべて架空のものでした。

 しかし、回収を諦めずに、あらゆる法的な手段も駆使しながら、数年かけてこの詐欺師から3億2000万円以上を取り返すことができました。幸運もありましたが、取り返すことを諦めないことが重要だと強く感じました。

 残念なことですが、不景気になると、その不景気につけ込んだ、かつタイミングをはかったような詐欺話が増えてきますので読者の皆様もご注意ください。この苦境をどうにか一発逆転できないかといった気持ちにつけ入ってくるのです。

(文=長谷川高/長谷川不動産経済社代表)

長谷川高/長谷川不動産経済社代表

長谷川高/長谷川不動産経済社代表

東京生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。
大手デベロッパーにて、ビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わり、バブルの絶頂期からその崩壊と処理までを現場の第一線で体験。 1996年に独立。
以来、創業から一貫して顧客(法人・個人)の立場で不動産と不動産投資に関するコンサルティング、投資顧問業務を行う。また、取引先企業と連携して大型の共同プロジェクトを数多く手掛ける。
自身も現役の不動産プレイヤーかつ投資家として、評論家ではなく現場と実践にこだわり続ける一方で、メディアへの出演や執筆、講演活動を通じて、難解な不動産の市況や不動産の購入・投資術をわかりやすく解説している。
長谷川不動産経済社

Twitter:@hasekei8888

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