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白井美由里「消費者行動のインサイト」

なぜサステナブル商品は売れないのか?「好きだけど買わない」に潜む消費者の購買行動

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

サステナブル商品の選択で生じる1つ目のコンフリクトとは

 その一つは、サステナブル商品を選択する際、商品の属性間でトレードオフが生じやすいということです。サステナビリティという点で商品評価が高くても、他の属性が低く評価されてしまうのです。これを実証したのはルクスらの研究です【註5】。ルクスらは、概念間の潜在的関連性を調べる潜在連合テスト(IAT)を行い、「エシカリティ」は潜在的に「安全」「マイルド」「健康」「子供に良い」「ソフト」といったイメージを持つ製品との関連性が高く、「パワフル」「タフ」「きっちり仕事をする」「効果が高い」といったイメージを持つ製品との関連性が低いことを明らかにしました。

 また、優しさと関連する属性(安全、マイルド)が重視されるベビーシャンプーと強さと関連する属性(パワフル、タフ)が重視されるカーシャンプーを比較し、サステナブル商品はカーシャンプーよりもベビーシャンプーの選択で好まれることを示しました。同様に、強さが重視される洗濯用洗剤でも、サステナブル商品よりも一般的な商品のほうが好まれることを確認しています。つまり、機能や効能が重要となる製品カテゴリーでは、それらが相対的に劣ると感じるサステナブル商品の選択にコンフリクトが生じやすいのです。

 リンとチャングはさらに、使用量への影響を分析しています【註6】。マウスウォッシュとガラスクリーナーを用いた実験から、サステナブル商品は一般的商品よりも効果が弱いと感じられているため、一回の使用量が多くなること明らかにしました。この結果は、特に価格意識の高い被験者に顕著に見られています。ただし、追加的に商品の有効性を示す情報を提示した場合には、使用量が減少することも示しています。せっかくサステナブル商品を購入しても使用量が必要以上に増えてしまうのであれば、環境的にも経済的にも望ましいとはいえません。サステナブル商品の販売ではこの点を考慮する必要があります。

サステナブル商品の選択で生じる2つ目のコンフリクトとは

 サステナブル商品の選択で生じるもう1つのコンフリクトは、「こうしたい」という考えと「こうするべき」という考えが消費者の中で対立することよって生じます。この2つの考え方はバザーマンらが提唱しました【註7】。「こうしたい」は面倒なことは考えずにすぐに喜びを得ることへの欲求で、「願望自己(want self)」と呼ばれます。「こうするべき」は冷静に思考し合理的に判断することへの欲求で、「規範自己(should self)」と呼ばれます。

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