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渡瀬基樹の「空港から最寄り駅まで歩いてみた」第14回

豊岡駅から但馬飛行場まで歩いたら峠道の苦行…わずか1日2便、羽田便なしのうら寂しさよ

文=渡瀬基樹
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コミューター空港でありながら、JAL便(JAC)が就航している但馬飛行場。48席のプロペラ機であるATR42-600型が発着する(写真はすべて筆者撮影)。

 日本の空港には拠点空港、地方管理空港、共用空港、その他の空港という分類がある。拠点空港は日本の主要な空港で、うち会社管理空港が4カ所、国管理空港が19カ所、特定地方管理空港が5カ所の、計28カ所が存在する。地方管理空港はそれに準ずる空港で54カ所、共用空港は自衛隊や米軍と共用の空港で8カ所が存在する。

 以上に該当しない空港が、「その他の空港」だ。全国で7カ所存在するのだが、「その他」というだけあって、微妙な立ち位置の空港が多い。まず大阪府の八尾空港と、岡山県の岡南飛行場(旧岡山空港)、大分県の大分県央飛行場は定期路線が存在しない。主に写真測量や操縦訓練などの事業用や、自家用の小型飛行機の発着に利用されている。

 東京都の調布飛行場と、熊本県の天草飛行場は定期路線が存在するが、近距離を小型機で結ぶコミューター路線のみ。一方で愛知県の名古屋飛行場(県営名古屋空港)は、当連載でも紹介したように、中部国際空港(セントレア)開港前は国内有数の大空港だったこともあり、現在でもフジドリームエアラインズが8路線を就航している。

 残る但馬飛行場(コウノトリ但馬空港/兵庫県豊岡市)は、もともとコミューター専用空港として1994年に開港した。しかし建設当初に就航が内定していた地域航空会社が、経営難で開港前に撤退。結果、日本航空グループの日本エアコミューター(JAC)が就航したことで、JAL便が発着する唯一の「その他の空港」となった。

 というわけで今回は、JR山陰本線・京都丹後鉄道の豊岡駅から、この但馬飛行場まで歩いてみた。当連載では通常「空港から最寄り駅まで歩く」のだが、今回はスケジュールとダイヤの都合上、「最寄り駅から空港へ」歩いてみた。実施したのは2020年10月である。

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兵庫県豊岡市に所在する但馬飛行場の位置(Googleマップを利用。権利関係はGoogleに帰属します)
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兵庫県北部の中心都市である豊岡市は人口約7万7000人。鞄産業や、コウノトリが飛来することで知られる。

但馬飛行場はサイズ的にジェット機が就航できない、となれば羽田便は絶望的?

 但馬飛行場が建設される前の兵庫県北部(但馬地域)は、新幹線や高速道路がない、交通空白地といえる状況だった。現在は北近畿豊岡自動車道や舞鶴若狭自動車道などが開通し、高速バスの存在感が強いエリアとなっているが、2000年以前は、山陰本線や福知山線の特急列車しか頼れるものはなかった。

 とはいえ、本格的な空港をつくるほどの需要がある地域とはいえず、JACが就航を受け入れたのも、兵庫県が使用機材であるプロペラ機を購入し、無償貸与するという条件があったから。そのため1994年5月に開港した後、しばらくはJACによる大阪・伊丹便1往復のみの運航だった。

 同年7月に、神戸ヘリポートと湯村温泉ヘリポートを結ぶヘリコミューター便(北海道テレビ『水曜どうでしょう』に登場することで知られる)が運行開始し、翌1995年にはJACの伊丹便が1日2往復となった。しかしヘリ便は2002年に運休。ただし2019年の利用客数は4万2105人と、開港当初の1.5倍まで増加している。

 地方空港にとって、最大のドル箱は東京・羽田便だ。但馬飛行場が活性化する起死回生の策は、どうにかして羽田便を就航するという点に尽きるのだが、現状ではきわめて難しい。ソフト面ではなく、ハード面に問題があるためだ。

 但馬飛行場はコミューター路線としてつくられたため、滑走路が1200mしかない。つまりジェット機が就航するためには短すぎるのだ。1500mへの延長計画もあるようだが、それでも対応できる機材は限られるうえ、山の上に大量の盛り土をすることになるため、莫大な事業費がかかってしまう。となれば、やはりこれ以上の活性化は難しいかもしれない。

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豊岡市街は比較的平坦で歩きやすい。ただ歴史的な建物や、豊岡鞄の販売店が並ぶ「カバンストリート」は、空港とは反対側の場所に位置する。

峠道に次ぐ峠道、豊岡駅から但馬飛行場への道のりは苦行である

 さて、今回出発点を駅にした最大の理由は、但馬飛行場には1日2往復しか就航していないためだ。発着の時間帯は午前中と夜なのだが、山の上に切り開かれた場所へのアクセス路を、夜間に徒歩移動するのは危険きわまりない。必然的に、午前中の一発勝負となってしまった。スケジュールの都合もあり、かなり慌ただしいリポートとなってしまったことをご容赦いただきたい。

