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高橋祐介「楽しいゲームの話だけさせてくれ」

年末年始は『アサシン クリード ヴァルハラ』三昧だ…なぜ、こんなに楽しいのか?

文=高橋祐介/ライター、丘ヴァイキング

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 さて前回に引き続き、本稿では『アサシン クリード ヴァルハラ』(PS5/PS4/XSX/XSS/ONE/PC)についてお伝えしていきます。

 ファンタジーRPGや歴史エンタメをお好きな方が、この年末年始にじっくりとプレイするのにぴったりな内容の本作。発売当初は表現規制に関する「不透明さ」が話題になりましたが、12月15日には表現規制に関するアップデートが行われ、以前よりも開発側の意図に近いビジュアルを楽しめるようになりました。またいくつかのバグも修正され、発売直後よりも、むしろこれからが遊び頃のソフトといえるかもしれません。

 作品に関する概要から知りたい方は、ぜひ前回の記事もご覧ください。

 中世暗黒時代のイングランドにおけるヴァイキングの冒険、そして戦いを描く本作。ヴァイキングらしいパワフルな戦いを自分の手で生み出していく爽快感は、ほかでは味わえない独自のものとなっています。

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 主人公エイヴォルが扱う武器はヴァイキングを象徴する「鉤付き斧」をはじめ、「槌(ハンマー)」、両手持ちの「デーン斧」や「槍」、鎖の先にスパイク付き分銅が付いた「連接棍」などなど。普通のRPGなどでは悪役側が使うような武器が多いような気もしますが(笑)、どれも使い心地が異なり、プレイヤーを飽きさせません。

 なかでも連接棍の使用感は特筆すべきもの。敵が持っている場合は鎖をブンブン振り回してきて、近づきにくく厄介なのですが、自分で入手して「やりかえす」とじつに楽しい! 記事を書くために別の武器を試していなかったら、連接棍だけを使い続けていたかもしれません(笑)。

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 ちなみにアクションゲームがあまり得意でない方は、リーチが長く、素早い攻撃が可能な槍を入手してみてください。戦いがだいぶ楽になるはずです。さらには素手でも戦うことが可能で、同じくヴァイキングの時代を描いた漫画/アニメ『ヴィンランド・サガ』の主人公の父親・トールズのように、相手をできるだけ殺さない戦い方までできてしまいます。

 そして本作は『アサシン クリード』シリーズの最新作でもあり(アサシンとは暗殺者のこと)、さまざまな手段で敵を暗殺できることも大きな魅力。忍び寄って急所を刺す、高所で待ち伏せして飛び降りつつ葬る、ヴァイキングらしく手斧を投げて仕留めるなど、そのバリエーションは多彩です。相手の頭上にある石材を落下させて暗殺するなど、プレイヤーの観察力によって思わぬ方法を発見できることも。

 果ては相手を背後から高々と持ち上げ、地面に叩きつけて暗殺するといった(暗殺なのだろうか?)、パワフルな仕留め方まであります。

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 ヴァイキングと暗殺はなんとなくミスマッチに感じるかもしれませんが、メインストーリーに関係する戦いでは、主人公がヴァイキングの戦士団を率いて「城攻め」を行う機会が多々あります。味方に無駄な犠牲を出さず敵城内に導くためには、破壊と死をまき散らすデーン斧よりも、隠密行動と暗殺が役立つことも多いわけです。もちろん、あえてデーン斧を選んで戦う自由があることも、この『ヴァルハラ』の素晴らしいところですが!

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 このようにさまざまな武器を駆使したり、必殺技のような各種アビリティを使ったり、暗殺のバリエーションを楽しめる『ヴァルハラ』。ただ、プレイ中できることは徐々に増えていく仕組みになっており、プレイヤーは混乱せず、順を追って学んでいけます。

 反面、序盤はできることが限られているわけで、シリーズ経験者である筆者は少しもどかしかったことも事実。ですが、シリーズを遊んだことがない人にとっては親切だろうとも感じました。前回もお伝えしたとおり、筆者が本作をシリーズ未経験者にもお勧めしたいのは、こうした新規プレイヤーに対する配慮が随所にあるからです。

 なお、キャラクターの強化方法はポイントを割り振ってスキルを覚えていくというもので、戦闘、暗殺、弓(射撃)のどれかに特化するか、あるいはバランスよく習得することが可能です。しかもポイントはいつでも自由に振りなおすことができ、自分に合ったプレイスタイルを気軽に探せるのもいいところ。さらに付け加えれば、戦いに手ごたえが足りないときはポイントをあえて割り振らずにおき、弱いままでいることさえできます。

 自由な成長を楽しめるゲームは、キャラクターが強くなりすぎてしまい、戦いに張り合いがなくなることがままあるもの。本作はその解決策として……かは定かではありませんが、「成長を遅らせる自由」までもが用意されているのです。

