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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

大方の予想とは逆に、コロナ下で食料・資源・運賃などあらゆる価格が高騰している理由

文=加谷珪一/経済評論家
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 いわゆる専門家と呼ばれる人の一部にも、需要減少から激しいデフレが発生するのが当然であり、インフレなどあり得ないという声高な主張が見られたが、これは経済メカニズムに対する認識不足から来る誤解といってよい。

 確かに経済危機の発生で需要が減少すれば、価格が下がるのは価格理論上、当たり前のことだが、それは供給が変わらなければの話である。現実には、企業など経済主体の一部は、極端に需要が減少した場合、収益を維持するため一時的に損失を抱えてでも供給を絞り、利益率を維持しようとする。

 コンテナ船の運賃はまさにその典型で、船会社は船舶の供給量を絞ったことで船便が減少。コンテナが滞留するようになり、コンテナの調達がタイトになって価格が大幅に上昇した。結果として輸送量が減ったにもかかわらず、運賃が高騰する現象が発生している。

 先ほど、社会のIT化への期待から株価が上昇しているという話をしたが、社会のIT化が高度に進めば、全世界の物流をAI(人工知能)を使って最適化できるはずなので、同じ経済を維持するために必要な物流量を減らすことができる。

 つまり短期的な利益維持のための供給制限は、実は長期的な利益を維持するための供給制限にもつながってくる話なのだ。そうだとすると、食料価格の高騰や運賃の高騰というのは、今だけの話ではない可能性についても考えなければならない。いずれにせよコロナが終わればすべて元に戻るという感覚は持たないほうがよいだろう。

(文=加谷珪一/経済評論家)

●加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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