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藤和彦「日本と世界の先を読む」

石油富豪国だったサウジアラビア、なぜ財政危機に?石油需要、世界的に減退の潮流

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員

 足元の動きとは対照的に、来年の原油需要は芳しくない。国際エネルギー機関(IEA)の予測は日量9691万バレル、OPECの予測は同9589万バレルであり、いずれもコロナ前の2019年の水準に回復しないと見込んでいる。新型コロナのパンデミック収束についてのメドが立たないことから、「来年の原油価格も1バレル=50ドル割れで推移する」との予測が出ている(12月1日付ロイター)。

 サウジアラビアの次期国王とされるムハンマド皇太子は、2016年から脱石油改革を進めようとしているが、実質的に破綻したといっても過言ではない状況となっている。財政危機に苦しむサウジ政府にとっての頼みの綱は、国営石油会社サウジアラムコからの巨額の配当である。2019年に国内株式市場に上場した同社は、原油価格急落の影響で収益が極度に悪化しているが、政府は「上場後5年間、毎年750億ドルの配当を行う」という上場時の条件を変更していない。

 このため、サウジアラムコは、国際金融市場での社債発行や資産売却を余儀なくされており、「同社の企業体力が毀損する」との声が上がっている。それでも「お金が足りない」ということで、サウジ政府は今年7月には消費税に当たる付加価値税を一挙に3倍の15%に引き上げ、その後も公務員手当の凍結などの追加措置を検討している。失業率も20年ぶりに15%を超えている状況を鑑み、格付け大手フィッチは「支出を大幅に削り、納税者の負担を増やす緊縮策は、2021年にサウジ国内に社会的、政治的な反動を生む」と警告を発している。

バイデン政権の誕生

 来年1月に米国でバイデン政権が誕生することも、サウジアラビアにとって頭が痛い問題である。国務長官に指名されたブリンケン氏は、早速イラン政府に対し「核合意復活に向けた外交交渉に戻る」よう呼びかけている。バイデン氏自身もイランのザリーフ外相(核合意の交渉責任者)と太いパイプがある。

 一方、バイデン氏のサウジアラビアに対する目線は厳しい。米国はオバマ政権以来、サウジアラビアのイエメンへの軍事介入に対する全面的な軍事支援を行ってきたが、バイデン氏は、悲惨な状況に陥っているイエメンの内戦を終わらせることに全力を挙げることになるだろう。バイデン政権の誕生に焦るサウジアラビアは11月中旬以降、イエメンでの空爆を繰り返してきたが、その反動でイエメンのシーア派反政府武装組織(フーシ派)の報復攻撃が激化している。

 サウジアラビア西部ジッダ港では、11月23日にサウジアラムコの石油施設が新型巡航ミサイル攻撃を受け、12月14日には停泊中の石油タンカー(シンガポール船籍)が爆発物を積んだボートに攻撃されている。「核開発で中心的な役割を果たしたとされるファクリザデ氏の暗殺に対するイラン側の報復の一環である」との憶測があるが、サウジアラビアをめぐる安全保障環境が悪化していることは間違いない。

 バイデン氏は、2018年のジャーナリスト・カショギ氏暗殺事件についても、サウジ側の対応に非常に懐疑的である。「内憂外患」の状況下で、ムハンマド皇太子が米国の「後ろ盾」を失うことになれば、サウジアラビアで「第2のアラブの春」が勃発してしまうのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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