さりげなく添えられた「いざない」

 個人の自由を何より重んじる「隠れしもの(アサシン教団)」と、秩序ある社会支配を目指す「古き結社(テンプル騎士団)」による、長きにわたる暗闘──。『アサシン クリード』シリーズとしては珍しく、『ヴァルハラ』はそれらに関するお話が控え目な印象でした。ですが、本作ではメインストーリー以外の部分でも、両者の闘争に触れる機会が用意されています。

 作中の時代、「隠れしもの」はイングランドからは手を引いています。ただ、数百年前まで使われていた拠点が各地に残っており、それら遺跡を探索することで当時の様子を知ることができるのです。同時に、キャラクターのアクションを駆使した「謎解き」や、強力な武器や防具などの「宝探し」も楽しめます。

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 これはシリーズファンであればストーリー要素のひとつとして、新規プレイヤーなら主人公エイヴォルと同じ視点で、ローマ時代の遺跡探検&宝探しとして楽しめるようになっており(プレイヤーもゲームを通じてヴァイキング時代を疑似体験しているわけで、メタ的な面白みもあります)、巧みなつくりだと感心させられたポイントです。もちろん、これらの拠点を探索しなくても本筋に影響はありません。

 一方、「古き結社」側はイングランドに確固とした基盤を持っており、その構成員を一掃することもサブの目的のひとつ。ただ、主人公のエイヴォルは「隠れしもの」の一員ではないため、「義兄シグルドに危害を加えた組織への報復」「親しくなった友人・ハイサムからの依頼」という扱いでしかなく、こちらもプレイヤーが関わるかどうかを自由に決めることができます。

 とはいえ、どちらの要素もコンプリートすれば、それだけの価値を感じられる報酬と興味深い結末が待っています。今回初めてシリーズをプレイするという方も、メインストーリーのバックグラウンドに興味が湧いてきたら、ぜひチャレンジしていただきたい要素です。

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重厚でシリアスな魅力だけではない

 さて、ここまでお付き合いいただいた方であれば何となくお察しのとおり、『ヴァルハラ』は決してシリアス一辺倒の作品ではありません。各所に笑える要素がちりばめられており、中世イングランドの旅の記憶を、色鮮やかなものにしてくれます。

 たとえば街々で出会う詩人たちとの「口論詩」。これは最近、演劇の世界などでも取り入れられ始めた「フリースタイルのラップバトル」を、本作の世界観にもあてはめたような要素です。相手がこちらをディスる詩を受けつつ、韻を踏んだ言葉と言い回しで相手をディスり返すという、機知と文学的センスを競う戦いを楽しめます。

 さらに、荒野や街など、旅先で出会う人々とのイベントもコミカルなものが多々あります。なかには、しきりに頭が痛いという相手をよく見ると、頭に斧が刺さったままになっており、さてどう対処しようか……といったものも(笑)。

 それらコミカルなサブイベントの中に、かのアルフレッド大王の顧問となった修道士・アッサーや、当時のサクソン人の詩人キネウルフが関わるものを急にブッこんでくるなど、ギャグと教養ネタの入り交じる独特のノリもまた、このシリーズの魅力だったりします。

 激しい戦い。味わい深い物語。そして興味を引くサブ要素。本作をプレイし、さまざまな刺激を受けつつ旅を続けるうちに、異郷の地だったイングランドは、いつしか見知った土地に変わっていきます。そして自らの手で発展させていった定住地は、主人公エイヴォルだけでなく、プレイヤーにとっても「帰るべき場所」として感じられるようになるでしょう。

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 かつてブリテン島にやってきたノース人やデーン人、その以前の時代にやってきたアングル人やサクソン人もまた、同じような感覚を味わっていたのではないかと筆者は想像してしまいます。そして彼らがなぜ自らの神話に固執せずに、キリスト教を受け入れたのかも……。ただ完全に捨て去ったわけでもなく、それは時を経た今も彼らの中に、確かに息づいているのです。

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 そんな歴史ロマンをまさに「体感」できる本作は、時間に追われる日常の合間ではなく、長い休みの間にじっくりと遊ぶのが合っています。可能であればPlayStation 5やXbox Series Xといった最新のゲーム機で快適にプレイしてほしいところですが、ゲームとしての面白さはどの対応ハードでも変わりません。みなさんがプレイしやすい環境で、ゆったりと遊べるタイミングで触れていただければと思います。

 そしてゲームを終わらせて数年を経たころには、このゲームでの体験もまた、懐かしい思い出のひとつになっていることでしょう。

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高橋祐介/ライター、古ゲー伝承者

高橋祐介/ライター、古ゲー伝承者

フリーランス。ゲーム、アニメに関することが中心ですが、いいもの、好奇心をそそられたものへの雑感など

Twitter:@takahashi_write

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