「三島会社」の苦難

 JR九州の青柳俊彦社長は20年5月に初めて20線区の収支を公表した際に、「どうすれば鉄道網を維持できるのか、沿線自治体にも知恵を出してもらいたい」と強調した。赤字額をさらけ出すことで鉄道維持に向けた沿線自治体との議論の糸口を見つけたかったのだろう。

 実際にJR九州は豪雨被害で寸断された北九州市と大分県を結ぶ日田彦山線の一部区間にBRT(バス高速輸送システム)を導入することで合意した。BRTは東日本大震災の大津波で損傷した東北の一部路線の復旧に使われた。しかし、鉄路とバスでは運べる人数や利便性が大きく異なる。鉄路をなくす決断を地元の自治体や企業に納得してもらうことは容易ではなかった。それでも津波の被害を受けた地域は人口が大幅に減少し、鉄路を復旧しても採算が合う可能性は極めて低かったから実現した。

 JR九州はJR北、JR四国とは違って株式を上場している。鉄道以外の商業施設の運営やマンションの建設など不動産事業に活路を見いだそうとして、株式公開に踏み切った。上場企業になれば、株主の「もっと利益を」とのシビアな要求に応えなければならなくなる。

 JR北、JR九州、JR四国は「三島会社」と呼ばれる。「三島会社」はJR東日本、JR東海、JR西日本に比べて経営基盤が脆弱だ。赤字路線のバス路線への転換の問題はこの3社に限った話ではない。JR西日本は18年に広島県三次市と島根県江津市を結んでいた三江線を廃止し、バス転換した。廃線区間は108キロに及び、本州では最長のバス路線となった。

 経営が厳しいところにコロナ禍が追撃した。もはや「三島会社」にとって鉄道によるローカル線網維持が「聖域」ではなくなった。

 JR北とJR四国の破綻が現実味を帯びてきた。当面、両社の経営破綻を回避しなければならない。JR北は最終的にはJR東日本と経営統合するか、JR東日本の子会社としてスリム化を徹底して生き残りを図るしかないという議論もある。JR四国の受け皿はJR西日本が有力とみられているが、JR東海やJR九州に共同出資を仰ぎ新会社を設立し、JR西日本、東海、九州の連合体がJR四国を支えるという構図も考えられる。

「JR東日本、西日本にも、それぞれのお家の事情があり、すんなりと支援が決まることはない。上場しており、株主の目もあり、利益の相反は許されない。JR北、JR四国を支援することについては徹底的に反対するだろう」(運輸業界幹部)

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