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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

共同通信記者、一般人を名指しで「自衛隊を天皇の軍隊にすると唱える人物」…当人に取材せず

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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 この記事と著作の根拠は匿名の陸幕長経験者などの「証言」に基づくもので、組織が存在したことを示す書類などの物証はゼロ、著作中に「録音テープなどは一切無い」旨が書かれてある。非常に信憑性が怪しく、よくこんな内容で編集チェックを通って記事化できたものだと理解に苦しむ。

「闇組織だから証拠はないに決まっている」という反論があるだろうが、このような類の闇組織の存在を示す報道は、トップ経験者などが実名で詳細な証言をするから成立するのであって、どこの誰だかわからないような人間が裏付けもとれないような「証言」をしたといっても、それは「妄言」であって報道するに値しない。

 石井氏の著作がいかに信頼性に乏しいかを示す上での一例を示したい。「別班」に従事した関係者の証言として、正規の予算とは関係のない資金が与えられたという。以下、著作の98ページ内から引用する。

「月に2~3度接待して経費を請求したところ、『少なくとも月に数十万円単位』で使えと上官に注意され驚いたという。領収書は一切不要で年間数百万。

 『カネを請求する時は、多めに吹っ掛けて請求していた』

 資金があまると、自分たちの飲み食いや風俗遊びに使ったという。内部で豪華な宴会を開くこともたびたびあり、金銭感覚は完全に麻痺していた。

 『カネを使わないと、仕事をしていないと上官に思われてしまうから』

 別班員たちは好むと好まざるをにかかわらず、まさに湯水のように、私たちの払う税金を使っていたのだろう」

 正直、こんな独自の「裏金」が防衛省単体で捻出できるとは考えにくく、首相にも報告していないということだから「官房機密費」から出ているのでもないだろう。極めて信頼性が乏しいと言わざるを得ない。

 一万歩譲って、もしこのような闇組織が存在し世界規模で展開しているとして、湯浅悟郎陸幕長が昨年末、毎年開催されている日米合同訓練に不参加だったことをどう説明するのだろうか。これだけ中国がせり出して日米同盟の重要性が高まっている今になって、別班が得た独自情報を陸⾃で唯⼀知り得る陸幕⻑が、⽶軍を激怒させるような判断をするのはどうしてなのだろうか。私のような凡⼈には理解できないような、さぞ⽴派なインテリジェンス活動が闇で行われているのだろう。

「辺野古への配備計画」はそもそも検討段階で揚げ足取り

 それに、直近の沖縄タイムスとの合同取材による「辺野古に水陸機動団を配備する計画」についての報道だが、これもこの記者会見で岸防衛相が説明しているように、米軍と「共同使用の検討にあたっては、全国の施設・区域について幅広く様々な可能性を検討」するのは当たり前で、その時の図面が出したところで何の意味もない。

 当時の陸幕長とニコルソン在日米海兵隊司令官との間の「極秘の合意」があったとしても、日米両政府トップ以外のものは合意とは呼ばない。一般社会でも営業部長同士が「合意」していても、社長同士が納得しなければ意味がないのと同じで、まったくナンセンスな報道だと言わざるを得ない。多くの防衛省幹部も、石井氏からの事務方から文民統制を逸脱するなどの反論があったとの指摘に対し、「政策案件として、防衛省内局と陸幕の間で調整・検討されており、文民統制からの逸脱と言う批判は的外れ」と冷ややかな声も出ている。

共同通信、求められる対応

 石井氏の取材活動に問題があることはこれまで述べてきた通りだ。別班はしょせん真偽不明の「闇の組織」で誰も傷つかないが、荒谷氏は実在する一民間人であり、「危険思想を持った自衛官OB」とのレッテル貼りで多大な報道被害を受けている。共同通信は日本を代表する報道機関である以上、その配信記事が日本全体に及ぼす影響は計り知れず、これ以上石井氏により、荒谷氏はもちろん一般人に新たな報道被害が出る前に、共同通信として、なんらかの対応が必要ではないだろうか。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

共同通信記者、一般人を名指しで「自衛隊を天皇の軍隊にすると唱える人物」…当人に取材せずの画像2●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)

Kyuzo Matsuoka

ジャーナリスト

マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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