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業界トップの日本製鉄、東京製綱に対し敵対的TOBか…大量に株取得し、筆頭株主に

文=編集部
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日本製鉄 HP」より

 日本最大の高炉会社、日本製鉄は1月21日15時、東京製綱に対してTOBを行うと発表した。買い付け価格は1株1500円。出資比率を9.9%から19.9%に引き上げる。対する東京製綱は同日19時30分、「当社に対して何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われた」とするニュースリリースを出した。

 日本製鉄は「東京製綱株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」で東京製綱のガバナンス(企業統治)の機能不全を厳しく指摘しており、東京製綱は「近日中に見解を発表する」としているが、「このままいけばTOBに反対することになるので、敵対的TOBに発展する可能性が大きい」(兜町筋)。

 大企業による敵対的TOBは長らくタブー視されてきた。2006年、王子製紙(現王子ホールディングス)が北越製紙(現北越コーポレーション)に実施した。この当時、大企業による敵対的TOBは批判の声が強く、王子製紙の試みは結果的に失敗に終わった。

 それから15年、近年は伊藤忠商事がデサントに、前田建設が前田道路に、コロワイドが大戸屋ホールディングスに敵対的TOBを仕掛け、いずれも成功した。ニトリによる島忠のTOBも当初は、他社のTOBにちょっかいを出すかたちだった。

 近年、株式市場も産業界も敵対的TOBに免疫ができてきた。今回の東京製綱に対する日本製鉄のTOBに関しては、1月21日に日本製鉄が提出した大量保有報告書が興味深い。1月6日に16万1000株(0.99%)、1月14日に29万9500株(1.84%)を市場から買い増し、年金などの日本マスター信託口(7.1%を保有、20年9月期末)を上回り、名実ともに筆頭株主になってからTOBに乗り出している。

 1月に入ってから東京製綱株は上昇していたが、日本製鉄が買っていたのだ。TOBの公表当日までに一定の株数を揃える必要があったからだとみられる。

 東京製綱株の愛称はロープ。往年の仕手株である。1988年5月、仕手筋の買い占めで3520円の上場来高値をつけ、1年半で株価が10倍になったことがある。その後、株集めをした仕手筋が経営的に破綻し、大相場は幕を閉じた。だが、今回の買い本尊は役者が違う。日本一の製鉄会社が相手なのである。

 TOBといっても全株取得型ではない。買い付けの対象は発行済み株式の10%弱。買い付けの下限の設定もないためTOBは成立するとみられている。問題はその後。東京製綱が日本製鉄の言うことを聞かなければ、出資比率を2割弱からさらに引き上げることになる、との見方がある。

 日本製鉄のニュースリリースによると今回の措置はあくまで「企業価値のさらなる毀損を防ぐためのもの」。いわば守りのTOBだが、東京製綱の出方次第ではこの先、攻めのTOBに転じることが十分にあり得るわけだ。ターゲットとなった東京製綱の田中重人会長は、新日鐵(現・日本製鉄)のOB。「TOBの背景には人間的軋轢がある」(M&Aに詳しいアナリスト)との解説もある。

日本製鉄は着地点を考えているのか

 1月27日の東京株式市場で東京製綱の株価の終値は124円高の1383円。一時、1432円まで買われた。1月26日のニュース番組『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)で、東京製綱が「明日(1/27)午後、TOBに反対する意向を表明する」と報じたからだ。会社側の意を受けた対抗買収者(ホワイトナイト)が登場するなどとの思惑から、買いが集まった。日本製鉄のTOB価格は1500円で、まだ時価を上回っていたが、ホワイトナイトが登場すれば局面が大きく変わる。

 ただし、日本製鉄の買い付け上限株数は162万5500株。自己株式を除いた発行済株式(1625万5173株)の10%弱にすぎない。つまり、TOBに応募しても買い付けてもらえる可能性が極めて低いということにもなる。思惑で東京製綱株を買っても、報われるという保証があるわけではない。そのため、1月29日(1月の取引最終日)の終値が1291円(前日比61円安)と反落した。

 日本製鉄のTOB価格(1500円)は安過ぎるように映るが、東京製綱の過去1カ月の平均株価に7割超のプレミアムをつけているのだから、妥当なものだ。日本製鉄はTOBに関するニュースリリースで東京製綱のガバナンスに疑問を投げかけている。

 田中氏は旧富士製鉄出身で新日鐵取締役大阪支店長だった2001年4月、東京製綱に顧問として入り、同年6月の株主総会で代表権のある副社長に就任した。1年後の02年4月1日付で社長。10年6月の定時総会で代表権を持った会長になり現在に至る。社長・会長在任期間は間もなく19年になる。「主力仕入れ先の新日鐵に頼み込んで田中氏を出してもらった」(新日鐵の役員OB)という経緯があるらしい。

 東京製綱は2月10日に第3四半期決算の発表を行う予定であり、この時までにはTOBに対する賛否の意思表示が行われるとみられる。表明がなければ決算発表が混乱することになるかもしれない。

 敵対的TOBに発展するのだろうか。ホワイトナイトが現れれば、株価は再び波乱となるかもしれない。

(文=編集部)

【続報】

 東京製綱は2月4日、「日本製鉄によるTOBに反対する」と発表した。東京製綱の反対の表明により、敵対的買収に発展した。日本製鉄は「東京製綱の企業価値の回復・向上に寄与すると考えており、TOBを継続していく」とのコメントを出した。日本製鉄にとっても初の敵対的買収となる。

 東京製綱は反対する理由として「日本製鉄の影響が高まれば、同社から調達する原料の価格交渉で不利な立場となり、株主の利益などを損ないかねない」とした。浅野正也社長は読売新聞の取材に対し、「日本製鉄から経営の改善に関する具体的な提案を受けたことはない」と述べた。「経営の改善を求めてきた」とする日本製鉄の主張と、大きな食い違いをみせた。

「ホワイトナイト(白馬の騎士)を探すなど様々な方法を検討している」(東京製綱)ことを明らかにした。TOBの期間は1月22日から3月8日まで。買い付け価格は1株1500円。2月4日の終値は1353円(22円高)。一時、1379円まで上昇した。2月4日の終値は1月21日のそれを26%上回っている。

BusinessJournal編集部

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