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パートやバイトのシフト激減「実質的失業者」女性の貧困急増…休業手当支給の存在知らず

文=編集部
パートやバイトのシフト激減「実質的失業者」女性の貧困急増…休業手当支給の存在知らずの画像1
GettyImagesより

 野村総合研究所未来創発センターは19日、『コロナ禍で急増する女性の「実質的失業」と 「支援からの孤立」-新型コロナの影響でシフトが減ったパート· アルバイト女性に関する調査』と題する調査結果を公表した。同報告書によると、新型コロナウイルス感染症の影響で、大幅にシフトが減少する「実質的失業者」のパート・アルバイト女性は推計90.0万人(2020年12月時点)。さらに「2020年12月時点で、 パート・アルバイト女性の4人に1人がコロナでシフトが減少した」と分析している。この推計値は政府統計上の「休業者」にも「失業者」にも含まれない困窮者がいることを明らかにしている。当サイトでは、急遽、調査の内容を踏まえパート・アルバイトのシフトが激減した女性2人に実情を聞いた。

野村総研「パート・アルバイトの実質的な失業者は90万人」

 同センターは(1)「パート・アルバイト女性の実態に関する調査」(2020年12月18~21日)と(2)「コロナ による休業・シフト減のパート·アルバイト女性の実態に関する調査 」(期間同上)の2つのインターネットアンケートを実施。(1)に関しては全国20~59歳の女性で、パート・アルバイト就業者を対象に5万5889人の回答を得た。(2)は(1)でシフトが減少している5150人が回答をしたという。調査結果サマリーから結果を以下抜粋引用する。

「シフト減したパート・アルバイト女性の4割がコロナ前と比べて5割以上シフト減に」(原文ママ、以下同)

「『シフト5割以上減』かつ『休業手当なし』の人を『実質的失業者』と定義。2020年12月時点で、パート·アルバイト女性で『実質的失業者』は90.0万人にのぼると推計される(『実質的失業者』は一般的に統計上の『休業者』にも『失業者』合まれない)」

「6割近くが『シフト減の場合も休業手当支給の対象』のことを全く知らない」

「6割が『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金·給付金』のことを全く知らない」

「シフト減パート·アルバイト女性の5割以上が『暮らし向きが苦しいと感じること』が増え、6割強が『経済状況を理由に気持ちが落ち込むこと』が増えている」

「8割近くで世帯収入が減少(うち4人に1人が世帯収入半減)」

「6割が、食費の支出を減らしたり、貯蓄を削って生計維持を図っている」

「コロナ前と比べて、『暮らし向きが苦しいと感じることが増えた (5割以上)』」

 「将来の家計への不安を感じることが増えた (7割強) 」

 これらは先月時点での結果であり、今月7日の緊急事態宣言の再発令でさらに事態は深刻化しているとみるのが正しいだろう。

「インナーが破れても新しいものを買えない」

 では数値からだけでは見えない実際の暮らしぶりはどうなのだろうか。東京都内のイベント運営会社で経理・管理部門のパートをしている女性(42)は次のように語った。

「コロナ禍前まではパート・週5勤務で月収10万円前後だったのが、昨年の緊急事態宣言以降は週2に減少。昨年後半は週3くらいまで戻ったのですが、今月7日の緊急事態宣言で、勤務日は月1~2日になってしまいました。先日、洗濯をしていてお気に入りだったインナーが破れていました。それを見ながら、『今の自分にはこれを買い替える余力もないんだな』と思ったら、情けなくて、悲しくて泣きました。夫も自分の大事にしていた洋服や時計をインターネットオークションに出して、なんとか生活費をねん出しています。毎日、泣きたくなります。

 会社も雇用調整助成金の申請をしてくれようとしていたのですが、体力的に難しいということで、こんな私を拾ってくれた恩もあるので無理を言えませんでした。最近、『コロナ』という文字や『雇用』という文字を見るだけで動悸がしてしまうので、ニュースや政府のサイトなどを見ないようにしていました。ハローワークに行く元気もありませんでした。そのため、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の存在は知りませんでした。これからそれにすがろうと思っています。

