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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

コロナ禍で「冬アイス」の動向はどう変わる?巣ごもり需要で“マルチパック特需”発生

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「アイス消費日本一」は金沢市が返り咲き

 総務省統計局が発表する「家計調査」というデータがある。それによれば、「アイスクリームへの支出が多い」都市ランキング(都道府県庁所在地・政令指定都市)で強いのは、金沢市(石川県)と富山市(富山県)の北陸勢だ。

 2011年から2017年までの7年間で金沢市が首位になること5回、残り2回は富山市だった。寒冷地でも、冬に暖房を効かせた室内でアイスを楽しむ人が多い。2018年は大雪などの影響で金沢市は首位から陥落して浜松市(静岡県)が1位となったが、2019年は金沢市が首位を奪回した。

 2020年は現地に行けなかったので、前年に石川県内で聞いた話を紹介しよう。

「よく『金沢市民はアイス好き』と言われますが、当社の売れ筋でも裏付けられます。和洋菓子も含めて、他の地域と比べて売れます。もともと加賀百万石の城下町で和菓子文化が根付き、太平洋戦争の空襲を免れた金沢には老舗店も多くあります。そうした複合要因もあると感じています」(地元スーパーの商品部責任者)

 金沢では「アイス半額セールも多い」という話を地元の女性から聞いたことがある。2019年に同市内でスーパー店頭を回ってみたが、人気商品「パルム」(森永乳業)の箱入りアイス(マルチパック)も半額となっていた。

 パルムのマルチパックが半額なのは、首都圏ではあまり目にしない。こうした「箱×特売」も、アイス購入額を押し上げているのだろう。

「冬アイス」の売れ行きはどうなるか

 以前とは異なり、冬に楽しむ「冬アイス」の効果も大きく、データによっては「夏アイス65%:冬アイス35%」(夏アイスは定番商品+春夏向け商品、冬アイスは定番商品+秋冬向け商品が中心)の割合となり、冬アイスの売り上げが高まっている。

 前述の総務省の調査でも「1世帯当たりのアイスクリーム・シャーベット」の支出金額は、過去10年で15%増え、特に冬場の増加率が高くなっている。コロナ禍で過ごす今年の冬は、どんな状況を示すのか。

 本来なら家族や親戚、友人・知人など大勢の人が集まる年末年始に、家庭用アイスは「まとめ買い」されるケースが多かった。「帰省ができない年末年始」の需要は、まだ読めないが、同じように帰省が難しかった「お盆時期は好調だった」と話すメーカーもある。

 寒い地域では、降雪で買い出しに行けない日もあるだろうが、アイスクリームは保存のきく商品だ。

 コロナ禍で目立つ現象に、「自粛疲れによる憂さ晴らし的な消費」もある。通常のアイスは1個100円程度、高級アイスでも数百円なので、気分転換で買いやすいだろう。「身の丈消費」が続くご時世。引き続き、家庭用アイスの動向も見続けたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。 近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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