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ホンダN-ONEかスズキハスラーか…軽の新時代となった2020年の車、ベスト5を考察

文=萩原文博/自動車ライター
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 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年は自動車業界もおおいに翻弄された。特に上半期は新車の発売が遅れ、下半期にずれ込むということもあった。

 そんな特別な年だった2020年。筆者がこの1年で200台以上乗ったクルマのなかから、国産・輸入車問わずベスト5をチョイスしてみたい。すでに他媒体でもベスト3を発表しているが、その原稿執筆の後にも試乗を重ねており、その原稿とは順位が入れ替わっていることをお伝えしておきたい。

第5位、BMW M440i xDrive Coupe、FR車のように、アクセルを踏めば踏むほどフロントが入り込むコーナリング

 まず、第5位はBMW4シリーズ。試乗したのはM440i xDrive Coupeで、車両本体価格は1025万円だ。

 大きく縦方向に拡大したキドニーグリルに賛否両論はあったが、試乗車はブラックアウトされていてあまり目立たなかった。それ以上に、全長4775mm×全幅1850mm×全高1395mmというボディサイズが非常にコンパクトに凝縮されて見えるデザインが、なんとも秀逸だ。

 搭載するエンジンは最高出力387ps、最大トルク500Nmを発生する3L直列6気筒ターボ。アクセルレスポンスがよく、踏むとリニアに反応してくれてエンジンの回転数に合わせてどこまでも加速していきそうなフィーリングが特徴。駆動方式はx-Driveという4WDだが、装着されているタイヤはフロントが225/40R19、リアが255/35R19とFR車のように前後異サイズというのも面白い。

 運転してみると、4WD特有のハンドルを切った分だけ曲がらないアンダーステアは微塵もなく、コーナーを曲がる際にはFR(後輪駆動)車のようにアクセルを踏めば踏むほどフロントが入り曲がってくれる。その際リアは滑るのではなく、しっかりと路面をとらえて曲がっていくので、どんな人でも安心して楽しめるのだ。5位に入れたのは、3Lターボエンジンのフィーリングのよさ、そしてアクセルコントロールでコーナーを曲がるという感覚が非常に楽しかったからだ。

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BMW4シリーズのM440i xDrive Coupe。アクセルレスポンスがよく、どこまでも加速していきそうだ。
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ボディサイズがコンパクトに凝縮されて見えるデザインが秀逸だ。
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リアが滑るのではなく、しっかりと路面をとらえて曲がっていくので、どんな人でも安心して楽しめる。

第4位はスバル・レヴォーグ、調教されたサラブレッド、決して暴れ馬ではない

 第4位は、日本カー・オブ・ザ・イヤー2020-2021のイヤーカーに輝いた、スバル・レヴォーグ。試乗したのは、進化した運転支援システム“アイサイトX”を搭載したSTI Sport EXで、車両本体価格は409万2000円だ。

 先代モデルには、非力感が否めない1.6Lターボと最高出力300psを発生するパワフルな2Lターボという2種類のエンジンが搭載されていたが、現行型では最高出力177ps、最大トルク300Nmをレギュラーガソリンンで発生する新開発の1.8Lターボエンジンのみとなっている。

 ボディサイズは全長4755mm×全幅1795mm×全高1500mmと大型化せずに、都市部に多い立体駐車場(高さ制限155cm)に対応しているのも美点だ。

 またSGPと呼ばれる新プラットフォームに加えて、ボディ全体の骨格連続性を高める「フルインナーフレーム構造」や、微小な変形を抑える「構造用接着剤」などを採用し、高剛性化と軽量化を両立している。

 試乗した印象は、先代モデルがスポーティさを前面に押し出していたのに対し、現行型は非常に質感が向上しワンランク上の高級車のような走りとなった。もちろん、ドライブモードをスポーツやスポーツ+に選択すれば、エンジンのフィーリングやステアリング操作、そして4WDの制御などがよりダイナミックになるのだが、それでも調教されたサラブレッドのようなもので、決して暴れ馬にはならない。この点が、このレヴォーグで最も大きく進化した点だろう。

