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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

コロナワクチン接種すべきかどうかは具体個別の事例による…持病持ち高齢者は慎重に

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

 一般論として、高齢者の行動範囲は広くない。介護施設に入居している高齢者はともかくとして、接触する人も限られている。感染リスクは高くない。コロナワクチンの接種は、本人の体力や価値観を考慮した個別対応が必要であろう。

自己免疫疾患を有する人は慎重に

 では、持病を有する人はどうだろうか。高齢者についてはすでに述べた。若年者で持病を有する人の場合だ。若年者は体力があり、副反応が出ても耐えられる可能性がはるかに高い。一方、コロナに感染した場合、重症化しやすい。私は持病を有する若年者にはワクチン接種を勧めたい。

 例外は自己免疫疾患を有する人だ。コロナは自己免疫疾患を引き起こしやすい可能性が指摘されている。両者の関係を議論した論文は多数発表されており、筆者が米国立医学図書館データベース(PUB MED)で「COVID-19」と「自己免疫(autoimmune)」という単語をタイトルに含む論文を検索したところ、102報がヒットした(2020年12月15日現在)。このなかには一型糖尿病や重症筋無力症など、さまざまな自己免疫疾患が含まれる。

 ワクチン接種が人為的に疑似感染を誘導する以上、このような自己免疫疾患を発生させるリスクは否定できない。実は、免疫異常はワクチンの長期的合併症として有名だ。2010年米カイザーパーネンテワクチン研究センターの医師たちが「ワクチン」誌に発表した研究によれば、ワクチン接種後の自己免疫疾患の発症は、自己免疫性溶血性貧血の0.8/10万人年から自己免疫性甲状腺炎の54.1/10万人年まで幅広い。これら以外に、若年性関節リウマチ、ギラン・バレ症候群、横断性脊髄炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、一型糖尿病など多くの自己免疫性合併症が報告されている。

 コロナワクチンによる自己免疫疾患の疑い例もすでに報告されている。9月初旬、アストラゼネカのワクチンを接種した被験者が横断性脊髄炎を発症したのだ。この報告を受けて、世界各地で臨床試験は一時的に中断した。この結果、ワクチン開発で先行していたアストラゼネカは、ファイザー・ビオンテック連合とモデルナの後塵を拝することとなった。

 ワクチン接種に伴う免疫異常が顕在化するのは、接種から数カ月後が多い。リスクを評価するには、最低でも半年以上の観察期間が必要だ。ところが、このようなデータが出揃うのは、早くても来春以降だ。

かかり付けの主治医への相談が大切

 では、どうすればいいだろうか。私は先行してワクチン接種を始めた米国や英国のデータを参照したいと思う。日本でワクチン接種が始まるのは、早くて春以降だろう。それまでには相当数の経験が海外で蓄積されているはずだ。データに基づき柔軟に考えたい。

 コロナワクチンの接種は、有効性と安全性を天秤にかけて判断しなければならない。有効性については、一定のデータが蓄積されているが、安全性、特に長期的な安全性については皆無だ。もちろん、筆者も危険性が極めて高いと考えているわけではない。おそらく相当程度に安全だろう。

 コロナが大流行し、経済ダメージが甚大な欧米諸国が、公衆衛生学的見地から、現時点のデータでワクチン接種を推奨するのは合理的だ。ワクチンにより、コロナ感染が予防されるだけでなく、国民が安心し、景気が上向くからだ。日本政府も同様に考えているだろう。メディアも、この論調で報じるはずだ。

 ただ、この理屈は一人ひとりの国民には通用しない。それぞれ抱えている事情が異なるからだ。必要なのは、それぞれの事情に応じた個別具体的な対応だ。コロナ研究は日進月歩だ。最新の情報を入手し、自分で判断できる一般人はごく少数だろう。私はかかり付けの主治医に相談することをお勧めしたい。患者の価値観、既往歴など個別の事情を把握し、それぞれに合った助言をしてくれるからだ。幸いオンライン診療も解禁された。遠慮せず、連絡すればどうだろう。

(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

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