CPU(中央演算装置)やNAND型フラッシュメモリは、比較的小さな電力で効率的に計算やデータを記録・保存する。そのため、回路線幅の微細化と高集積化が進んだ。それに対して、パワー半導体はより多くの電力を管理し、高温への耐性が求められる。つまり、メモリなどの情報通信関連の半導体とパワー半導体の使用目的は異なり、前者はITデバイスなどの“頭脳”に、パワー半導体は“筋肉”に例えられることがある。

 また、パワー半導体の分野では、その部材(材料)としてシリコンに加えて、炭化ケイ素や窒化ガリウムが注目されている。その理由は、電力損失の抑制や、高温への耐性、小型化を目指すためだ。炭化ケイ素や窒化ガリウムを用いたパワー半導体は「次世代パワー半導体」と呼ばれることもある。なお、次世代パワー半導体の生産コストは相対的に高い。

パワー半導体分野における日本企業の存在感

 現在、日本のパワー半導体業界は、世界市場のなかで相応の存在感を示している。日本の企業は、同分野で3割近い世界シェアを維持している。国内最大手は三菱電機であり、それに東芝、富士電機、ルネサスエレクトロニクスが続く。また、ロームも次世代のパワー半導体分野でシェア拡大を目指している。

 それに加えて、トヨタ自動車は、デンソーと豊田中央研究所との共同によってパワー半導体の研究開発と、実用化に取り組んでいる。日立製作所はグループ企業と共同でパワー半導体への取り組みを進め、高電圧に対応したパワー半導体を用いたEV(電気自動車)向けのインバータを開発した。存在感という点で考えると、一般的に指摘されているよりも、世界のパワー半導体市場における日本企業のプレゼンスは大きい可能性がある。その状況は、メモリなどの情報通信関連の半導体とは対照的だ。現状、メモリ分野ではキオクシア(旧東芝メモリ)が、CMOSイメージセンサ(画像処理の半導体)ではソニーが競争力を発揮しているが、日本全体で見るとメモリ分野などでの競争力は低下した。

 国内パワー半導体業界の競争力を支える要因は複数考えられる。その一つとして注目したいのが、“すり合わせ”の技術だ。日本経済にとって、自動車産業は経済の屋台骨だ。自動車各社はHVシステムの実用化や性能の向上などを目指して、サプライヤー各社に新しいパワー半導体の実現を求めた。それは、国内パワー半導体分野でのイノベーションを支え、世界市場でのシェア維持を支えた大きな要因だろう。

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