 JR山陰本線・京都丹後鉄道の豊岡駅東口を出ると、正面に百貨店風のビルと商店街が並んでおり、これをまっすぐ進むと市街地へと向かうことができる。だが、空港へは右手へ向かって線路沿いを進んでいく。跨線橋を渡ると、地方都市らしい住宅街が広がっていた。

 駅から1.5kmほど歩いたあたりで、徐々に山村の景色へと変化していく。だが、快適に歩けたのはここまでだった。

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市街地を抜けると、旧街道沿いのような趣深い和風建築が並ぶ。

 道中が山道であることはある程度覚悟していたのだが、想像以上の難易度だった。上り坂の傾斜は急で、道は細く、沿道に商店や民家はもちろん、建物も存在しない。車すらほとんど通らないため、どんなに辛くてもギブアップすらできない苦行の道が1kmほど続く。

 やっとの思いで峠を越え、急傾斜の下り坂を下りきると、田園風景と空港アクセス道路が現れた。しかし周囲が開けると、それはそれで辛くなってくる。遙か先まで道は続いているが、まだ空港の姿は影も形も見えないのだ。

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突然、山道へと変貌。写真ではわかりにくいが、かなり傾斜がキツく、歩いているだけで息が切れる。
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アクセス道路は見通しがいいため、車も猛スピードで走っていく。

 それでもひたすら歩いて行くのだが、なだらかな上り坂を1.5kmほど進んでいくと、再び峠道になっていく。今度は車が横を頻繁に通り過ぎるのだが、スピードを出してかっ飛ばして行くため、怖いしストレスがたまる。上り傾斜がどんどんとキツくなっていくのもしんどい。ついにはヘアピンカーブが連続する、本格的な峠道となってしまった。

 このアクセス道路に歩道がまったくないのは、おそらく徒歩で空港へ行く人がいることなど想定していないからだろう。2kmを30分ほどで歩くつもりだったのだが、空港で撮影する予定の飛行機が、途中で真上を通過していってしまった。

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空港に近づくと、ふたたび周囲には山と森ばかりで建物がない峠道になっていく。
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ヘアピンカーブが数回連続する。歩道がないので、車が来ると怖い。
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無情にも、頭上を通り過ぎていく到着機。ああ、置いていかないでくれ……。

午前便と午後便の間は8時間、タクシーが1台も停まっていない但馬飛行場

 結局、50分ほどかかって但馬飛行場に到着。空港周辺には公園や展望台があったが、見て回る余裕はなくなってしまった。ターミナルビルの前には50台ほど収容できる駐車場が、道路を挟んで300~400台ほどは収容できそうな大型駐車場があったが、大型駐車場は使われている気配をまったく感じなかった。

 幸いだったのが、午前中の便が到着してから出発するまで、30分の間隔があったこと。もう少し遅れていたら、飛行機の写真すら撮れないところだった。

 ターミナルビルはかなり小さめで、1階に小さな喫茶店と売店がある程度。とにかくヘビーなルートだったので、疲れ果てて休みたかったのだが、出発便のチェックイン締め切り後は営業を休止してしまい、休憩することすら難しかった。次の便の到着は8時間後だから、致し方ないのだが。

 遅れて到着したため、空港から豊岡駅へ向かうバスも行ってしまったあとだった。それどころか、タクシーすら停まっていない。次の便は8時間後だから、タクシーもここで待っている意味がないのだ。それにしても、タクシーが1台も停まっていない空港へ来たのは初めてだ。

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ターミナルビルは地方空港のなかでも、コンパクトなつくり。
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カウンターはJALのみ。ラウンジなどは存在しない。
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豊岡鞄などの展示販売コーナーもあるのだが、離着陸の前後しか営業してないようだ。

 とにかく今回失敗だったのは、山の上にある空港へ“上っていく”ルートを選んでしまったことだろう。いつものように、空港から駅へと向かっていれば、ほとんどが下り坂。ここまで疲労困憊することもなかったと思う。

 ただ、「空港から駅へ」でも徒歩で行くことはオススメしない。周囲が山と田畑だけで見どころは何もないため、6.5kmという距離以上に長く感じる。足などを痛めた場合にリタイアするための交通手段もないし、もちろん夜間に歩道がない峠道を長時間歩くのはもってのほかだ。

 出発・到着便の前後には、路線バスが豊岡駅(320円)と城崎温泉駅(500円)へとアクセスしている。価格も比較的リーズナブルなので、素直にバスを利用するのがよいだろう。

(文=渡瀬基樹)

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JR山陰本線・京都丹後鉄道の豊岡駅から但馬飛行場までの今回の行程。(Googleマップを利用。権利関係はGoogleに帰属します)

渡瀬基樹/フリーライター

渡瀬基樹/フリーライター

1976年、静岡県生まれ。ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。自動車、野球、マンガ評論、神社仏閣、温泉、高速道路のSA・PAなど雑多なジャンルを扱います。

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