アイリスは中国の2拠点と角田工場を合わせて、毎月2億3000万枚の家庭用マスクを供給できる体制を整えた。20年3月に計画していた月6000万枚(輸入を含めて1億4000万枚)という生産計画を大幅に上回った。「超快適マスク」「超立体マスク」で知られる国内最大手のユニ・チャーム(東証1部上場)に匹敵するマスクメーカーとなった。

 マスクの国内生産は大山会長が想定していなかった効果をもたらした。プラスチック成型品を祖業とするアイリスは収納ケースや園芸・ペット用品などをホームセンターで販売してきた。さらなる成長を考えると販路の拡大が重要になる。ここ数年、取り組んできたのがスーパーマーケットだった。だが、スーパーは問屋を介した仕入れが中心で思うように販路を広げられなかった。

 国産マスクが、攻めあぐねていたスーパーのルートを開拓する切り札になった。「商品の不足に悩むスーパーにも供給しようと考え、生産体制を思い切って拡大した」(大山会長)。国産マスクは全国のスーパーから引く手あまただ。国産マスクをアイリスから仕入れるようになったスーパーは乾電池やLED電球など、他のアイリス製品の取り扱いを増やしていった。これが家庭用品の販売拡大につながり、思わぬ“マスク効果”を生み出した。

「ピンチをチャンスに」をモットーに売上高1兆円に挑戦

 アイリスオーヤマが21年1月7日に発表した20年12月期のグループ全体の売上高(速報値)は前期比38%増の6900億円だった。従来予想を900億円上回った。経常利益は2.2倍の621億円で、売り上げ、経常利益共に過去最高となった。コロナ禍でマスク需要が高まったほか、在宅勤務が広がり調理家電や仕事用の机や椅子の販売が増え、ネット通販事業の売り上げは前年比2倍の伸びを見せた。人工知能(AI)で発熱者を検知するサーマルカメラも好調だ。

 新型コロナの第3波が到来するなか、感染予防効果が期待される加湿器の需要は急速に高まった。アイリスの加湿器は20年11月の販売金額が前年同月の3倍になった。加湿器を生産する中国・大連工場では生産台数を当初計画に比べて5割増やした。21年12月期の売上高予想は前期比23%増の8500億円とした。大山会長は石油危機やバブル崩壊、リーマン・ショックなど、大事件に遭遇するたびに会社の姿を変革し、ピンチを乗り越えてきた。

「ピンチはチャンス。大ピンチは大ビックチャンス」が大山会長の持論だ。コロナ禍は、これまで経験したことのない世の中の変動をもたらしているが、「こんなときこそ新しい需要をつかむチャレンジを積極的にすべきだ」と決意している。

 コロナ禍で採用を減らす企業が相次いでいるなか、優秀な人材を確保する好機と捉え、21年度の新卒採用を400人から6割増やし、過去最多の640人とする。通年採用も新たに導入。飲料水など新規事業のために多様な人材を確保する。

 アイリスは生産拠点を中国に集中させてきたがことを改め、国内生産に回帰。有事に素早く生活必需品やマスクを供給できるようにし、次のパンデミックへの備えを万全にする。

 大山氏は次々と積極策を打ち出しアクセルを踏み続ける。22年12月期の売り上げ1兆円をひとつの大きな通過点とできるかどうかが試金石となる。

(文=編集部)

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