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小谷寿美子「薬に殺されないために」

温湿布と冷湿布、どっちを貼るべき?意外な正解…湿布貼り過ぎは危険、胃・腎臓に障害

文=小谷寿美子/薬剤師
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「Getty images」より

温湿布と冷湿布の使い分け

温湿布冷湿布はどちらがいいですか?」という質問をよく受けます。みなさんはこの質問について、どのように考えていますか?

 この答えを初めて聞いたとき、私は衝撃を受けました。あれから年月がたち、新しい情報が出ているかと調べたのですが、究極の答えは変わっていませんでした。それは「貼って気持ちがいいほう」です。冷たいほうが気持ち良ければ冷湿布、温かいほうが気持ち良ければ温湿布を貼るということです。それでは無責任ではないかということで、使い分けの目安を調べ、私もそれに沿って薬を紹介しています。

・冷湿布を貼る目安

 →筋肉痛や捻挫など「急性」の炎症が起こっているところ

・温湿布を貼る目安

 →肩こりや腰痛など「慢性」の炎症が起こっているところ

 冷湿布が冷たく感じる理由ですが、湿布自体に水分を含んでいてそれが冷たく感じることと、メントールといった冷感成分が配合されていることがあります。メントールはスースーして気持ちがよいものです。この夏は私もこのメントールには大変お世話になっていて、「シャツクール」がなければ炎天下の自転車仕事はできませんでした。

 一方、温湿布には温かく感じる成分として「トウガラシエキス」が配合されています。トウガラシを食べて汗だくになる方もいるかと思いますが、血行を良くする効果があります。トウガラシですので、ヒリヒリする感じが出てしまう方がいます。この場合は温湿布が使えません。

 冷湿布でも温湿布でも痛みや炎症を抑える「消炎鎮痛薬」が配合されているので、薬効のメインはあくまでもこの「消炎鎮痛薬」です。その上で、温めたほうが気持ち良ければ温湿布を貼り、冷たいほうが気持ち良ければ冷湿布を貼ります。消炎鎮痛薬にも効果があり、やさしいものからしっかり効果を出すものまで、多くの薬が発売されています。

 医療保険財政が苦しいため、湿布に関しては病院で使うような効果が高いものが市販で発売されています。そのかわり、市販で買えるのだから保険で湿布を使うのは最小限にするように、2016年4月より実施されています。かつては「サリチル酸メチル」が主成分の湿布が市販で多く発売されていたのですが、においが強いので「サリチル酸グリコール」にすることでにおいを抑えることに成功しました。この薬はやさしい効き目のため、お子さまから使うことができます。また、「湿布を貼る」という行為をすれば満足してしまうような方にも、このやさしい湿布を勧めています。

 一方で「インドメタシン」のように効果が高い成分がありますし、現在では処方箋薬でメジャーとなった「ロキソプロフェン」の湿布も発売されています。痛みの度合いによって消炎鎮痛薬を選んで勧めるようにしています。

温湿布は「温熱療法」ではない

 温湿布は温かく感じるため「温熱療法」と勘違いされやすいです。冷湿布は体を冷やすけど、温湿布は体を温めるから害にならない、と貼りまくっている方が残念ながらいます。あくまで「消炎鎮痛薬」が配合された「薬」です。湿布だから副作用はないと思い込んでいる方もいるかもしれませんが、貼りまくっていたらしっかりと体内に吸収されて全身性の副作用が起こってしまいます。つまり「消炎鎮痛薬」を飲んだのと同じレベルの副作用が出てしまうということです。何度もお伝えしているのですが、消炎鎮痛薬というのはもっとも強い副作用が起きる市販薬のひとつです。

 薬を飲んだら胃が荒れて、むかむかしたり痛みが出たりする方がいると思います。湿布を貼りまくると、そのような症状が出てしまうということです。インドメタシンは消炎効果が高いのですが胃が悪くなりやすいので、飲み薬としてほぼ使わず、湿布や塗り薬として使うことが多い薬です。それをたくさん貼っていたら当然胃が悪くなります。胃だけではありません。腎臓が悪くなるという副作用もあります。

 重篤副作用疾患別対応マニュアルによると、急性腎障害を起こしやすい医薬品として明記されています。尿量が少なくなる、むくみがある、体がだるいといった症状が出てきます。それこそ、むくみなんて一日中仕事をしたら日常的に感じますし、体がだるいといった症状は一日中仕事をしたら日常的に感じることでしょう。尿量についても多い日もあれば少ない日もあるでしょうから、たまたま少なかったくらいにしか感じないかもしれません。

非温感のテープに注意

 非温感のテープとは、「サロンパス」のように痛み止めが配合されたテープのことです。消炎鎮痛薬が皮膚から吸収されることで痛みや炎症に効果があります。非温感のテープなのですが、便宜的に「シップ」と呼ばれることが多いです。湿布は水分を含んでおり「はがれやすい」という欠点があるのですが、非温感のテープはしっかり密着するのではがれにくいです。貼った場所を固定するテープを貼る必要がないため便利です。そのため、現在ではこちらのほうが人気で数多く使われています。

 市販ではこうしたテープ剤のほうが「消炎鎮痛薬」として強いものが配合されていることが多いです。インドメタシン以外にも「フェルビナク」がありますし、「ボルタレン」で有名な「ジクロフェナク」はかなり強いです。こうした強い薬をあちこちに貼っていると、全身性の副作用が出やすくなってしまいます。ジクロフェナクの場合は両肩に腰に膝にと何枚も貼らないで、添付文書に書いてある通り1日2枚(大判は1枚)までにするようにしてください。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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