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世界で無料・民間PCR検査拡大が常識、日本のみ逆行…厚労省「検査拡大で医療崩壊」堅持

文・構成=編集部
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 本来であればもっと早く医療機関主体の検査を、大規模に行う体制の検討が行われていれば良かったというだけです。こうなってしまっては民間でもなんでも使わざるを得ません。少なくとも首都圏では感染者の受け入れと治療で、保健所も医療機関も限界です。彼らに新たに大規模なPCR検査を実施する余力があるのかは疑問です」

 この混沌とした状況の原因はなんなのか。PCR検査の大規模実施と、これまでの厚労省の取り組みに関し、特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に聞いた。

上昌広氏の解説

 まず、無症状感染者対策が現在は世界のコロナ対策のコンセンサスになっていることを考えなければなりません。

 今回のPCR検査の政府方針は、厚生労働省や専門家のアリバイ作りだと思います。しかし、政府主導で保健所を介して検査をするのは現実的ではありません。保健所の代表者の集まりでは、「濃厚接触者の調査をやめさせてくれ」との声が上がっています。この状況下で新たな仕事を課すのは無理です。

 いずれにしても、大規模検査をやるということは、これまでの対策がダメだったということを改めて検証しないといけません。

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 上の表はPCR検査数を感染者の数で割ったものです。1人の感染者を見つけるために、検査数がどれくらい必要だったのかを表しています。中国では、感染者1人を見つけるために1000件以上検査をやっています。つまり無症状感染者が0.1%街中にいるのであれば、1人を見つけるためには1000人検査をしなくてはならないのです。

 グラフにある感染者が多い国は検査数が足りないんです。日本では武漢に対して、中国政府が命じた厳しい都市封鎖にばかり、関心が集まりましたが、注目すべきは再燃を許さなかったことです。PCR検査を徹底して、感染が小規模なうちに封じ込んだのです。

 欧米先進国は感染者数に比して、検査数が足りませんでした。多くの無症状感染者を見落とし、彼らが市中で感染を拡大させています。しかし、中国とは政治体制が異なる欧米先進国でも、中国とは異なる方法で検査数を増やそうとしています。

 例えばアメリカです。カリフォルニア大学サンディエゴ校は1月に入り、11台のPCR検査自動販売機をセットしました。今後、1~2週間でさらに9台を追加するそうです。同大学の学生はIDカードをスワイプするだけで、無料で検査を受診できます。これまでの2週間に1回から、毎週1回検査を受けるように推奨されるといいます。

 アメリカ国内では各地で無料あるいは定額で検査が受けられますが、多忙な現役世代はわざわざ検査を受けに行けない。このような人たちへの商品開発も進んでいます。

 昨年11月17日に、自宅で利用できる検査キット(Lucira COVID-19 All-In-One Test Kit)に緊急使用許可が与えられました。30分程度で結果がでるものですが、このキットを入手するには医師の処方箋が必要でした。そこで12月15日には処方箋不要の抗原検査(Ellume COVID-19 Home Test)に対して緊急使用許可が与えられました。そして、1月6日には、アマゾンがデクステリティ社の検査キットのオンライン販売を開始しました。1パック約1万1300円です。

 企業も検査体制強化に協力しています。ネットフリックスやゴールドマンサックスなどの一部の企業は、無症状の感染者を判別するために、企業が費用を負担し、検査を提供しはじめています。グーグルは9万人の社員に対して、毎週検査を実施することになりました。

 この病気の本質と抜本的な対策は、『無症状感染者がうつす。数が増えてどうしようもなくなったらロックダウンする。そうでなければ徹底的に検査をして、無症状感染者を家あるいは医療施設にいてもらう』ということです。

 日本は第一波をうまく抑制したので、そのあとうまくできれば中国みたいに感染を再燃させずに済むはずでした。感染者が少ないうちは、1000倍やるのも簡単です。アメリカやヨーロッパのように感染者が膨大に出れば、もうロックダウンするしかありません。

 政府や専門家会議が提案するように、飲食店の営業規制だけやって、感染抑制がうまくいくのなら、世界中どこでも飲食店の規制だけでやめています。無症状感染者を同定できないので、全員まとめて家にいるよう求める。それがロックダウンです。

 日本はそれでもまだ感染者は少ないので、検査だけでやれる可能性はあるとは思います。

 これまで日本が重視してきた『クラスター対策』は発熱者と濃厚接触者を明らかにするものでした。しかしここに無症状感染者の同定はふくまれません。欧米が大量の検査に着手し、無症状感染者の同定をはじめているのに、日本の厚労省や専門家会議は『検査を増やすと医療現場が混乱する』と主張し続けています。そして、もはやそんなことは世界の誰も言わなくなっています。

 アメリカなどが産官学を挙げて、検査体制の構築を図っているのに、日本の厚生労働省は民間PCR検査の拡大などに、なおも懐疑的な主張をしています。理由は『検査』そのものを厚生労働省の管理下に置きたいのだと思います。また、一連の対策の責任を追及されるのが嫌なのではないでしょうか。いずれにせよ、政府の専門家会議のメンバーや、一連の対策を起案していた厚労省の医系技官の責任は追及されるべきだと思います。

(文・構成=編集部)

 

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