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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

「暖房ベスト」ヒットの兆し…“着ぶくれ”なし&快適、自宅・オフィス・建設現場で愛用

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
「暖房ベスト」ヒットの兆し…“着ぶくれ”なし&快適、自宅・オフィス・建設現場で愛用の画像1
充電式暖房ベスト」(「マキタ HP」より)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で暖房ベストがブレイクしそうだ。暖房ベストとは、ナイロンやポリエステルでつくられたベストの中に発熱体を埋め込んだものだ。今やカジュアルシーンだけではなく、スーツの下に着用している会社員も見かけるようになった。寒冷地では感染防止のために寒さに震えながら換気を余儀なくされる学校やオフィスもあり、さらに需要の裾野が広がるのではないか。

 暖房ベストは「ヒートベスト」「電気ベスト」など、さまざまな商品名で発売されている。最近では温度を3段階に調整ができるものなど、バリエーションも多彩になってきた。価格は数千円のものから2万円ぐらいのものまでと幅広い。着用時にはモバイルバッテリ(携帯用バッテリ)を使用することは共通で、バッテリとベストのジャックやUSBコネクタなどをつなぎスイッチを押すだけと操作も簡単だ。

 実は筆者も着用している。隙間だらけの古い木造の我が家では、エアコンとファンヒーターを同時に使用しても、たいして暖かくはならない。冬は背中一面にカイロを貼り、ヒートテックを着て凌いできたが、カイロも1回で6枚ほど貼るので金額もかさむ。ヒートテックも汗をかけば、すぐに着替えをしないと体が冷え、着替えも何枚も必要という問題があった。

 暖房ベストの存在を知っても「気持ち程度の効果だろう」と、それほど期待はしていなかったが、寒さに耐えかね購入して着用したところ、まるでコタツをまとっているようだ。何より、朝起きてすぐに動ける快適さが嬉しい。

 調べてみると、アウトドアを楽しむ人やバイクや自転車に乗る人に以前から愛用されているらしい。最近では、体の冷えや腰痛の緩和を期待したい人など健康上の理由から着用する人も増えている。さらには、スーツの下に着用する人も現れ、ビジネスシーンにも活躍の場が広がっている。スィッチを入れなくても意外に暖かく、着替えが簡単にできない会社員にとって、汗ばむ前にスィッチを消したりと温度調整ができる手軽さが、会社員の支持を後押ししているようだ。                  

“+10℃ 体の芯から素早く暖める”

 コロナ禍で例年以上に体調管理が求められるなか、暖房ベストはさらにブレイクする予感がするが、製造・販売している株式会社マキタ広報に聞いてみた。ちなみに、同社は電動工具メーカーとしては世界170カ国に販売網を持ち、2019年度国内シェア約60%、世界シェア約25%と世界トップクラスを誇る。海外でも暖房ベストを販売している。

――暖房ベストがブレイクしそうですが、いかがですか。

マキタ 電動工具が主に使われる建設・建築現場では、屋外や暖房設備が十分でない現場もあり、やはり気温が下がる冬場には欠かせない商品となっています。

――日本ではいつから発売されているのですか。

マキタ 公的な資料がありませんので、正確なことはわかりません。当社のお話をさせていただきますと、2013年10月に初めて商品化しました。当時はファスナーがついて袖が着脱できるジャケットタイプでした。その後、15年10月にベストタイプ(CV200D)を発売しました。現在では改良を重ね、CV202Dが最新商品となります。

――なぜ、電動工具メーカーの貴社が開発・発売されたのですか。

マキタ 当社は一般の方には馴染みがないかもしれませんが、商業施設や駅・空港で見かけるコードレスクリーナーの会社といったら、おわかりいただけるかもしれません。クリーナーは代表的なものですが、従来から建築現場などで働く方のニーズを製品化してきました。近年、力を入れているのが、現場環境を改善し快適にする商品開発です。

 一例を申し上げると、テレビ・ラジオ・コーヒーメーカー、保冷温庫、さらに夏場の酷暑をしのげるファンを内蔵した“ファンジャケット”などです。暖房ベストも、冬の早朝深夜の作業現場は大変冷え込むとのニーズを受けて、製品化したものです。

――暖房ベストのお客様の反応はいかがですか。

マキタ 当社の暖房ベストは“+10℃ 体の芯から素早く暖める”とのキャッチコピーを掲げている通り、日本の寒冷地は言うに及ばず、北欧など極寒国の方からも大変喜ばれています。子供用はつくっていませんが、凍えそうな寒さのなかで開催されたスポーツ観戦の際に、お子様に着用させた親御さんから「寒さを気にすることなく、観戦に集中できた」とのお声もいただいています。

