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新型コロナ・ワクチン、自分が接種するかを判断するチェックポイント…重症化のリスクも

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

――承認されるワクチンの条件には、どんなことが求められるのでしょうか。

中山 安全性とともに免疫能(抗体)が持続して効果があるとされる期間です。こうしたことをいくつもの段階を経て検証していくのが治験です。日本の場合は、治験が終了すると、厚労省に申請して最終判断を仰ぎます。認められたら製造開始となり、医療機関などで接種をスタートします。接種後も、接種者に副反応などがあったり、あるいは効果がないとのデータがあれば、適宜、承認を見直すことになります。

――衆議院本会議では昨年11月10日に新型コロナウイルスのワクチンを国の全額負担で接種する体制を整備する予防接種法改正案が審議入りしました。菅義偉首相は「来年前半までにすべての国民に提供できる量を確保する」と表明しています。日本ではいつ頃、承認され、接種がスタートするのでしょうか。

中山 すでに治験が始まっているものもあり、早いものでは3月ぐらいに結果が出るかもしれません。国も新型コロナワクチンウイルスの承認は優先的に行うでしょうから、2月との見方もあります。

接種には科学的な判断が必要

――ワクチンが待望される一方で、気になるデータがあります。米国研究製薬工業協会の「ワクチンファクトブック2012」に、米国での許可取得から、日本における認可取得までの所要年数が紹介されています。それによると、平均して数年です。今回の治験は急ピッチで許可を出す印象が払拭できません。

中山 今回のファイザーワクチンの場合、世界的な感染防止のために製薬会社が総力を結集して治験が実施されたと思いますが、治験期間は約4カ月と非常に短い期間であったことは事実です。治験の最終段階であるⅢ相(そう)の臨床治験の結果では、55歳以上では接種部位の痛みが70%前後に認められ、全身症状は2回目の接種で倦怠感が51%、頭痛が39%に見られ、筋肉痛や関節痛も報告されています。

 有効率95%ということは、ワクチンを受けないで罹った人の内で、ワクチンを受けていれば95%の人が罹らなくて済んだだろうという意味です。今後、日本でもワクチン接種がスタートしたら、接種後に少しでも変化があれば、「ワクチン接種とまったく関係ない」「些細なこと」と自己判断せずに、医療機関などに伝えていただきたいと思います。些細な情報のなかに、医学の進歩につながるヒントが潜んでいるかもしれないからです。

――新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスも同じRNAという遺伝子情報を持ちます。インフルエンザワクチンを接種しても、インフルエンザに罹り症状が重くなったという事例もあります。新型コロナウイルスのワクチンでも同様のことが起こる可能性はあるのでしょうか。

中山 ゼロではないと考えます。ワクチンを接種した後で感染して重症化したような例があります。1960年頃にはワクチン接種後の免疫能は、まだはっきりとわかっておらず、バランスのとれた免疫ができずに感染して重くなるようなことがありました。最近ではデング熱ワクチンが海外で接種された後にデング熱に罹患し、重症化したことが報告されています。この原因が「抗体依存性感染増強(ADE)」と呼ばれる現象です。

 ワクチンが多くの人々を救ってきたことは紛れもない事実です。新型コロナウイルスワクチンは国の全額負担で接種する方向で体制を整えています。しかし、接種は自己判断に委ねられます。ワクチンに関しても「有効で、安全だから」「無料だから」「みんなが接種しているから」接種するのではなく、ワクチンのメリットと副反応、感染症のリスクと合併症のリスクなどの情報から自分で接種を受けるかどうかを、科学的に判断することが必要だとご理解いただきたいのです。娘とコミックで共著を出版したのも、こぼれ話などをふんだんに盛り込めば、感染症とワクチンをとっつきやすく理解していただき、自己判断の一助を担えればと思ったからです。

