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藤和彦「日本と世界の先を読む」

医療崩壊、過剰な病床数が要因…1病床当たりの医師数が米国の4分の1 、OECDで最低

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員

 日本救急医学会によれば、日本全体の集中治療専門医は1955人、救急科専門医は約5000人と国際的に見てけっして高い水準ではないが、急性期病院数が諸外国に比べて多いことから、専門医の分散を招き、現場が崩壊寸前になっているのである。

 さらに医療体制全体では、医療従事者の数に対して病床の数が圧倒的に多いという構造的な問題が存在している。日本の人口1000人当たりの医師の数は2.4人であり、OECD平均(3.5人)を若干下回る水準にあり、看護師も同様の傾向にある。これに対して日本の人口1000人当たりの病床数は13.1であり、OECD平均の4.7と比べて桁違いに多い。このため、日本の1病床当たりの医師の数はOECDで最低の0.2人であり、米国の4分の1以下である。日本の1病床当たりの看護師の数も米国の4分の1以下であるが、新型コロナ対応で特に負担が深刻化しているといわれており、「ブラック労働」化した職場から次々と看護師が離れるという異常事態が生じている。

急性期病院の連携強化

 「医療従事者のために外出を控えろ」との批判の高まりを受けて、政府は12月23日、コロナ対策の特別措置法改正に向けた調整を本格化させている。営業時間の短縮や休業に応じた店舗への支援措置を明記し、要請に応じない場合には罰則を科すとの内容である。来年1月召集の通常国会に特措法改正案の提出を目指しているが、これだけでは構造的な問題を抱えた日本の医療崩壊を防ぐことはできないだろう。

 日本の医療崩壊を防ぐためにただちに実行すべきは、専門医が分散している急性期病院の連携強化である。民間病院の比率が8割に上る日本において、都道府県知事は個別の病院に対して特定の医療行為を行わせる権限を有していないことから、行政によるコントロールは困難である。だが日本の医療体制が抱える問題を明らかにすることで国民的なコンセンサスを得ながら、医療関係者の協力を得るための環境づくりを整備することはできる。

 このような努力を実施すると同時に、改正特措法のなかに「緊急時に地域の医療体制をコントロールできる権限を都道府県知事に付与する」という条項を追加すべきである。飲食店の営業時間短縮や休業の要請に罰則を設けるのなら、知事の要請に応じない病院に対して罰則を設けることも検討されるべきだろう。

「政府のコロナ失政は戦前の日本と同じだ」との論調が出ているが、失敗の本質は「『必要なところに資源を投入し、長期戦に備える』というロジスティックス(兵站)の発想の欠如にあった」と筆者は考えている。「構造改革」を掲げる現政権にとって、「パンデミックにも対応できる強靱かつ効率的な医療体制」を構築することが最優先課題のひとつなのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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