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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

テレワークの費用はどこまで経費として認められる?通信費や電気代は「日数分の半額」

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
テレワークの費用はどこまで経費として認められる?通信費や電気代は「日数分の半額」の画像1
「gettyimages」より

 2021年が明けて早々、東京、愛知、大阪を含む11都府県に緊急事態宣言が発出された。要請された中には「テレワークの推奨」がある。人と人の接触機会を減らすため、出勤者数の7割削減を目指し、テレワークやローテーション勤務、時差通勤などの取り組みを企業に求めているのだ。

 東京都の調査によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は57.1%。従業員規模別で比較すると、企業規模が大きくなるにつれて導入率も高くなるとのことだ。従業員数300人以上(230社)が76.5%、100-299人(107社)が63.6%、30-99人(85社)で47.0%という具合である。

 むろん、業種や職種によってテレワーク移行が難しい場合もあるだろうが、オフィスに集合しないという働き方が緊急時のみの一過性ではなく、定着していくであろうことは間違いない。周囲で話を聞いても、今後もテレワークのまま働きたいという声の方が多いように感じる。

 だが、そうなると気になるのはお金の方だ。出勤しない働き方にシフトしたため、通勤手当が廃止され、交通費が実費精算に変わったとも聞く。また、残業代がなくなり、その分がまるごと減収になってしまった家庭も少なくない。さらに、テレワーク環境を整えるために新しくPC機器やデスクを買った、Wi-Fi契約をしたなど、本来なら個人で負担しなくてもいいはずの出費も発生している。

 自宅作業となると通信費や水道光熱費も増加するし、あるいは自宅では勤務が難しいため、カフェやレンタルオフィスに通うようになった人もいるだろう。収支トータルで見れば、マイナスになっている可能性もある。

 それに対し、テレワーク手当等を出して補助している企業もあるが、それも「仕事に使う支出の範囲」が難しい。増加した通信費や水道光熱費はどこまで「仕事用」として認めるのか。働く側としては持ち出しにならないように算出してもらいたいのはやまやまだが、手当を引き上げればバラ色というわけでもない。

 たとえば、通勤手当は報酬に含まれるが、それに税金はかからない。しかし、テレワーク補助としての手当については税制上の取り決めがはっきりしていなかった。もし、これが課税対象とされれば、受け取る側の税金が増える可能性もあったのだ。

やっと出された国税庁のQ&Aによると…

 国を挙げてテレワークを推奨しているのに税金の扱いがはっきり決まってないのもまずかろうと、国税庁が在宅勤務の費用負担について、一部を非課税にすると発表した。働く人にとっても大事なポイントとなるので、中身を見ていこう(テレワークにかかったお金を実費で精算するか、あるいは手当の形で一律で支払うかは、それぞれの企業が決めることになるので、あくまで税制上の扱いについての話ではある)。

 まず、テレワークにかかった費用を在宅勤務手当としてではなく、実費精算する方法で支給した場合は、非課税でよろしい。これは、購入時に領収書をもらって後日精算するようなパターンだ。テレワークに使ったレンタルオフィス代を自分で払った場合も、これにあたる(利用を認めてじゃんじゃん払ってくれる会社に限るが)。

 しかし、問題は電気代や通信費だろう。自宅で働くとなると、かかった料金を生活用と仕事用に明確に分けるのは難しい。そこで、国税庁は目安として一定の計算式を提示している。

 インターネット接続料については、ひと月の基本料金や使用料(A)のうち、その月の在宅日数(B)で使った分を計算する。たとえば、(A)が1万円で、テレワークをしたのが月の日数30日のうちの15日だったとする。

1万円×(15日※在宅勤務日数/30日※月の日数)=5000円

 この5000円のうち、労働時間を8時間と想定し、かつ睡眠時間を引いて計算した場合、その半額である2500円を仕事用とみなそうというのだ。この計算をもとに企業が月のネット接続料の半額を社員に支給した場合は、実費精算と同様に税金はかからない。

 電気料金についても同様で、細かく書くとややこしいので省くが、家全体の床面積に対するテレワークに使う床面積の割合を出し、さらに、同様にひと月におけるテレワーク日数の割合を出し、それをひと月の基本料金や電気代にかけ合わせるという計算式を提示している。そして、やはり、その半額を仕事用とみなすという。

 ざっくり言えば、家で使っている電気代や通信費のテレワーク日数分を算出し、その半額を経費に認めるということだ。ただし、こうした計算なしに一律の手当として従業員に払う場合は給料の一部とみなし、課税対象とするというのが国税庁の見解だ。筆者が聞いている限り、現状では一律支給の企業が多く、その場合は給料扱いになり課税されてしまう。

 働く側が手当をこうしろああしろとは現実的には言いにくいが、オフィスよりはるかに仕事がしにくい環境で働き、お金の負担も増え、さらに手当をもらっても課税されるのでは、もやもやする。とはいえ、毎月実費で計算し提出するのも手間だし、どっちもどっちで悩ましいところだ。

今後の給与明細は必ずチェックを

 昨年の新型コロナ以降、働き方が大きく変わった人は多い。時間的・心理的にはテレワークのメリットを感じている人でも、お金の面は確認した方がいい。

 ちょうど、昨年の緊急事態宣言が出て多くの企業がテレワークを導入したのは4月以降だった。4月から6月までの給与が「標準報酬月額」のもととなっており、もしこの月額が大きく変動すれば、健康保険料や厚生年金保険料等の社会保険料も変更される。4~6月に残業代が大きく減り、通勤手当の代わりにテレワーク用の住宅手当が導入されたとすると、2020年10月からの社会保険料の額が変わっている可能性がある。10月以前よりも増えたか減ったか、給与明細を見比べてみよう。

 また、今年から源泉徴収される税額にも変化があるかもしれない。1月の給与明細はあらゆる項目に目を通し、手取り額に変化がないかをチェックしたい。家計防衛は、まず収入の変化を把握することがスタートだからだ。

 なお、テレワークにかかった費用が経費として認められるのは、使った電気代や通信費の半額ということだが、もし共働き夫婦が揃ってテレワークした場合はどうなるのだろう。勤務先が両方とも実費精算方式の場合、夫が半額、妻が半額を計上すればテレワーク日数分の満額がもらえるのか――などと、ついつい余計なことを考えてしまった。しかし、ヤブヘビになりそうなので、関係各所にこのケースを問い合わせるのは今はやめておく。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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