アナフィラキシー反応

――アレルギーのある方は、新型コロナワクチンを打っても大丈夫なのでしょうか。

中山 新型コロナのワクチンに限らず、ワクチン接種後にアナフィラキシー反応といって息苦しくなったり、まぶたや唇が腫れるアレルギー反応が報告されています。アメリカで報告されている頻度は27万接種あたり6例(10万接種で2.2例)です。アナフィラキシー反応は接種30分前後で起こります。「ワクチン接種して30分は様子をみましょう」というのはこうしたことがあるからで、医療機関では対処できるように準備されています。 

 1990年代に麻疹ワクチンをはじめとした生ワクチン接種後に10万接種に約2例の頻度でアナフィラキシー反応が認められました。2011年12年にはインフルエンザワクチンでアナフィラキシー反応が10万接種に1.4例の頻度で認められました。原因はワクチンの成分に対するIgE抗体というアレルギーに関連する抗体ができていたことです。その原因はそれまでアレルギー反応に関連するとは考えられていなかった成分でした。こうした原因が解明されてワクチンが改良され頻度は10万接種に0.1例以下となっています。

 アナフィラキシー反応は対処できるものです。重要なことはその原因が何かということです。初めて何十万人という人たちに接種される新しいワクチンですから、その原因をはっきりさせることが必要です。

ワクチンを選ぶ基準

――新型コロナウイルスワクチンが複数承認されるとしたら、自分に合ったワクチンを選ぶ基準は何でしょうか。

中山 まずはファイザー社のワクチン、次いでモデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンが認可されるかと思います。アナフィラキシーの原因も不明ですのでどのワクチンがという基準はわかりませんが、日本での臨床治験の結果と外国ですでに接種が始まっているワクチンの安全性情報を基準にします。

――安全性情報はどのように調べればよいでしょうか。

中山 製薬会社が治験の結果やワクチンの特性をHPなどで紹介すると思います。内容が専門的でよくわからない方は、製薬会社のコールセンターに確認するか、接種する医療機関に、どんなワクチンを接種予定しているのか、ワクチンの特性は何か、ご自身のアレルギーも含め、納得いくまで確認されるべきだと思います。接種後は、少しの変化であっても医療機関に報告してください。

 また、ウイルスの変異株の出現も問題となっています。こうした情報は国立感染症研究所の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報ページに掲載されています(新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報ページ (niid.go.jp))。

――ワクチンが開発・承認されたからといって、新型コロナウイルスを封じ込められるというわけではないのですね。

中山 新型コロナウイルスワクチンの歴史は始まったばかりで、まだはっきりわかっていないこともたくさんあります。免疫能の持続の調査もこれからですし、高齢者と医療従事者が対象となってワクチン接種が始まるかと思いますが、こうした人たちが感染を広げる感染源となっているわけではありません。コントロールには時間がかかると思います。それまでは「かからない、うつさない」ための感染防御対策が基本です。科学は信じることではなく、理解することです。ワクチンの有効性と安全性に関しては慎重に見守っていきたいと思っています。今一番必要なことは、正しく知って正しく恐れることに尽きるかもしれません。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

●中山哲夫(なかやま てつお)

1976年 慶應義塾大学医学部卒業。東京都済生会中央病院小児科、北里研究所ウイルス部、北里生命科学研究所所長を経て、北里大学 大村智記念研究所(旧北里生命科学研究所) ウイルス感染制御学研究室 Ⅱ 特任教授。

日本小児科学会小児科専門医、日本臨床ウイルス学会総務幹事、日本ワクチン学会理事、医学博士 専門はウイルス感染制御。

受賞歴は日本ワクチン学会高橋賞2018年「ワクチンの安全性に関する研究 -42歳からの基礎研究-」、2019年第43回多ヶ谷勇記念ワクチン研究イスクラ奨励賞「有効かつ安全なワクチン開発の研究」。

著書は「ワクチン ―基礎から臨床まで」(朝倉書店)ほか

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