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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

コロナ経済対策、歪む財政…短期国債急増で自転車操業、国債市場の不安定化が懸念

文=小黒一正/法政大学教授

 すなわち、2020年度のコロナ対策により、2012年度から2019年度の平均で約26兆円しか発行していなかった短期国債を2020年度は82.5兆円も発行したが、これは1年以内に返済しなければいけない。しかし、その償還の財源がないため、2021年度においても短期国債を83.2兆円も発行する必要性に迫られたのである。

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 短期資金繰りの自転車操業は金利上昇リスクに脆弱であり、国債管理の安定化を図るためには、短期国債を徐々に償還が10年の長期国債や20年以上の超長期国債に借り換える必要がある。その際、長期国債の買い手として期待できるのは、資産負債のデュレーション(平均残存期間)管理のために長期国債の購入ニーズがある生保などの金融機関だが、人口減少や少子高齢化が進むなかで保険契約が減少する場合には一定の限度もあろう。

海外投資家の国債保有割合が上昇

 また、図表2のとおり、日本の国債市場も構造的な変化が起こっている。まず、これまで海外投資家の国債保有割合(ストック)は2004年で約4%であったが、2019年では約13%に上昇してきている。加えて、国債流通市場における売買シェア(現物)についても2004年12月で約14%であったが、2019年12月では約39%に上昇してきている。特に、売買シェア(現物)は日銀が異次元緩和を開始した2013年以降から急上昇している。

 海外投資家の拡充は国債の引き受け先に関する多様化を図るためには望ましいが、ギリシャの財政危機でも明らかなとおり、海外投資家は危機時に躊躇なく国債を売却するため、海外投資家の割合が増すと国債市場が不安定化する懸念がある。国債市場の安定化を図るためには、できる限り国債の国内消化に努めるとともに、日本財政に対する信認を向上させる必要があることを意味する。

 緊急事態宣言は再び発令された今、まずは感染症対策の強化と経済の再生が優先であることは言うまでもないが、コロナ禍にあっても財政再建の目標を堅持し、中長期的な財政規律を示す必要があろう。

(文=小黒一正/法政大学教授)

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