ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
同氏が登場して、何やら披露宴そのものが混乱し始めました。「しばしご歓談を」の合図で、業界関係者(建築、設計、不動産関係者など)は新郎新婦に誰も酒を注ぎに行かずに、その鷹林氏のところに長い列をつくりました。名刺交換を待つ列です。異様な光景でした。
当然私も並びましたが、新郎の大学時代の有名指導教授までも、なぜか列に加わっていました。すごいオーラだったのです。式の途中で私は隣席であることを良いことに、何かと話し掛けては「なるほど! すごいですね!」と感服し大きくうなずいていました(今、冷静に考えると、どれもどこか辻褄が合わないおかしな話ではあったのですが……)。
「東京に戻りましたら、再度ご挨拶にお伺いさせていただきます」と言い、その後、東京に帰り、年末でしたが新婚の友人に「鷹林さんの事務所にぜひ一度一緒に行ってくれ」と依頼しました。しかし、忙しいのかなかなかアポが取れず、いつの間にか年が明けてしまいました。新年を迎え、再度依頼の電話入れました。「お前、忙しいのはわかるけど、早くちゃんともう一度紹介してよ!」と(相手が後輩なのでこんな口調でした)。
すると後輩曰く――。
「実は……、長谷川さん、昨年末から少しずつわかってきたのですが、鷹林は前歴のある詐欺師ということがわかりました」
「えっ!?」
「学歴も経産省も全部嘘でした」
「お前と同じ○○県出身というのは?」
「それは本当なのですが、実家は資産家ではなく牛乳屋で、高校もろくに行っていないようで」
「えっ〜? 牛乳屋? 山ももっているんじゃないの! しかし、なんで詐欺師だとわかったの?」
「約1年前からスタートしているプロジェクト(外資系企業の本社建設等々のこと)が全部何一つとして進まないので、疑問に思った(コンサル契約している)ゼネコンが独自で調べたら、前歴のあるプロの詐欺師だと」
「実害は?」
「うちは人件費だけですが、ゼネコン各社は一社当たり数千万円のコンサル料をすでに払っていまして、総額数億円。彼にやられていました」
その鷹林氏はすでに逃亡し、その後、八王子の山の中のアパートに家族と隠れているのを発見したが、すでに所持金は数万円のみだったと。明らかにこれは詐欺行為ですが、詐欺を法的に立証するのは非常に難しいそうで、ゼネコン各社は損害賠償請求も諦めるしかないと。
すぐに現場復帰していた詐欺師
しかし、この話には続きがあり、この鷹林氏(仮名)はその後「流通業界専門のコンサルタント」になって世間に復帰しました。大手一流物販店がいくつもクライアントに付いており、もちろん社名も本名も変えてです。さらには本も出版しています。
ところがどっこい、上には上がいるもので、同氏から建築コンサルタント時代に被害にあった「あちらの世界」の方が一人いて、その方だけは、その鷹林氏から月々それなりの顧問料を取っているらしいのです。過去の彼の経歴をばらして再度廃業に追い込むよりも、このまま生かして顧問料をもらうほうがメリットがあると踏んだようです。