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GRヤリスという名の“小さきモンスター”…これで公道を走っていいのか?悶絶の試乗ルポ

文=萩原文博/自動車ライター
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今回、試乗したトヨタのGRヤリスRZ。“高級コンパクトカー”GRヤリスの実力やいかに?

 2020年の国産車は、トヨタヴィッツ改めヤリス、ホンダフィット、そして日産ノートと、コンパクトカーの当たり年となった。そのなかでも最も注目を集めたのが、2020年9月に販売開始されたGRヤリス。最上級モデル「RZハイパフォーマンス」の車両本体価格が456万円という、“高級コンパクトカー”だ。

 標準モデルのヤリスが139万5000円~249万3000円なのに対して、GRヤリスは265万円~456万円となっており、最上級グレードは、ミニバン人気モデルであるトヨタ・アルファード2.5S“Cパッケージ”の466万4000円に迫る高額車となっている。高級ミニバン並みのコンパクトカーGRヤリスの実力は、どのようなものなのだろうか?

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今回の車両をお貸し出しくださったのは、国産から海外車まで多くの車両が揃うユニークなレンタカー店「おもしろレンタカー」である。

GRヤリス本来のパフォーマンスを味わうなら、1.6L直列3気筒ターボに4WDの「RC」以上のモデルを

 試乗インプレッションの前に、もう少しGRヤリスについて詳しく紹介しておきたい。

 GRヤリスは、車両本体価格265万円のRS、330万円のRC、396万円のRZ、そして456万円のRZハイパフォーマンスの4グレードが用意されており、今回試乗したのは396万円のRZ。

 RSは1.5L直列3気筒自然吸気エンジン+CVTというパワートレインを搭載したモデルで、GRヤリスの走りを誰でも気軽に楽しめるモデル。GRヤリス本来のパフォーマンスを味わうなら、最高出272ps、最大トルク370Nmを発生する1.6L直列3気筒ターボ+6速MT、そしてGR-FOURと呼ばれるスポーツ4WDシステムの駆動方式を搭載したRC以上のモデルだろう。

 ちなみにRZが1.6Lターボエンジンを搭載したGRヤリスの標準グレードであり、RCはRZをベースに走りに必要な装備以外を簡素化したモータースポーツ参戦用グレード。そしてRZハイパフォーマンスは、冷却スプレー機能付き空冷インタークーラーをはじめ、前後のデフにトルセンLSD、そしてBBS社製アルミホイールにミシュランパイロットスポーツ4Sを標準装着……と、走りに磨きをかけたモデルとなっている。

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1.6L直列3気筒ターボエンジンを搭載。走りに期待が高まる。

構造用接着剤、スポット溶接約200点増し、アルミ素材…標準車のヤリスとはまったくの別物

 標準車のヤリスが5ドア車なのに対して、GRヤリスは欧州市場で導入されている3ドア車をベースとしている。このボディに、構造用接着剤の使用をはじめ、スポット溶接打点を約200点増し打ち。そして大きな開口部となるバックドアの開口部まわりに専用の骨格構造を採用することで、優れたねじり剛性を確保している。加えて、エンジンフードや左右ドア、バックドアにはアルミ素材。またルーフには新工法で製造されたSMCを採用。こうした結果、大幅な軽量化と低重心化を実現しているのである。もはや、標準車のヤリスとはまったくの別物といっていいだろう。

 GRヤリス RZのボディサイズは、全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mm。標準車のヤリスは全長3940mm×全幅1695mm×全高1500mmなので、前後のフェンダーの張り出しが特徴のGRヤリスのほうが、ワイド&ローのフォルムとなっている。またGRヤリス RZの車両重量は1280kgで、パワーウェイトレシオは4.71kg/psという数値を実現している。

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標準車のヤリスは5ドア車だが、GRヤリスは3ドア。
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大幅な軽量化と低重心化を実現したGRヤリスは、もはや、標準車のヤリスとはまったくの別物といっていいだろう。
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ブラックで統一されたインテリア

