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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

コロナワクチン接種すべきかどうかは具体個別の事例による…持病持ち高齢者は慎重に

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

 日本政府はファイザーから1億2,000万回分、モデルナから5,000万回分、アストラゼネカから1億2,000万回分の供給を受けることで合意している。これで全国民のワクチンが確保できたことになる。

 米英をはじめ、海外では中間解析結果で有効性と一定の安全性が証明されたため、緊急承認され、すでに接種が始まっている。12月18日、日本でもファイザーが厚労省に承認申請を提出し、早ければ2月中にも承認、接種が始まる予定だ。

高齢者では強い副作用の懸念

 では、我々はどうすればいいだろう。いくつかの場合に分けて考えてみたい。

 まずは私の場合だ。もちろん接種する。それは私が臨床医だからだ。日常的に持病を有する高齢者と接する。彼らはコロナに感染した場合、重症化するリスクが高い。どんな形であれ、患者にうつすのは避けたい。日本の審査当局が、一定レベルの安全性と有効性が担保されていると判断すれば、職業倫理的にも打たなければならない。このような状況は、介護職、営業職、接客業、教育関係者にも共通する。

 では、患者はどうだろうか。80歳で高血圧・糖尿病の男性から相談を受けたとしよう。このような患者はコロナに感染した場合、重症化率、致死率が高い。12月14日、米国の一部の州でファイザー・ビオンテックのワクチンの接種が始まったが、米疾病対策センター(CDC)が作成中の指針では、医師などのエッセンシャルワーカーに次いで、重い持病を抱える人と65歳以上の高齢者に優先的に接種することが検討されている。

 ただ、私は現状では、80歳の持病がある男性にワクチン接種を勧めない。なぜなら、高齢者は若年者ほどワクチンの効果が期待できず、一方、副反応が出た時に重症化しやすいからだ。12月10日米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」で公開されたファイザー・ビオンテックのワクチンの臨床試験の論文によると、参加者に占める56歳以上の割合は42%だった。彼らの55%が倦怠感、11%が発熱、39%が頭痛を訴え、38%が鎮痛剤の内服を要した。55歳以下では、それぞれ34%、1%、25%、20%と少なかった。高齢者ほど副反応が強いことがご理解いただけるだろう。もし、80歳の高齢者に接種した場合、どのような反応が生じるか想像がつかない。

 実は、ファイザー・ビオンテックのワクチンに限らず、コロナワクチンは副反応が強い。アストラゼネカのワクチンの臨床試験では解熱剤であるアセトアミノフェン1グラムを6時間おきに内服することになっていた。1日の総投与量は4グラムだ。日本での常用量は1回0.5グラム程度で、1日4グラムは最大許容量だ。

 このことは関係者の間では「常識」だ。11月18日、米科学誌「サイエンス」は、ファイザー・ビオンテックとモデルナのワクチンの接種には、強い痛みと発熱を伴うことを紹介する記事を掲載した。この記事には、モデルナの臨床試験に参加した43歳の人物が登場し、接種部位が「ガチョウの卵」のサイズまで腫脹し、38.9度の発熱があり、筋肉と骨が激しく痛んだという。この人物は、「一晩中電話の前に座り、救急車を呼ぶべきか迷った」とコメントしている。私は、このような副反応に耐えられない高齢者がいてもおかしくないと思う。

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23:30更新
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