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重盛高雄「謎解き?外食が100倍面白くなる話」

「鳥貴族」の店舗に訪問してわかった、業績低迷の“残念な原因”…商品の質=根本的問題

写真・文=重盛高雄/フードアナリスト
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「鳥貴族」の焼鳥

 外食産業で次々に店舗が閉鎖しているというニュースが巷を席巻している。確かに大手のひとつである「すかいらーく」が200店閉鎖、ワタミも114店閉鎖というだけでも世間に与えるインパクトは大きい。

 新型コロナウィルス感染症がいまだ猛威を振るい、感染者の人数が過去最大を記録している昨今では、外食産業に従事する人だけでなく、消費者も困惑しているに違いない。日本フードサービス協会のデータによれば、10月は外食産業全体では売上高前年同月比94.3%まで回復。ファストフードは同101.8%と2月以来久しぶりに100%を超える実績となった。ファミリーレストラン業態も同91.3%と中華・焼き肉が全体平均を上回る数値を上げるなど、徐々に改善がみられる状態であった。

 コロナ感染予防はすでに多くの店舗で実施され、消費者も意識しながら利用している。では、なぜ店舗閉鎖が起こっているのだろうか?

 ここにファストフードとファミリーレストランの違いが大きく影響していると考えられる。ファストフードは店内飲食であるイートインと持ち帰りのテイクアウトが主な販売スタイルだ。比べてファミリーレストランは、店内飲食が基本の販売スタイルだ。

 営業時間の短縮や酒類販売の時間制限など多くの感染予防対策が発出されるたびに、飲食店の多くは売り上げ減になることを予想する。客足が遠のくことは、当然売り上げに大きな影響を与える。客数が少なくても客単価が上がれば、売り上げは一定程度確保することはできる。非来店に対応した販売スタイルを従前から確保していたファストフード業態の立ち直りが早かったのは当然の帰結だろう。

 一方で来店を前提としたファミリーレストランは想像を超える苦難があり、もともと非来店客の対応は想定外であったかもしれない。来店客に備えたコロナ対策はもちろん、持ち帰り用の容器などの資材確保にも手間取った。消費期限のシールを張らないといけないし、資材調達に加え告知や人手の確保も重要だ。そして何よりも、販売する方法により、保健所への手続きも必要になる。

 これから新たにテイクアウト事業を始める人は少ないと思われるが、管轄する保健所のホームページで確認してみることをお勧めする。問い合わせが多いためだろう、割とわかりやすく表記しているホームページが増えている。消費者も一回ホームページを覗いてみるとよいだろう。保健所はコロナに対応しているだけでなく、本来の主たる業務は公衆衛生(食品衛生)に関わる業務を行っていることがわかる。

価値を提供するのは現場の店員

 ファミリーレストランは来店客の減少とともに、テイクアウトやデリバリーの告知に努めたが、売り上げや業績を伸ばしきるまでに至らなかった。先に述べたように売り上げが伸びなくても固定費はかかる。そのため店舗閉鎖や人員削減による固定費の削減に至ったわけだ。店舗の閉鎖も実は簡単ではない。物件の契約条件により通常の解約時期でなければ違約金が発生する場合がある。違約金を払ってでも店舗閉鎖を決断するに至ったことは大きな驚きであり、戦略上の大きな賭けとなる。

 店舗閉鎖に至る前には、当然ながら経費削減がある。最初に削減されるのはバイトなど非常勤であろう。店舗削減と並行して行われていれば、閉鎖対象店舗の職員を異動するなど店舗当たりの稼働人員は担保される。店舗閉鎖を伴わないままでの人員削減は、残る常勤職員に大きな負担がかかることになる。

 ひとつの例として紹介しよう。「トリキの錬金術」というフレーズで話題に上ったチェーン、鳥貴族。10月に訪問したある店舗では、店内のスタッフは店長含め4名であった。店内は3密防止のため定員の半数くらいの来店客。店長は焼き場とレジを担当し、動き回っていた。店長ともう1人が調理場をメインに、ほか2名はホールを担当していた様子。

 焼き場の前に席をとっていた私は、焼きすぎて焦げた部分をトングでちぎっていた光景を見せられた。あまりにサイズが小さくなりすぎた商品は、残念ながらゴミ箱に直行していたが、適度なサイズまでの商品はお客様のテーブルに運ばれていった。また、出来上がりの商品も人手不足のため、すぐに運ばれないことも少なくなかった。イートインの持ち味は焼き立てアツアツの食べ物、特に焼き鳥はその最たる商品だと私は思っている。

 会社の視点で見れば、店長さんは時間外手当や深夜残業手当が給与に含まれているため、働いてくれるほど固定費の効率(費用対効果)は良くなる。一方で消費者の視点では、質の低下した商品を購入させられること、イコール満足度は決して高くはならない。多くの経営者は、会社があるから雇用が守られる、守られていると言うだろう。

 しかし真実はお客様が来店し、購買するから会社が存続することができている。その消費者に選ばれる価値をつくっているのは、ほかならぬ直接消費者に商品を提供する現場の店員なのだ、ということに経営者は気づいていない。もしかすると気づかないようにしているのかもしれない。

 少ない人数のなかで働く店員たちのがんばりは評価に値するが、お客様の満足度向上に貢献しているかといえばそうではない。商品の出来が悪い、客足が遠のく、業績が悪化するという負のサイクルにすでにはまっているのだろう。鳥貴族は値上げにより業績が悪くなったとみられていたが、ほかにも原因があることが店舗を訪問してわかった。残念なことである。

 実は鳥貴族の客単価はここ数年、対前年比100%前後で安定している。2020年も同様の指標を示している。営業時間の短縮やコロナ禍の営業形態のなかでも変わっていない。これはすごいことだ、と私は思う。業績が一向に上向かないのは、客足の回復が見られないことが大きな原因といえる。

 すかいらーくグループも客単価は比較的好調に推移している。すかいらーくグループIRレポートによると、2020年はコロナ禍にあっても客単価前年比はすべてプラスで推移している。客数前年比と売上高前年比がパラレルに(正比例して)マイナスで推移しているにも関わらず。

 ここに大きなチャンスが隠されていることがわかる。表向きの業績悪化に隠れてはいるが、客単価の前年対比は鳥貴族、すかいらーくグループともに前年比を上回っていること。3密防止のため客数を半分にして対応しているのであれば、客数は前年比50%であろう。4月5月はさすがに厳しい数字であったが、夏から秋にかけて50%は十分上回っている。店舗閉鎖と併せて来店客の確保に取り組んでいる施策が効果を発揮しているのかもしれない。

 すかいらーくグループとワタミの取り組みについては、次回以降お伝えしようと思う。

(写真・文=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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