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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

スポーツをすると貧血に陥りやすい?なぜ完璧な栄養管理を行うアスリートも貧血になる?

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

スポーツ貧血

 このアスリートの鉄欠乏性貧血と混同されやすいのが「スポーツ貧血」だが、その原因はまったく異なる。

「スポーツ貧血は、主にトレーニングの開始早期に発生する、アスリートに特徴的な貧血様症状です。これは体が激しい有酸素運動や筋肉運動に順応していく過程での偽性貧血であり、一過性であるケースがほとんどです。身体がまだ慣れていないトレーニング開始時、激しい運動により血漿量は10~20%減少します。これは血圧上昇と細静脈の筋肉は圧迫により毛細血管内の体圧が上昇すること、筋肉内での乳酸をはじめとする代謝物の生成により組織内の浸透圧が増加すること、そして汗で水分が失われることにより起こります」

 スポーツ貧血は、激しい運動に体が順応していく過程に起こる有益な反応で、トレーニングを重ねていくことで解消される。また鉄欠乏性貧血と違い、パフォーマンスに影響することは稀であるが、定期的なトレーニングやスポーツを行う場合にはスポーツ貧血の予防をすべきだろう。

「スポーツ時の水分摂取が重要なことはもちろんですが、予防には吸収の良い高タンパク食を摂り、鉄の吸収を妨げるお茶やコーヒーの摂取を控えるなど食事管理に留意する必要があります。スポーツ貧血はトレーニングにおける体の限定的な過程であることがわかっているため、通常は治療を必要としないのが基本です」

 スポーツ時に失われた水分とミネラル分を補うために体内のホルモンが活性化し、血漿量を増やす。結果として激しい運動を1回行っただけでも、24時間以内に血漿量が約10%増加することがわかっている。こういった過程で血漿量が増えることにより赤血球が希釈され、一時的な貧血状態が引き起こされる。

 一過的なスポーツ貧血から真の鉄欠乏性貧血へと悪化させないためにも、定期的な血液検査と普段の栄養管理は欠かすことができない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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