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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

自制が効かない自民・公明ベテラン議員の精神構造…相次ぐ夜の飲み会発覚に若手議員が激怒

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
自制が効かない自民・公明ベテラン議員の精神構造…相次ぐ夜の飲み会発覚に若手議員が激怒の画像1
遠山清彦衆議院議員のツイッターより

「同じ国会議員みたいにくくられて、与野党問わず、若手の『いっしょにするな』って不満はすごいですよ」――。ある若手の国会議員はこう怒りをぶちまける。

 怒りの原因は昨今話題になっている、与党ベテラン議員による夜の会⾷だ。⾃⺠党国対委員⻑代理の松本純衆議が1⽉18⽇に、公明党のホープと呼ばれた「遠⼭の⾦さん」こと遠⼭清彦衆議が1⽉22⽇に、新型コロナウイルス感染防⽌の緊急事態宣⾔下で⾃粛要請が出ている中にもかかわらず、深夜まで会⾷をしていたことがわかり、両⽒は謝罪に追い込まれた。その後、松本氏は2月1日に会食していた銀座の高級クラブで同席した田野瀬太道文部科学副大臣、大塚高司国対副委員長とともに自民党を離党し、遠山氏は同日、議員辞職した。

 松本氏は当初、会食の目的について陳情を受けていたことで非難されたが、同両議員と会食していたということで虚偽の説明をしていたことが発覚し、一層悪質さが際だった。

 一方、遠⼭⽒は2019年に福岡市のキャバクラなどに「飲⾷代」として計約11万円を⽀出していたことも政治資⾦収⽀報告書で判明し、「カネや⼥の問題については、⾃⺠党議員のスキャンダルが恒例⾏事だが、議員を候補者段階から徹底的に⾝体検査することで有名な公明党のホープがこの⼿の話で叩かれるのは珍しい」(全国紙政治部記者)と驚きの声も出る始末だ。

 国会議員は国民の代表であり、政府・与党として自粛を呼び掛けている以上、模範となるようにふるまわなければならないのは当然だ。先の若手議員の話。

「自粛は、政府が緊急事態宣言を発令してまで感染防止策としてお願いしているもの。議員活動においても、会議や懇親などは極力デジタルコミュニケーションに切り替え、ZoomやSkypeなどのオンラインツール使用している。当然、街頭演説、集会の開催などはできる限り控えて、『三密』の回避、ソーシャルディスタンスの確保、検温など感染防止対策の徹底を行っている。

 私自身は家族の感染リスクも考えて、緊急事態宣言以降は、飲酒の有無にかかわらず夜のリアルでの会食は一度も行っておりません。多くの国会議員が必死に働いている中で、一部の方の不適切な行動によって、自分たちも一緒のような扱いをされることは、とても悲しいことですし、憤りを覚えます」

 今や、松本、遠山両氏の会食を暴いた週刊誌メディアを中心に、自粛期間中の著名人、公人の「飲み会狩り」が強まっていることは周知の事実であり、国会議員であれば危機管理上、気を付けなければならず、たるんでいるといわれても仕方ない。

昭和の価値観が残るオッサンは自制が効かない

 自粛期間中の会食問題については、菅義偉首相と自民党の二階俊博幹事長が8人で年末に忘年会として高級ステーキ店で会食したことや、石破茂元幹事長の福岡での会食など、自民党議員の間で目立ってきた。今でこそ、二階氏は会食自粛の幹事長通達を出したものの、それも今年に入ってからで、国民に自粛を強いる政権与党としては責任感と危機意識が欠如している。

 遠山は51歳と比較的若いが、菅氏、二階氏、石破氏、松本氏は60代以上と、「夜の飲み会や会食で初めて胸襟を開く」という昭和の価値観で行動している面が強い。40代以下の議員が飲み会狩りにあっていないのを見ると、「まだ政治家がエラいという世間の雰囲気の中でキャリアをつくってきたため、若手のように『政治家は些細なことでもメディアから狙われている』という意識が希薄」(前出記者)ということもあるのだろう。

夜の会合問題と、デジタル化が進まない問題の共通点

 自らが言い出しっぺの夜の飲み会の自粛ですら対応できないジイサン、オッサン議員が仕切る政界では、昨年以来、散々デジタル化の必要が叫ばれているにもかかわらず、官僚に対面での法案説明などを強いるなど3蜜業務の見直しは遅々として進まなかった。1月21日に官僚による対面での質問取りの自粛が与野党で合意されたが、これでも遅すぎるくらいだ。

