また、ガラケー第一世代のゆとり世代は、メールやミクシィ、「前略プロフィール」など携帯電話を主な人間関係ツールとして使用していた結果、同調圧力が強くなった。対して、スマホ第一世代のZ世代は人間関係ツール以外の多様な使い方を習得しており、SNSでもブロック機能や鍵アカウント設定などで嫌な人を排除できる居心地の良さを保てるようになった。
その結果、同調圧力はゆとり世代ほど苛烈ではなくなり、周りの顔をうかがうよりも、自己ブランディングのために何を発信するかに意識が向けられているのだ。
Z世代にとって「仕事」や「上司」とは?
では、「チル」と「ミー」を大切にするZ世代とは、どのように接すればいいのだろうか。
「根本的に、昭和の発想を捨てて付き合わないといけません。中年になると、若者は飲みに連れて行って話せばついてきてくれるし、楽しさや成長を感じられる仕事を与えれば夢中でやってくれる、と思いがちです。しかし、どんなに愛情を注いでも、彼らにとってはプライベートに勝る仕事も上司も存在しません。良くも悪くも『世界の中心に自分がいる』という感覚が強いのです」(同)
「若者は仕事を通じて成長したいはず」という固定観念を持った中年の上司は、つい仕事を通じた自己実現の重要性を説きがちだ。しかし、Z世代はマイペースな上に、時代背景的に景気停滞期しか知らないため、そもそも「成長」という言葉は響かないという。
「彼らは、おだてても、叱っても、自分のプライベートの時間を侵す量の仕事はしてくれません。僕は、Z世代と接するときは『あなたの能力的に、この時間でこの課題を10個できますね?』というふうに、適正な量のタスクを与えます。その上で相手も合意して仕事を進め、その過程で適宜アドバイスを行って、質を高めていくのがいいでしょう。どちらかといえば、欧米人的な契約社会に近い仕事の進め方ですね」(同)
かつての根性論や「遊びと仕事の境目はない」という価値観は、もはや受け入れられない。ただ、どんな仕事でも、量をこなしていけば必然的に質が上がっていくのも事実だ。原田氏は、仕事人としての成長スピードもかつてとは違ってくるだろう、と見る。
「たとえば、睡眠時間を削ってがむしゃらに仕事をして3カ月で成長できたことが、3年かけて成長を遂げるというスピード感になります。人手不足なので辞められては困るため、成長のスピード感が違うということにも、上司は慣れていかなければならないでしょう」(同)
『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』 世代人口が少ないにもかかわらず、なぜ発信力・拡散力が巨大なのか? なぜコロナ禍でも予想外に消費金額が大きく、人材として「ダイヤモンドの卵」と呼ばれるのか? 若者研究の第一人者が徹底分析。