 アイサイトXは、現在の国産車では最も優れた運転支援システムであることは間違いない。それでも4位に甘んじたのは、やはり電動化への対応。スバルはe-BOXERというハイブリッドシステムを採用しているが、他社と比べると出遅れている感が否めない。この点を考慮して4位とした。ただし、商品の魅力自体からいえば、もっと上位となる実力は秘めているといえよう。

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スバル・レヴォーグのSTI Sport EX。進化した運転支援システム“アイサイトX”を搭載している。
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高剛性化と軽量化を両立したボディ。大型化せずに、都市部に多い立体駐車場に対応しているのも美点。
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調教されたサラブレッドのようなもので、決して暴れ馬にはならない。ワンランク上の高級車のような走りだ。

第3位はルノー・ルーテシア、国産車では味わえない、FF車とは思えないほどシャープなハンドリング

 第3位は、欧州のBセグメント(コンパクトカー)というカテゴリーで最も売れている、ルノー・ルーテシア。現行モデルは、2020年10月に導入された。

 先代モデルは、ADASと呼ばれる運転支援システムが正直物足りなかったが、新型ルーテシアはこの点においても大幅に進化している。

 見た目の変更は小さいが中身の進化は大きく、骨格には新設計されたモジュラープラットフォームのCMF-Bプラットフォームを採用。このプラットフォームは12月に発売されたばかりの日産ノートにも採用されているので、大注目している。この軽量・高剛性のシャシーに最高出力131ps、最大トルク240Nmを発生する1.3L直列4気筒ターボエンジンと、素早い変速が可能な7速EDCというパワートレインを搭載。さらに運転支援システムは、アクティブエマージェンシーブレーキをはじめ、アクティブクルーズコントロールなど最新のシステムを採用することで、これまでの遅れを一気に挽回したのだ。

 新型ルーテシアのボディサイズは、全長4075mm×全幅1725mm×全高1470mmと、先代のボディサイズを踏襲している。試乗したのは、車両本体価格276万9000円のインテンステックパックで、運転支援システムが充実したモデル。それでも300万円以下という価格にまず驚かされた。そしてさらに驚かされるのはその走行性能。

 FF(前輪駆動)車とは思えないほどシャープなハンドリング、そして電子デバイスに頼らなくてもスムーズなコーナリング性能。フラットな乗り味は絶品で、同じクラスの国産車などでは到底味わえないレベルの高さだ。とにかくカーブでの旋回性能の高さは絶妙で、運転していて楽しくてしかたなく、箱根などのワインディングで思いっきり走ってみたいと思わされた。

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ルノーのルーテシア、インテンステックパック。欧州のコンパクトカーカテゴリーで最も売れており、先代モデルから大幅な進化を遂げた。
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軽量・高剛性はもちろん、1.3L直列4気筒ターボエンジンと7速EDCというパワートレインを搭載。さらには最新の運転支援システムも搭載されている。
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フラットな乗り味は絶品で、同じクラスの国産車などでは到底味わえないレベルの高さだ。

第2位はホンダ・N-ONE、外観デザインはあえて変えず、走行性能や安全性能を進化させるという手法

 第2位は、こちらも2020年11月にフルモデルチェンジを行い、新型にスイッチしたばかりのホンダ・N-ONE

 タイムレスデザインということで、見た目は先代モデルとほとんど変わっていないが、中身は一新。2代目N-BOXで採用した軽量・高効率なプラットフォームをベースに構造を刷新し、高粘着度接着剤によるボディ接合部位を拡大。さらに高強度化に寄与するハイテン材を随所に使用することで、高剛性化と軽量化を両立している。しかも2WD車の全高を1545mmに抑えたことで、都市部に多い立体駐車場に対応している。

 グレード構成は、オリジナル、プレミアム、プレミアムツアラー、RSの4タイプが用意されており、今回はオリジナルとRSに試乗した。

 現在、軽自動車はN-BOXをはじめとするスーパーハイトワゴンと呼ばれる車種が人気だ。リアスライドドアを採用し、広い室内空間を確保し高い利便性を誇る車種だ。しかし、車両重量が重く重心も高くなってしまうので、走行性能という点では不利。

 ところが、そういったモデルに多く乗った後にN-ONEに乗ると、軽自動車らしいキビキビとした軽快な走りを味わえる。しかもRSには6速MTが搭載され、またこの6速MTのシフトフィールの出来映えが素晴らしく、シフトチェンジが楽しくなる。

