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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」~【絶望の自衛隊・1】

湯浅・陸幕長、日米共同訓練に突如不参加…“パワハラ&内向き”志向、防衛省内で問題視

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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ハカイダーの後任は「瞬間湯沸かし器」

 戒田氏の後任の第一空挺団長に就任した堺一夫陸将補も少林寺拳法部出身で、「瞬間湯沸かし器」の異名を持つ。空挺団長に就任してからは戒田氏のパワハラ報道が影響しているのか、「噂よりも普通」(現役空挺団員)との評判だ。

 しかし、富士学校普通科部長だった18年5月、報告が遅れたとして当時の部下に図版を投げつけ、右手に全治一週間の怪我をさせた。その際、「俺に恥をかかせやがって、馬鹿か」「事前に資料をもらって自分で勉強していたんだぞ」などと罵倒した。この件について、防衛省から注意処分を受けるなど、かなりのパワハラ気質がある人物として知られている。

 ただ、注意処分は勤務歴には残るものの直近のボーナスに影響するくらいで、人事上は事実上お咎めなし。そのため、陸自きってのエリート部隊の空挺団長に出世できたというわけだ。当時の事情に詳しい防衛省幹部の証言。

「堺氏は部下に対して『俺は将官だからそれなりのことをやってくれ』と常に言っていました。自衛隊全体に言えることなのですが、課長以下がすべて業務をこなすのが当然になっていて、幹部になると仕事をとにかくやらなくなる。この処分された件で堺氏が激高したのは、『オレに何か仕事をさせてる時点で無能だ』という一般常識からすれば相当ズレた感覚が防衛省内部で広がっている証拠なのです」

 戒田氏のパワハラ報道の直後にこのような人物を空挺団長につけること自体、湯浅氏の人事に対する感覚がズレていると言わざるを得ない。

法律違反の幹部天下りを「悪くない」

 湯浅陸幕長が約15万人の隊員を抱える陸自トップを務めるには問題のある人物であることはここまで詳述してきたが、先輩やOBの覚えはめでたいという。これも昭和型の体育会系的な人間関係を引きずる陸自に根強い文化だが、湯浅氏の場合、それだけではない。

 昨年7月、将官級の高給幹部自衛官の再就職を違法にあっせんしたとして、防衛省が陸幕の募集・援護課の職員らを停職などの懲戒処分にした。元将官級や現役将官級の複数人の経歴を民間企業に提供していたといい、これが自衛隊法違反となった格好だ。自衛隊法では、将官級より下の佐官以下は56歳までと比較的若く定年を迎えるため、再就職のあっせんは認められているが、60歳が定年の将官級には禁じられている。

 この処分が発覚した際、湯浅氏が処分を受けた職員に「君たちは悪くない」とかばったとされる。とても法律順守が前提の公務員とは思えない発言だが、「出世競争では負け組の佐官の処遇は基本的に対応しないが、自分や自分の先輩が関係する高級幹部の特権についての配慮は欠かさない」(陸自幹部)ことが湯浅氏を陸幕長にまで押し上げたことは想像に難くない。

 そんな湯浅氏だが、今春の人事で引退に追い込まれる可能性があるという。現行の中期防衛力整備計画で輸送力強化のために陸自が輸送艦艇を取得することになっていたところ、「陸幕長の個人的な意向」で取得を拒否し、予算要求すらしなかったためだ。「事態を問題視した防衛省上層部からの責任追及が本格化する前に引退して幕引きを図る魂胆だ。遅くとも夏の人事までに結論が出るだろう」(同省幹部)。今後の湯浅氏の去就に注目が集まりそうだ。

 軍隊は国を象徴する。組織全体をよくする戦略を持たず、組織内の優劣に固執する内向きな湯浅氏の姿勢は、陸自、防衛省にとどまらず、多くの企業など日本社会に蔓延している。この連載では自衛隊が抱える問題を通し、日本の組織の課題に光を当てる。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

湯浅・陸幕長、日米共同訓練に突如不参加…“パワハラ&内向き”志向、防衛省内で問題視の画像2●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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