人気テーマパーク経営者が語る「仕事にやりがいを持つためにまず考えるべきこと」の画像1
※画像:『だれもがキラボシ 笑顔あふれるテーマパークの秘密』(幻冬舎刊)著者・山本雅史氏

 企業にとって経営理念とは未来の方向性を示す羅針盤のようなもの。シンプルかつ明確な経営理念があり、それが従業員に浸透している会社は、おのずと組織としての足並みが揃い、大きな推進力をもって事業に取り組むことができる。


 この経営理念を何よりも大切にしている会社の一つが和歌山県の人気テーマパーク「アドベンチャーワールド」を運営する株式会社アワーズだ。今回は社長の山本雅史氏にインタビュー。著書『だれもがキラボシ 笑顔あふれるテーマパークの秘密』(幻冬舎刊)につづった、経営理念を土台にした経営について、そして理念を掲げてから組織に生まれた変化についてお話をうかがった。
(新刊JP)

 

■人気テーマパーク経営者が語る「仕事にやりがいを持つためにまず考えるべきこと」


――従業員の方々が生き生きと働いているのが伝わってくるような本でした。この状態は一朝一夕にできたものではないと思いますが、ここまでの道のりで苦労した点やうまくいかなかった点について教えていただきたいです。


山本:私が社長になってからのことしか言えないのですが、苦労があったというよりは、我慢が必要でした。先ほどの理念にしても、すぐに浸透するものではないので、ある程度長い目で見る必要があります。


 私たちの理念を最初から大事にしてくれる従業員もいれば、「理念もいいけど、目の前の現実の方が大事」という従業員もいます。ですが、根気強くやっていれば、理念に共感して、大事にしてくれる方は少しずつ増えていくものなので、とにかく焦らないことが大事だと思っています。自然な気持ちで大事にしてくれる方が増えるのが一番こちらとしてはうれしいことなので。


――経営理念を浸透させるといっても、朝礼で社訓を唱和させるようなことは、あまり意味がないのでしょうか。


山本:上から無理強いするのは続かないと思います。ただ、唱和することでだんだん自分の言葉になったり、言葉に出しているうちに気恥ずかしさがなくなっていくこともありますからね。唱和自体は理念を浸透させる一つの手法にすぎず、それ自体はいいものでも悪いものでもありません。個人的には無駄なことではないと考えています。


――誰もが笑顔でやりがいを持って働ける職場を作るために、経営側でなく従業員からどのようなことができるのか、アドバイスをいただきたいです。


山本:誰もがやりがいを持って楽しく働きたいと思っているのであれば、それは素晴らしいことです。けれど、実際そんなことを本当に考えているのというと、案外そういう人って少ないような気がするんです。


 どういうことかというと、特に日本では「仕事は苦しいものだ」という考えが昔からありますよね。


――確かにありますね。「生活のためだから、我慢して苦しい仕事に耐えないといけない」というような。


山本:そうです。お金を稼ぐんだから苦しいことも我慢しないといけないと、どこかで多くの人が思っているふしがある。だから、口ではいきいきとやりがいをもって働きたいと言っていても、そのための行動は何もしていないということになりがちなんです。


 そして、本当にいきいきとやりがいをもって働きたいと思っているのなら、まずは自分が働く理由について何度も考えて、自分なりの答えを見つけないといけません。そこがないと、自分がどんなことにやりがいを感じるかわからないまま、やりがいを求めることになってしまいますし、日本人は我慢強いので、嫌なことを我慢しながら働くことになりやすい。


――なるほど。


山本:ただ、その答えはなかなか見つけられないものかもしれません。採用の時に、私は学生の方々にその部分を聞くんです。すると7割くらいは「お金のため」と答えます。


 もちろん、これはまちがってはいないのですが、もう少し突っ込んで「生きる糧を稼ぐためだけに働きたいのか」を聞くと、それも違うという方がほとんどです。たぶん「お金のために働きたい」というよりも「お金のために働かなければいけない」という固定観念があるだけなんですね。漠然とはしていても「人生を価値あるものにしたい」とか「誰かを幸せにしたい」とか、自分なりの働く目的がそれぞれあるはずで、そこを自覚してはじめて、「じゃあいきいきと働くにはどうすればいいか」という話になるんだと思います。


――新型コロナウイルスでテーマパークは大きな打撃を受けたかと思います。アドベンチャーワールドの現状と、今後のために今取り組んでいることについてお話をうかがいたいです。


山本:実は昨年は絶好調だったんです。過去最高売上最高益のいった感じですごくよかったのですが、コロナで春休みは休園、ゴールデンウイークも売上がゼロになって、夏休みに入ってようやく少しだけ復活したのですが、それでも前年の半分以下です。学校の夏休みが短かったこともあって、ファミリー層のお客様が少なかった。


 9月からGoToキャンペーンなど追い風もあって、今(取材日は11月末)は対前年比で100%を超えているのですが、正直まだまだわからないですよね。今は何より感染者を出さないように対策を徹底しながら、何とか耐えているという状態です。


 ただ、悪いことばかりでもなくて、今回のコロナ禍があったことで、会社としてやるべきことの優先順位がはっきりしましたし、お金や労力の無駄に目が行くようにもなりました。売上以外のところでは、プラスになったことも多いです。それこそ、先ほどのお話ではないですが「経営理念」に立ち返る時間がありましたし、その理念に基づいたうえで、今の私たちのリソースを使って、別のことで価値を生み出せないかということにも考えが及びました。


――別のこととはどのようなものですか?


山本:一例ですが、これまで私たちの事業は、「リアルな動物たち」に会いに来ていただくということが前提としてあったのですが、「そうじゃなくてもいいんじゃないか」という議論があって、オンラインの動物ツアーを企画しましたし、6月には24時間YouTube放送というのをやりました。1時間くらいコンテンツをつなげてぶっ通しで、ほぼライブ配信です。かなり無茶をしましたが(笑)。


――インバウンド層がもともと少なかった点は幸いしたというお話をお聞きしました。


山本:そうですね。立地的にいっても、コロナ前の段階ではこちらまでお客様に来ていただくのは、値引きなどの手段で引っぱってこない限りは難しい状況だったんです。


 もちろん、アドベンチャーワールドがある和歌山の白浜全体でいえば、温泉地でもあるのでインバウンドのお客様も来られていました。ただ、日本人に置き換えて考えると、海外に行って現地のテーマパークに丸一日行くのはハードルが高いじゃないですか。


――そうですね。長くて半日という感じだと思います。


山本:せいぜい旅行パックに組み込んでもらって、1時間とか2時間遊ぶ、というところでしょう。ですが、私たちとしては、そのために入園料を値引きするということはしたくなかったんです。


 それならば日本の、特に関西圏のお客様にファンになっていただくことの方が、優先順位が上でした。それもあって、積極的にインバウンド層の誘客をしてこなかったという経緯があります。もちろん、いずれは海外のお客様にも認めていただくテーマパークにしていきたいという思いはあります。

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