 あえて外観デザインには手を入れず、走行性能や安全性能を進化させるという手法も目新しく、高く評価できる。

 一点残念なのは、車両本体価格が159万9400円~202万2900円と、エントリーグレードの価格が高いこと。プレミアム軽自動車という位置づけなのだろうが、せめてエントリーグレードくらいはもう少しフレンドリーな価格設定にしてもらいたいと思う。

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人気の車種スーパーハイトワゴンとは一味違うホンダ・N-ONEは、2020年11月にフルモデルチェンジを行ったばかり。
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見た目は先代モデルとほとんど変わっていないが、中身が一新され、高剛性化と軽量化を両立。全高を抑え、都市部に多い立体駐車場に対応している。
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あえて外観デザインには手を入れず、走行性能や安全性能を進化させるという手法も目新しく、高く評価できる。

第1位はスズキ・ハスラー、ボディ剛性、優れた操縦安定性、妥協のないクルマ作り

 そして、2020年に筆者が試乗したクルマのなかでNo.1に輝いたのは、軽自動車のスズキ・ハスラー。私にとっては、ハスラーが2020年を代表するクルマであることはずっと変わることがなかった。

 現行型ハスラーは、スーパーハイトワゴンのスペーシアをベースとしているが、リアドアをヒンジ式に変更。さらにバックドア、センターピラー、サイドドアでそれぞれ「環状骨格構造」を形成することで、ボディ全体で剛性向上。そのうえ、ボディのスポット溶接部に「構造用接着剤」をスズキ初採用し、部品間のわずかな隙間をも埋めることで接合を強化。ボディ全体の剛性を向上させ、優れた操縦安定性、乗り心地を実現している。

 また、こもり音や雨音を低減する「高減衰マスチックシーラー」を軽自動車で初めて採用し、静粛性の高い室内空間を実現。防音材や遮音材も最適に配置することで、さらに静粛性を高めているという。こうした効果は絶大で、車高が高いにもかかわらず、不快な揺れが非常によく抑えられている。

 新開発の自然吸気エンジンでも、ボディがしっかりとしているので、アクセルをたくさん踏まなくてもスムーズに発進できる。さらに、フロントシートだけでなく、リアシートの乗り心地も向上させているところは高く評価したい。ターボ車にはアダプティブクルーズコントロールを設定するなど、運転支援システムも充実している。

 ただ、パーキングブレーキが足踏み式であることだけがマイナスポイント。しかし、車両本体価格136万5100円~182万3800円という価格設定も好印象。個人的には、現在100万円台で購入できるクルマのなかでは、最も優れているのではないかと思う。上述の通り、価格の制約が厳しい軽自動車にもかかわらず「構造用接着剤」を使用するなど、妥協のないクルマ作りを高く評価して第1位とした。

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堂々の第1位は、軽自動車のスズキ・ハスラー。ボディ全体の剛性を向上させ、優れた操縦安定性、乗り心地を実現している。
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こもり音や雨音を低減する防音材や遮音材を、軽自動車で初めて採用。静粛性の高い室内空間を実現した。
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新開発の自然吸気エンジンでも、ボディがしっかりとしているので、アクセルをたくさん踏まなくてもスムーズに発進できる。

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 軽自動車からロールスロイス・カリナンまで試乗した1年だったが、「価格が高くてよい」のは当たり前であり、やはり多くの人が手に入れられるクルマのなかからこそ、よいクルマをピックアップしたいもの。現在、新車販売台数の約4割が軽自動車となっているなかで、2020年は軽自動車の質感が新たなフェーズに入った年だと感じ、上位2台を軽自動車とした。

(文=萩原文博/自動車ライター)

萩原文博/モータージャーナリスト

萩原文博/モータージャーナリスト

モータージャーナリスト。1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューを果たし、大学在学中に中古車雑誌編集部のアルバイトに加入し、中古車業界デビュー。1995年より編集部員として本格的に携わり、2006年からフリーで活動。中古車の流通、販売の造詣が深く、新車でも多くの広報車両に乗車するなど精力的に取材を行っている。

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