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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

大方の予想とは逆に、コロナ下で食料・資源・運賃などあらゆる価格が高騰している理由

文=加谷珪一/経済評論家
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従来型サプライチェーンが抱えるリスク

 ドイツも中国もマスクの輸出を再開したし、食料を備蓄した国も状況に応じて備蓄を放出していく。最終的には需要と供給のバランスは取れるはずだが、一時的であっても市場において需要と供給の不一致がもたらす影響は大きい。需要と供給のバランスが崩れるリスクが存在する状況では、企業は割高になっても数量を確保しようとするので、どうしても価格は上がってしまう。

 短期的な需給のバランスが改善しても中長期的には別の要因が加わってくる。それはサプライチェーンの混乱である。各国の企業は食料や資材、部品を調達するため全世界に巨大なサプライチェーンを構築している。近年は特にその傾が強く、1円でも安い商品を求めて地球の裏側からでも調達するのが当たり前となってきた。

 だが、こうした巨大な調達網は、その一部が滞っただけでも全体に大きな影響を与えてしまう。物資を輸送するルートや集約拠点で新型コロナウイルスのクラスターが発生すると、そこがボトルネックになり、最悪の場合、全体が止まってしまうのだ。

 天然ガスの異常な価格高騰の最大の原因は、プラントのトラブルとされるが、2020年に限って過去に例を見ない水準で天然ガスプラントにトラブルが発生した理由はよくわかっていない。各国で発生したトラブルの種類はさまざまだが、人員の配置や保守部品の調達、電力の確保などにおいて、コロナ危機が間接的に影響した可能性は否定できないだろう。

 コロナ危機は海運や空運にも大きな影響を与えている。

 経済活動の停滞や各国が実施している入国制限などの影響で、飛行機の乗客が激減していることは周知の事実である。船舶はモノの移動なので飛行機ほどの影響は受けていないが、各国の消費需要が減少しているので、やはり取り扱う貨物の量は減っている。

 では船舶の運賃は暴落しているのかというそうではなく、むしろコロナ危機以降、急上昇しているのが現実だ。フレイトス社が公表している全世界のコンテナ船運賃指数は大幅に上昇しており、2020年5月との比較で3倍近くに高騰した。

同じ傾向が長期的にも続く?

 今回のような経済危機が発生すると、需要が大幅に減少するので、価格が暴落するのではないかとイメージする人が多い。筆者はコロナ危機の発生直後から、出演するテレビ番組や寄稿するコラムなどにおいて、供給制限によって価格が上昇する可能性があると指摘していたが、ネットでは一部の人から「コイツは頭がおかしいのか」などと激しく批判(というよりも誹謗中傷)された。

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