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木下隆之「クルマ激辛定食」

ホンダ新「N-ONE」、軽なのにFFターボ+6速MT…外観はN360を彷彿、魂は熱い

文=木下隆之/レーシングドライバー
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ホンダ新「N-ONE」、軽なのにFFターボ+6速MT…外観はN360を彷彿、魂は熱いの画像1
ホンダ「N-ONE」

 レクサス「IS」のマイナーチェンジは、僕の興味を引きつけた。というのも、外観をガラリと変えておきながら。インテリアやプラットフォーム、あるいはパワートレーンといった骨の部分の変更がなかったからである。外観が違うのに、公式的にはマイナーチェンジとなる。

 今回、ここで紹介する本田技研工業(ホンダ)の「N-ONE」は、それとは対照的にエクステリアには一切手を加えず、オリジナルのままでマイナーチェンジに挑んだというのが新しい。

 ISがインテリアには新しさがなかったことに背を向けるように、N-ONEはインテリアに新たに筆を振るった。この両モデルの商品企画を思うと、これからの年次改良の考え方が問われているような気がした。

 ともあれ、新型N-ONEはルーツとなった「ホンダ N360」の雰囲気を崩すことなく、伝統を受け継いでいる。外観に手を加えなかったのは、伝統を大切にしたかったからに違いない。N-ONEの生命線は、その個性的なスタイルにあるからだ。

 だが、それだけに終わっていなかった。ホンダの伝統である走りを磨き込んだ。それこそ、N360の伝承である。

 象徴的なのが、6速マニュアルミッションの設定である。その名も「RS」。直列3気筒660ccターボエンジンと組み合わされる。最高出力は、軽自動車自主規制上限の64ps、最大トルクは104Nmを絞り出す。N-ONEの他のグレードでは、FF駆動だけではなく4WDも選択可能だが、RSはFFのみの設定という割り切りだ。それによって、世界的にも希有な「FFターボ+6速マニュアルミッション」モデルとなったのである。

 いやはや、軽カーに「FFターボ+6速マニュアルミッション」という、まるで「シビック・タイプR」や「メガーヌRS」のような激辛ホットハッチならではの組み合わせにワクワクする。

 排気量から想像するように、絶対的な加速力はドキドキを誘うものではないが、軽快なフットワークには思わず笑みが溢れる。発進用の1速ギアからハイウェイクルーズ用のトップギアまで、6段階にギアリングが分けられたことで、オイシイ回転域を使い分けられる。こまめにシフトのアップダウンを繰り返して走りに没頭するのは楽しいのだ。

 シフトストロークは、スポーツカーのそれのように短い。手首を巧みにひねれば、小気味よくシフトレバーがゲートに吸い込まれている。世界最速の激辛「シビック・タイプR」や、軽カーミッドシップ「S660」といった、走りのモデルを生み出すホンダならではの経験と技術が注がれている。

ホンダ新「N-ONE」、軽なのにFFターボ+6速MT…外観はN360を彷彿、魂は熱いの画像2

 驚かされたのは、ただ6速ギアを組み込んだだけではなく、走りのモデルとしての妥協がなかったことだ。コーナリングでの車体の傾きを防ぐスタビライザーを組み込んでおり、フットワークがさらに際立つ。スポーツモデルといっても乗り心地が悪くはなく、それでいてスポーティフィールを整えているのだ。

 ブレーキ・アジャイル・ハンドリング・アシストは、コーナリング中の内輪にブレーキ制御を加えるシステムである。ハンドルの切り込みに対して旋回力が不足していると判断されれば、イン側のタイヤだけに制動力を加えて旋回性を高める。そんな高級スポーティモデルが好んで採用するシステムを、コスト制限のある軽カーに採用しているほどである。

 外観から感じる雰囲気は、N360を彷彿させるキュートな都会派モデルである。だが、その魂はワインディングに羽ばたいている。ホンダらしさが強く感じられた。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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