 人生最初の躓きはリーマンショックの渦中だった2009年、契約社員として勤めていた仙台ニコン(宮城県名取市)の関連会社での大規模リストラでした。すでに国内でのカメラ製造は下向きでしたが、そのころまで仙台ニコンは国内最後のカメラ本体・周辺機器の大規模工場でした。当時、仙台ニコンには契約社員や派遣社員1300人くらいいたと思います。そのうち数百人がリストラされたのですが、その中の1人が私です。

 当時は不況で、仕事探しも難しい状況だったこともあり、東京に出てきて、いくつかのアルバイトを経て、IT企業の職場で出会った男性と結婚しました。ところが夫の仕事は、IT企業とは名ばかりの訪問販売主体のインターネット回線契約営業でした。大手通信キャリアのロゴと『正規代理店』と書かれた名札を首から下げて、早朝から深夜まで、アパートやオートロックのないマンションを一軒一軒回るんです。上司からは『どんな手段を使っても、相手が契約しているプロバイダを解約させて、自社回線を売り込め』などと、とうてい達成できないノルマを課せられていました。相手先にドアを開けてもらうために、嘘すれすれの話をしなくてはいけないことを、夫はずっと気に病んでいたのですが、ついに2019年1月にうつ病になりました。

 夫はすぐに解雇されました。貯金を切りくずしながら、なんとか家計を支えなければいけないと思っていた私を拾ってくれたのが今の会社です。本当に厳しい生活ですが、今はせめて勤め先の会社がつぶれないことだけを祈っています」

困窮する大学院生「バイト面接に東京に行く交通費払えない」

 国立筑波大学(つくば市)は22日、在校生対象に無償の食料配布を行った。近隣の企業や農家から提供された食料約20トンに対し、数千人の大学生が長蛇の列をつくり、即日なくなったのだという。列に並んだ同大理工群の大学院生の女性(24)は次のように語った。

「東京の実家の父が、コロナ禍で職場の人員不足をカバーしようと無理して働いて体調を崩してしまい早期退職することになってしまいました。年金支給まで時間がかかるでしょうし、そんな実家にお金を無心するわけにもいかず……。

 私は全国チェーンの居酒屋で週4日のシフトでバイトしていたので、もろにシフト減の影響を受けました。バイトリーダーだったので、クビにはなりませんでしたが、今は月1日あればいいくらいです。店長がワンオペなんてことも普通なんじゃないでしょうか。ほかのバイトも探しましたが、つくば市内にはまったくありません。もともと、計画して作られた新しい街なので、どうしても全国チェーンの店が多くて、どこもかしこも同じ状態になってしまっているんです。

 家庭教師とか実入りのいい仕事は、長年家庭教師をやってきて有名校に進学させた実績があるような人材以外はお払い箱です。東京まで違うバイトの面接に行こうにも、片道1200円のバス運賃が払えません。交通費を支給しくれる会社もありますが、それをもらうために面接会場に行くことができないのです。モヤシ炒め生活がいつまで続くのか。これをしのいで、ちゃんと大学院を卒業できても、本当に就職先があるのかどうか。将来の不安でいっぱいです」

 コロナ禍で、政府統計ではあまり取り上げられない“ギリギリの人”が増えている。“ウィズコロナのライフスタイル”といった語感の良いスローガンや心持論に終始せず、わかりやすく申請しやすい支援制度の広報や、困窮者に直に届く支援が求められているのかもしれない。

(文=菅谷仁/編集部)

菅谷仁/Business Journal編集部

菅谷仁/Business Journal編集部

 神奈川新聞記者、創出版月刊『創』編集部員、河北新報福島総局・本社報道部東日本大震災取材班記者を経て2019年から現職。

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