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菅政権「スマホ免許証」計画が危険かつ不便極まりない…苦肉のマイナンバーカード普及策

文=明石昇二郎/ルポライター

便利なようで、かえって不便になりそう

 では、「スマホ免許証」が導入されれば、クルマを運転する際、運転免許証もマイナンバーカードも携帯する必要がなくなるのか。もしもの時のために、免許証もマイナンバーカードも一緒に持ち歩かなければならないのだとすれば、免許証の情報をわざわざモバイル端末にコピーする意味がない。

「もしもの時」とは、次のような事態のことだ。「スマホ免許証」さえ持っていれば運転OKとなった場合、誰でも思いつく心配事は、運転中にスマホの充電が切れてしまい、免許証の情報を表示できなくなった場合、どうなるのか――ということである。スマホ自体が突然故障してしまった場合にも、同様の問題は起こりえる。

 常識で考えれば、「免許証不携帯」(道路交通法第95条違反。反則金3,000円、違反点数はなし)扱いになるのだろう。充電切れに対処するため、交通取り締まりをする警官に、スマホ用充電器を常に用意させておくことも考えられるが、さすがの警官でもスマホの故障までは直せまい。

 現行の運転免許証を紛失した場合、再交付してもらうには運転免許試験場や警察署などに出向く必要があるが、即日再交付してもらえる。しかし、マイナンバーカードを運転免許証として利用していた場合、再交付までには概ね1カ月かかり、その間は運転できなくなる。

 さらに問題がありそうなのは「スマホ免許証」のケースである。スマホを壊したり紛失したりした場合、復旧するまでどのくらいの期間を要するのだろう。紛失したまま出てこない場合は、新しいスマホを購入し、これまで使っていたアプリをダウンロードしてアカウントを移行させる手続きが必要になる。恐らく「スマホ免許証」にしても、同様の手間が必要になるだろう。故障した場合は、修理するのか買い替えるのかによって、復旧までにかかる時間は大きく異なる。スマホが使えない時間が長引けば長引くほど、「スマホ免許証」が利用できない時間も長引く。最良の対処方法は、「マイナンバーカード免許証」や「スマホ免許証」の導入後も、運転の際は現行の運転免許証を欠かさず携帯しておくことである。

 次元の異なる問題として、スマホが乗っ取られるケースも考えられる。運転免許証は身分証明書として利用される機会も多い。貴方の運転免許証データがハッキングされてスマホから流出し、複製されてしまえば、詐欺などの犯罪に悪用される恐れもある。

 スマホの利用価値が上がれば上がるほど、どんなセキュリティ対策が取られていようと、あらゆる手段を使ってサイバー攻撃を目論む輩が世界規模で現れてくる。「スマホ免許証」は、そんな彼らが一般庶民のスマホにサイバー攻撃を企てる動機になってしまうかもしれない。

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5:30更新
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