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警察が捏造…冤罪の元死刑囚・84歳の袴田巌さん、再審を拒みつける東京高裁の“見識”

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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パトロールに出かける袴田巌さん

 今回、最高裁は「血痕の色」に重きを置くことにした。これは検察にとって極めてまずい。半世紀以上前の「警察の捏造」がこれまで以上に大きくクローズアップされかねないからだ。朝日新聞によれば、検察の幹部は「5点の衣類の証拠が捏造されたという前提に立つ決定」と疑問を呈している。本当は「疑問」というレベルではないだろう。

 捏造とは何のことか。静岡県警は事件から1年2カ月も経ってから、工場の味噌樽の中から犯行時に着ていた着衣が見つかったとして、シャツやズボン、下着などを裁判所に証拠提出した。当初から「そんな場所を捜査していないはずがない」という声は出ていた。さらにズボンは小さすぎて、袴田さんには全然はけなかった。しかし、有罪判決は味噌に浸かって縮んだ」などとする検察主張を通してしまった。

 警察の写真では、衣服に付着していた血痕は赤っぽい。しかし1年以上、味噌に浸かっていれば黒ずんでしまうはずだった。物証が弱いこの事件において、警察は立件を固めるために、事件後に適当な衣服を味噌樽に放り込んだ可能性が極めて高かった。もはや誤認逮捕などではなく、国家犯罪である。

 6年前に再審開始決定をした静岡地裁はこの「警察の捏造」を明確に述べていた。この時のことについて秀子さんは「弁護団の小川(秀世)事務局長から『捏造だと言っては駄目』と言われ、私も『捏造だ』とか『でっち上げ』なんて言わないようにしていました。ところが村山(浩昭)裁判長が捏造とはっきり言ったから驚きましたよ」と振り返る。

「血の色重視」は朗報 

 早くから袴田巌さんの救援活動をし、味噌漬け衣類の血痕の色に注目して実験していた「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」の山崎俊樹事務局長は、今回の最高裁決定についてこう話す。

「時間をかけてやってきた実験なので評価されてうれしい。塩分によって血液のたんぱく質が糖質に変わっていくということですが、たんぱく質が糖に変わっておいしくなることは身の回りにいくらもあること。難しいDNAの科学鑑定より、こうしたシンプルなところで裁判を進めるべきです。その意味でよかったと思います。巌さんも秀子さんも頑丈な人なので大丈夫ですよ」

 同じ「山崎さん」だが、今回の最高裁決定について元東京高裁判事の山崎学・慶応大客員教授は「長年にわたるDNA型鑑定を巡る議論に終止符を打ち、争点を『衣服に付着した血液の色が専門的知見と矛盾していないかどうか』に絞って差し戻しており、一見遠回りだが審理の迅速化につながる」(12月24日付読売新聞より)としている。そうであることを願いたい。

気迫十分の「世界一の姉」 

 9月末に秀子さんを伺った際に聞いた話で興味深かったのは、昨年、クリスチャンの巌さんをローマ法王が訪れた東京ドームに連れていった後、「自分はローマ法王だ」と言わなくなったという話だった。「本物を見た感想は話さないけど、巌なりに思うところがあったんでしょうね」と笑っていた。

「国家権力は高齢の巌を死刑にするわけにもいかんし、きっと巌が死ぬのを待ってるんでしょう。そう思ったら、こっちもそう簡単には死ねやしませんよ」と話していた秀子さん。裁判も長引くならこっちも長生きできる、とばかりの気迫である。「世界一の姉」に国家権力は絶対に勝てないはずだ。

(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

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