NTTによるドコモの完全子会社化をめぐり、KDDIやソフトバンク、楽天など28の電気通信事業者は、「公正な競争環境が阻害される恐れがある」とする意見書を武田良太総務相に提出した。公正な競争を確保するために厳格な措置を講じ、NTTにその順守を求めた。

「ドコモがアハモでやろうとしているのは、楽天モバイル潰し。格安スマホは眼中にない」(通信業界の首脳)

「格安スマホは大きな影響は受けないだろう。格安スマホのユーザーはデータ量を20ギガも使うことはない。せいぜい3ギガ程度で980円を払う。なので、格安スマホからアハモへの移行は少ない」(格安スマホ会社の社長)

楽天モバイルが窮地

 窮地に追い込まれそうなのが楽天モバイルである。データ使い放題で契約者を集めているので、完全にアハモと客層がかぶる。

「ドコモは楽天の料金プラン『楽天アンリミット』の利用客をターゲットにしたといわれている。楽天モバイルは21年4月、データ使い放題サービスの月額2980円の課金が始まる。このままの状況が続けば、課金開始前に大量の解約が発生するかもしれない」(前出の格安スマホ会社の社長)

 KDDIとローミング(通信回線の乗り入れ)の打ち切りが始まり、楽天には「繋がりにくくなった」という苦情が増加している。楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は損切りの決断は早いといわれている。

「新型コロナウイルスのPCR検査もすぐやめた。携帯についてもそろそろ飽きてきた頃ではないのか」(楽天の元役員)

「楽天モバイルの赤字が嵩めば、どこかのタイミングで会社を解散することがなきにしもあらずだ」(前出の通信業界首脳)

 ドコモが新プランを発表した20年12月上旬から楽天の株価は冴えない。楽天の株価下落は何を意味するのか。株式市場は企業動向の半年から1年後を株価で先取りするといわれている。総務省は公平で自由な競争のもと、料金の値下げへと誘導するつもりだったが、「角を矯めて牛(=楽天)を殺す結果になるかもしれない」(同)。

 菅義偉首相が業を煮やし、武田良太総務相が大手通信キャリアにプレッシャーをかけた結果、料金値下げは実現したが、これはまさに“官製値下げ”。しかも再び3社の料金は横並びになることが予想されている。ドコモもサブブランドを用意した上で値下げを公表したかったのだろうが、人気取りに拘泥する菅政権は待てなかったと永田町ではいわれている。

 政権の圧力という、公平とはいえない歪んだ競争の末に、ドコモは大幅な値下げに踏み切り、ソフトバンクが追随した。1月中にはKDDIも右に倣えだ。

 ドコモを完全子会社にしたことでNTTグループはさらに巨大化し強くなる。そうなると将来的にサービスが停滞し、技術開発の国際競争で後れをとる懸念もある。菅政権の政策の“一丁目一番地”となった携帯料金の値下げは、少し長い目で見ると、公平・公正な競争を阻害し、NTTグループへの一極集中を加速させる諸刃の刃となる。

(文=編集部)

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