一方で、多くのZ世代はかつての若者たちよりも真面目だと、原田氏は指摘する。
「昔の方がムチャクチャな若者や部下は多かった気がします。その頃は、新人は大きなミスをやらかして、上司や先輩にパワハラ気味に叱られて、自分の未熟さを知って大人になる、というのがロールモデルでした。一方、今はミスも少ないし、反抗もしない。上司がいないからサボるなどという発想はなく、与えられたタスクはしっかりやります。ただし、それ以上のことはやりませんが」(同)
Z世代の消費行動と「丁寧な暮らし」の実態
そんなZ世代は、ゆとり世代よりは消費意欲が高いと言われる。インスタやユーチューブで多くのトレンドを目にする機会が増え、消費意欲をかき立てられるからだという。
「Z世代はゆとり世代よりもアクティブだと見られていますが、実際は“プチ”アクティブ程度。たとえば、いいクルマに憧れてモーターショーに行くことはありますが、そこで写真を撮っておしまいで、手に入れようとまでは思わない。どこまでいっても“プチ”なので、社会に影響を及ぼすには至りません」(同)
また、Z世代は健康意識や環境問題への関心が高いといわれる。実際、SNSでは「丁寧な暮らし」というハッシュタグが流行っており、自分のきめ細かい丁寧な生活を投稿している人も多い。
「ただ、実際に若者と接すると、無印良品で買った商品を食べたり使ったりしているだけの人も多く、『浅い』と感じることがあります。『映画好き』を自称する若者でも、流行の映画を数本見ている程度だったり。上の世代が気をつけないといけないのは、『俺が若いときは1日6本見てた』『本当に好きなら、こうすべき』などと価値観を押し付けないこと。今はSNSやネットの影響で趣味嗜好が細分化し、LINEですぐに誰かとつながれるため、自分の世界に閉じこもったり、ひとつのことにのめり込んだりするのは、状況的にやりづらいのです」(同)
浅く、狭く、マイペースにチルして自分の時間を確保することが、Z世代にとって最上位の概念なのである。
「本来であれば、社会人になってからも努力を続けて、ある程度の権限を持たないとマイペースには過ごせません。でも、一人っ子も多いZ世代は家族から大事にされ、先生も先輩も優しかったし、SNSではみんなが『いいね!』してくれるので“スター気取り”の人が多い。しかも、人手不足で企業が学生に媚びてくるのですから、居心地よくマイペースに生きられるはずだと思っています。ただ、このような世代もやがて社会の主役を担っていくわけですから、上の世代は見守り、育成するという社会的責任を負っているのです」(同)
世界的に見ても深刻な少子化に陥っている日本。どんなに価値観がズレようとも、大人たちはZ世代と向き合っていかなくてはならないのだ。
(文=沼澤典史/清談社)
『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』 世代人口が少ないにもかかわらず、なぜ発信力・拡散力が巨大なのか? なぜコロナ禍でも予想外に消費金額が大きく、人材として「ダイヤモンドの卵」と呼ばれるのか? 若者研究の第一人者が徹底分析。
