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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

抽選倍率150倍も…航空、遊覧フライトが活況 ANAは超大型機、JALは星空フライト

文=赤井奉久/航空経営研究所所長
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 ANAはこの機材をハワイ路線に投入した。ハワイはANAが唯一JALに後れをとっている市場であるが、これを覆す絶好のツールであった。その道を歩み始めた時に降りかかってきたのがコロナ禍である。導入済みの2機が地上待機となったのだ。

 特異性、話題性の高いこの機材は、ANAマイレージクラブの会員やANAファンのみならず幅広い注目を得ており、それを手軽に体験できる遊覧フライトの人気は続きそうだ。

 台所事情はJALも同じである。コロナの影響で国際線の運航は現在ほぼ止まっており、国際線用の航空機は地上に多数駐機されたままである。しかし点検や整備作業は必要であり、定期的に試動もさせなければならない。固定的な出費だけが嵩み、それを飛ばせるパイロットも遊休化している、いわば赤字の垂れ流し状態といえる。

 機材や人件費などの固定的出費(埋没コスト)を与件として置けば、飛行機を飛ばすことで追加的に発生する費用は燃油費・空港使用料等(変動費)に限られる。その変動費を回収できる収入を得られるならば、飛ばす価値は十分ある。搭乗率にして3割程度を確保できればそれをクリアできるであろう。

 遊覧フライトをみると、ANA、JALともに販売単価はかなり高く、販売席数こそ制限して少ないものの、ほぼ全便が満席で運航されている。個々の便では変動費はもとより埋没コストもカバーできる収益をあげ、その分日銭も稼いでいるといえる。

「稼ぎの行動」

 国内ローカル線を事業領域とするFDAは、オリンピック年の需要増を見越して増機し、神戸空港にも乗入れたが、コロナ禍での運休・減便は大きい。機材は単一クラスの国内線仕様であるため機内で目新しさを演出するのも難しい。しかし約80席という小型機は、柔軟にチャーター便や臨時便を組むには適合性が高く、遊覧フライトもこれに含まれる。

 FDAのフライトは、富士山遊覧を中心に、操縦室や機体の見学と記念撮影、航空教室などを付加し、有名ホテルでの食事、神戸港クルーズや大井川鐡道SL乗車等と組み合わせるなど、機外を含めイベント内容が多彩なことが特徴である。そのほとんどがGo Toトラベルの適用対象でもあり、クラブツーリズムなどコラボ相手も多い。9月以降1月までの実績や計画は約40便にのぼっている。

※注:Go Toトラベルの一時停止に伴い取りやめとなるフライトも発生している。

 遊覧フライトが稼ぐ収益という定量効果は、会社全体の中で規模としては大きなものではない。しかし定性的効果は大きい。休止していた生産ラインが稼働し、社員が技量を発揮する。座席を満たすために、飛行や機内自体、そして空港など付加部分にも価値を持たせて新たな市場を開拓する。旅行会社やホテルなどとのコラボも必要である。

 こうした「稼ぎの行動」がもたらすモチベーションの高揚は、澱んだ気持ちに活力を注ぎ、コロナ禍で傷んだ経営の再建へとつながっていくことになろう。

(文=赤井奉久/航空経営研究所所長) 

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