 コロナの感染拡大が始まった昨年は、官僚が集団で議員会館を資料片手に説明に回る従来通りの光景が見られた。自民党のベテラン議員から「キミ、マスクして話すなんて失礼だろう」「マスクなんてしんどいから外すわ」と、本来60代以上の高齢者が多い国会議員の身を守るための配慮にもかかわらず、トンチンカンな叱責や発言を受けた官僚もいた。こうした現状について、先の若手議員は政界でのデジタル化推進の観点から以下のように分析する。

「政治や行政は、ビジネスのようにいくら利益が上がったというように定量的に成果が測りにくいため、過去の成功体験に基づいた業務の仕方が踏襲される傾向にあります。今までの政策決定はエビデンスに基づいて客観的に最適解を分析して行ったというよりも、権限のある重鎮が経験値の中で『こうだ』と決めた方向性に物事が進んでしまうということは少なくありませんでした。逆に言えば、その重鎮たちがピンとこないようなデジタル化などの問題については後回しにされ、手つかずの状態が続いてきたというわけです。

 コロナ禍において、私たち若い世代の議員は、デジタルコミュニケーションを中⼼に活動を展開しています。しかしながら今回の会食問題のように『対面で人と会う』ことに重きを置いている昭和的な価値観を根強く持つ世代が、緊急事態宣言下で本来、求められている考え方に対応できていないことが問題の根源にあると考えます。

 結果として与野党ともに若手議員からは、コロナ禍におけるニューノーマルを想定した、デジタル化の進展を踏まえた業務の改善が昨年から提案され続けているにもかかわらず、旧来型の3密業務からの変革のスピードはまだまだ遅れている現状があります。コロナ禍以前の平時であれば、秩序を守るためにある程度、期数による年功序列の組織運営もマネジメントの知恵として理解します。ただ、現在のような有事には、期数年齢よりもデジタルなどの専門分野に知識と経験のある者に権限を与えるような人員配置をしたほうが日本にとって生産的で、本来あるべき理想の社会につながると思います」

 台湾では専門家のオードリー・タン氏がデジタル担当相に抜擢され、コロナの感染拡大防止で世界に名をはせた。同時期の日本ではIT担当相として、デジタル化に最もふさわしくないと考えられるはんこ議連会長の竹本直一氏が就任するなど、政府・与党のあまりのセンスのなさが物議を醸した。このような感覚のズレが、今回の夜の会食やデジタル化の問題の根本的な原因であるのは間違いない。

 筆者は「昭和の価値観に染まった人を叱るのは酷」というような一部での擁護論にはまったく与しない。民間人なら「飲食店を支援するため」となじみの飲食店に深夜に行くことも自己責任の範囲だと考えることもできるが、国会議員は国民の代表である。言い訳する余地はまったくない。国会議員が自粛要請時間を超えて会食した場合の罰金刑も提案されているが、本来は刑罰に頼らなくても常識で判断すべき問題だ。

 何より、永田町は一寸先は闇である。選挙がこれまで強かったからといって、自らの落選について危機意識すらない国会議員に、現在のような有事に対応できるかという問題以前に、そもそも資質がないのは明らかだ。

 自民党の今回の会食問題での対応は、松本氏ら3人の離党届は受理したものの、党としての公式処分は松本氏を党職から外したのみ。松本氏らは議員辞職するかについては明言しておらず、自民党も会社で言うクビに当たる除名ではなく退職にあたる離党という形を取らせたのは「ほとぼりが冷めた後で復党させる余地を残したかったから」(永田町関係者)だ。党ではなく、あくまで議員個人に責任を取らせる形で幕引きを図ろうとする姿勢に、自民党の身内に甘い体質がよく表れている。

 公明党は遠⼭を辞職させるという責任の取り⽅をした。⽴憲⺠主党も昨年4⽉の緊急事態宣⾔の発令後に東京・歌舞伎町のセクシーキャバクラに⾏った⾼井崇志衆議を除籍している。自民党の今回の大甘の対応は、コロナ禍でのストレスが国⺠の間で溜まる中、秋までに⾏われる次回の衆院選での傷を広げそうだ。

 鶏卵大手元代表からの贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農相といい、19年の参院選での大型買収事件の河井克行、案里夫婦といい、最近の自民党はただでさえカネ絡みの問題で国民の印象を著しく悪くしている。そこにきて、今回の会食問題だ。次の衆院選で安泰と思われていた単独過半数を割り込む可能性も出てきた。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

 記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。
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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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