連続20時間着用

――暖房ベストを開発する上で、どんな工夫がありましたか。

マキタ 年々、建築・建設現場では人手不足が深刻化しており、当社では人手が少ないなかで現場の作業効率を高めるのに役立つ充電式製品の開発に注力しています。一昔前の電動工具は、電源から延長コードを引っ張って使う電気コード式が一般的でしたが、近年、大容量を蓄えることができるリチウムイオンバッテリの普及により、現場事情は一変しました。電気コード式と同等の性能を有する充電式工具が続々と製品化され、延長コードを使わずに済むようになったからです。前述のテレビやラジオ、コーヒーメーカーなども充電製品です。現場のニーズが多極化するなかで、暖房ベストに関しても充電製品メーカーとしての当社のノウハウが生かせるのではという思いはありました。

 ちなみにリチウム電池は携帯電話やPCのバッテリ、車など幅広い用途で使用されています。ただ、建築現場は携帯やPCを使用する環境よりハードです。それに、いつでも簡単に充電できるわけではありませんので、長時間の連続使用が前提となります。さまざまな作業現場の環境にも耐えられるように、電動工具で充電製品の開発力を磨いてきました。当社の暖房ベストが連続20時間着用できるのも、こうした開発力がベースにあったからです。電動工具で先行していたバッテリ技術のプラットフォームがあったからこそ暖房ベストの取り組みも早かったのだと思います。

――20時間の連続使用は助かりますね。プラットフォームとは、具体的にどのようなものでしょうか。

マキタ 当社の充電製品には、高出力な40Vmaxシリーズを筆頭に、18V、14.4V、10.8V、7.2Vなど電圧の異なる複数のシリーズがあります。バッテリと充電器は同じシリーズで共通して使えるため、1つでも製品を使われている方は、すでにバッテリと充電器というプラットフォームをお持ちになっているということです。ホーム用電動工具専用ライトバッテリは除きますが、当社の充電式暖房ベストは18V、14.4V、10.8Vシリーズに対応しています。バッテリ技術に加え、各種バッテリに対応できるラインアップはほかにないと自負しております。

――充電式の電動工具を使っている方なら、バッテリは買わなくてよいのですか。

マキタ 電動工具やクリーナなど当社充電製品をお使いの方でしたら、暖房ベスト本体とバッテリホルダのみの購入でお使いになれます。お持ちでない方はバッテリ・充電器もあわせて購入していただく必要があります。正しい知識をお持ちいただくために申し上げるのですが、リチウム電池は革新をもたらしましたが、半面、水に弱く、一つ間違えれば発火の可能性もあるため、専門知識を必要とします。これは、リチウム電池を使っているすべての製品に共通することです。安全確保のために純正のバッテリのご使用をお願いしています。また、現場での事故防止のために、ベスト本体の素材にも検討を重ねた素材を採用しています。

――素材の工夫とはなんでしょうか。

マキタ 当社が開発する上で何よりも大切にしていることは、“安心・安全の確保”です。いかなる建築・作業現場でも作業を妨げないことに加え、現場の資材に引っかかると事故につながりますので、着ぶくれにならないことも配慮しなければなりません。タイトなフォルムで体にフィットし、アクティブに動けるようにフレキシブルなデザインに仕上げているのも“安心・安全”のためです。表と裏地にはポリエステルを使用し、小雨程度の水の侵入を防ぎ、汗等の湿気を逃がすことで、蒸れずに快適な着心地を実現しています。ただ、すべての暖房ベストにいえますが、低温ヤケドにならないように、ご自身での温度調整管理をお願いしています。また、バッテリに直接水が掛かる事態は控えていただきたいと思います。

――どこで購入できるのでしょうか。

マキタ 当社登録販売店の金物店、建築資材店、ホームセンターなどで販売またはお取り次ぎをしています。HP上に-5℃で暖房ベストを着用した際の体温の変化もアップしていますので、暖房ベストをご存じない方は、一度、HPで検証データや豊富なラインアップをご覧いただければと思います。

高齢者や福祉関係にも支持

 コロナ禍で電車の換気は必要と理解しても、走行中は寒さが一段と染みる。お体の不自由な方はもっと堪えるだろう。先日、雨の中、両足が不自由な方が、両杖をつきながらレインコート姿で歩く姿を目撃した。杖がすべったのか、よろめかれたので、思わず駆け寄った。「病院の通院日で、近くだから歩いて来た。困っているのは、歩行の助けではなく、寒さだ」。見れば小刻みに体が震えていた。

 寒さは体温を低下させ、思考を鈍化させるだけではなく、時として人命を奪うこともある。ご自身や介助の方が、温度調整ができるのであれば、暖房ベストは高齢者や福祉関係にも支持を得ると考える。

 コロナ禍で健康意識が高まっている今、暖房ベストは今後、需要の裾野が広がるのではないか。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

【株式会社マキタデータ】

本社所在地:〒446-8502 愛知県安城市住吉町3丁目11番8号
創業:1915年(大正4年)3月21日

設立:1938年(昭和13年)12月10日

代表:取締役社長 後藤宗利

資本金:242億561万円 (2020年3月31日現在)

四半期決算:2021年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結税引き前利益は、前年同期比11.0%増の383億円に伸展。通期の同利益を従来予想の530億円から675億円(前期は660億円)に27.4%上方修正して、2.3%増益見通しとなり、話題を呼んでいる。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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