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日本政府、ITセキュリティ対策で愚策連発…デジタル庁発足や携帯料金引下げで壊滅危機

文=深田萌絵/ITジャーナリスト
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 今回の米大統領選の騒動を見ればわかるが、トランプ大統領を支持してきた議員は、アマゾングーグルだけでなく、AT&Tやディズニーなどの米大手企業から政治献金を停止すると発表され、政治生命を絶たれようとしている。

 こういった構造が、政治家と大手企業の癒着を生み出し、市場の不公正を是正する自浄作用を働かなくさせ、そして政治家が政治的発言を大企業に支配されるという皮肉な結果を招いているのだ。

日本政府はセキュリティ対策で愚策連発

 5G時代到来でサイバー攻撃の脅威が高まっているなか、日本政府は愚策を連発している。

 セキュリティ庁の前にデジタル庁発足を打ち出し、セキュリティを高める議論を行う以前に省庁のデータをデジタル化することで、ハッキングを容易にしている。

「スーパーシティ構想」を推進する一方で、企業が個人情報を特定できない形に修正すれば、本人許諾なしに商業利用できるという「オプトアウト型」は、ユーザー情報がだだ漏れになる最大の原因となっている。それを事前承諾型である「オプトイン型」に戻すべきだが、そういった議論を行っていない。

 また、データローカライゼーション法を制定せずにRCEP(地域的な包括的経済連携)協定に加盟したことで、中国は自国民の個人情報を中国政府独自の基準で保護できるのに、日本は日本国民の個人情報を保護できない仕組みが出来上がってしまった。

 さらに、通信事業者の競争が十分でないとして、携帯料金の引き下げや新規事業者参入を推進し、総務省にスマホ乗り換え相談所設置を言い始めたが、これも正気の沙汰とは思えない愚策である。

 第一に、5G通信への投資コストが回収される前に携帯料金引き下げをさせたことで、日本の通信事業者が弱体化することになる。

 第二に、5G通信で通信容量が増大するということは、それに伴いセキュリティ・コストも増大する。携帯料金引き下げでコストが掛けられないとすれば、まずカットされるのが収益を生み出さないセキュリティ・コストだ。

 第三に、政府がスマホ乗り換え相談所を設置することは、政府が市場の競争を阻害することを意味する。スマホ乗り換えは企業にとって収益が見込める分野であるため、そこは民間に任せるべきであり、民間負担となっているサイバー空間のセキュリティ負担を国が負うべきなのである。

 日本の政治が主導すべきことは、外資が支配しつつある市場に対して独占禁止法を根拠に制限し、中小企業の活性化を行うことであるが、現実は逆を行っている。これでは、IT業界は米IT大手企業の寡占が進み、日本企業がサービスを維持できないレベルまで弱体化するリスクがある。

 そうなれば、トランプ大統領やその支持者のようにコミュニケーション手段を遮断され、データ削除の憂き目に遭い、企業経営どころか政府運営まで支障をきたすことになる。

 今回の米大統領選で、多くの学びがあった。これを機に、日本政府は歪んだ市場を是正し、日本企業のサービスを支えることで、ユーザーが簡単にコミュニケーションを遮断されない未来をつくり出していかなければならない。
(文=深田萌絵/ITジャーナリスト)

日本政府、ITセキュリティ対策で愚策連発…デジタル庁発足や携帯料金引下げで壊滅危機の画像2深田萌絵(ふかだもえ)
ITビジネスアナリスト
早稲田大学政治経済学部卒 学生時代に株アイドルの傍らファンドでインターン、リサーチハウスでジュニア・アナリストとして調査の仕事に従事。外資系証券会社を経て、現在IT企業を経営。

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