「これが3気筒なのか?」知らずに乗れば2Lターボと勘違いするほどのパワー感

 GRヤリス RZに乗り込むと、ブラックで統一されたインテリアに包まれる。ホールド性の高いスポーツシートに腰を下ろして赤いアクセントカラーのスターターボタンを押すと、1.6L直3ターボエンジンが起動。カチカチっとダイレクト感のあるシフトは非常にフィーリングが良く、気持ちよく入る。

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スポーツシートでホールド性抜群。

 まずは一般道を走行。

 駐車場から出るときの段差や大型車などの通行によってアンジュレーションのある路面からの入力に対しても、非常に穏やかかつしなやかなサスペンションの動きで対応してくれるので、いやな感じはまったくない。どちらかというと拍子抜けするほど運転しやすく、快適そのもの。

 しかし、高速道路に入り合流での加速フィールは圧巻。料金所を抜けて2速で一気に加速すると、そのフィーリングはもうコンパクトカーのレベルを超えている。その感覚はスポーツカーそのものだ。高回転まで回してもいやなノイズや振動もなく、グイグイと加速していく。正直、「これが3気筒なのか?」と疑いたくなるほど。知らずに乗れば2Lターボと勘違いするほどのパワー感がある。

 高速道路もクルージング状態。6速に入れてしまえば快適そのもので、神経質な部分はまったく感じない。これでアダプティブクルーズコントロールが装着されていたらどこまでも走っていける……と思えるほどの快適性である。

GRヤリスは、まさに公道を走行できるレーシングカーである

 しかしワインディングに入るとキャラが一変するのが、GRヤリスの面白いところ。まさにWRC(世界ラリー選手権)を勝つために作られたスモールモンスターとなる。

 今回は筑波山周辺のワインディングロードを走行したのだが、タイトなブラインドコーナーが連続するうえ、路面には速度を抑えるために波状のうねりが施されている。GR-FOURという4WDシステムを搭載したGRヤリスは、FFをベースとしているにもかかわらず、リアの安定性が抜群でタイヤの接地感とグリップ状況がドライバーにダイレクトに伝わってくる。しかも前後のトルク配分を最適化してくれるので、面白いようにコーナーを曲がることができる。

 さらにアクセルを踏めば踏むほど曲がってくれ、そのうえリアタイヤの状況が手に取るようにわかるので、コントロールしやすい。波状のうねりにもしっかりと追従してくれるほど路面追従性が高く、運転していて楽しいのだ。見た目はコンパクトカーだが、GRヤリスはまさに公道を走行できるレーシングカーであるといえよう。

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運転中リアタイヤの状況が手に取るようにわかるので、コントロールしやすい。

 試乗する前には、「正直このクルマが400万円もするの?」などと思っていたが、走りのフィーリングは1000万円クラスの4WD車に匹敵する実力を持っていると感じた。フロントウインドウに刻まれた「モリゾウ」【註】のサインはダテじゃないということを思い知らされた次第だ。

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フロントウインドウに刻まれた「モリゾウ」のサイン

 これまでも「GR」の冠が付いたトヨタ車は何台も存在したが、このGRヤリスこそ、GRブランドの真のスタート地点だといえるのではあるまいか。

【註】「モリゾウ」とは、トヨタ自動車代表取締役社長である豊田章男氏のレーシングドライバーとしての名前。

(文=萩原文博/自動車ライター)

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2名分のリアシートを備えている。
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ラゲージスペースも広さ十分。
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GRヤリスのロゴ

萩原文博/モータージャーナリスト

萩原文博/モータージャーナリスト

モータージャーナリスト。1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューを果たし、大学在学中に中古車雑誌編集部のアルバイトに加入し、中古車業界デビュー。1995年より編集部員として本格的に携わり、2006年からフリーで活動。中古車の流通、販売の造詣が深く、新車でも多くの広報車両に乗車するなど精力的に取材を行っている。

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