豊田章男氏が怒りの会見を開いたワケ

 日本政府が「新車販売でガソリン車ゼロ」を掲げたことは、これからCASE革命で苦戦が強いられる日本の自動車メーカーを、ますます窮地に追い詰める行為といえる。そこで、政府の見解に対抗するように、2020年12月17日、トヨタ自動車代表取締役執行役員社長兼CEO兼CBOの豊田章男氏がオンライン会見を開いた。

 豊田氏は理路整然と数字を基に説明を行ったが、その声には抑えきれない怒りがこもっていた。

 雇用と産業を支えてきた自動車産業を、自国の政治家が潰そうというのだから、怒りは当然である。また、勢いよくスローガンを掲げているものの、産業界にそれを押し付けるだけで、政府としての対応をほとんど何も考えていない。

 豊田氏が挙げた例では、そもそも日本は火力発電に77%依存しており、再エネ原発中心のフランスは火力発電が11%であるため、脱炭素社会の観点からすると、フランスの工場でつくられた自動車のほうがベターということになる。

 EVがエコといえるかどうかは、それを利用する国の発電事情、比較対象の車種、走行距離によって異なってくるので、一概には言えないというのが現状だ。

 それに、政府の言うとおりに400万台に及ぶ新車販売のすべてをEVにすれば、夏のピーク時に電力供給量が10~15%足りなくなる。それをカバーするには火力発電20基か原発10基が必要となり、太陽光発電で補おうとすれば森林伐採という環境破壊を避けられない。

 さらに、EVをつくって試験すると、年間50万台の工場では毎日、一般家庭5000軒分の電力消費量が単に充放電されるという無駄が生じる。そのうえ、充電ステーションを拡充させるためには、14~37兆円のインフラコストが必要となる。

 そういった全体像を「政治家は理解しているのか?」と、豊田氏は投げかけたのだ。

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