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現役マネージャーが語る、芸能ニュース“裏のウラ”第35回

「近藤真彦・不倫」はなぜ報じられたか…崩壊するジャニーズ帝国とメディアコントロール

文・構成=田口るい

geinou  どうも、“X”という小さな芸能プロダクションでタレントのマネージャーをしている芸能吉之助と申します。

 昨年末で嵐が活動休止に入ったかと思えば、今年に入ってから「ジャニーズJr.の22歳定年制度」を導入することを発表したりと、相変わらず話題にこと欠かないジャニーズ事務所。ちなみに22歳定年制度は、ジャニーズ事務所副社長で、ジャニーズJr.(以下、Jr.)の育成を担当するジャニーズアイランド社社長・タッキーこと滝沢秀明氏による施策だといわれています。

 Jr.時代から絶大な人気を誇っていたものの、2018年に惜しまれつつも表舞台から去ったタッキーですが、彼がマネージメントに回ってからは、正式デビュー前のJr.がバラエティやドラマに出る機会が増えています。その反面、マスコミに狙われてスキャンダルが発覚し、処分を受けたり退所という選択をしたりするJr.も目に付くようになりました。

 なかでもインパクト大だったのが、Jr.内の人気ユニット「宇宙Six」に所属していた山本亮太くん。彼は昨年10月に“闇スロット通い”という、さわやかさがウリのジャニーズとはかけ離れたダーティすぎるスキャンダルが「文春オンライン」で報じられ、ジャニーズ事務所を退所しています。

 Jr.として19年も活躍しファンの歓声を浴びていた彼が、プライベートでは闇スロットの常連というダークサイドの住人だった……というのは、まるで裏社会系マンガの設定のようです。ただ、吉本興業の“闇営業問題”が大きな波紋を広げたように、いまや芸能界において反社会勢力との付き合いは基本的にタブー。こうした問題が二度と起きないように、ジャニーズ事務所もタレントの教育にはかなり力を入れているようです。

 昨年12月に「女性自身」(光文社)で報じられた、ジャニーズ事務所が全所属タレントに対する薬物検査を実施……というのもその一環でしょう。ここ数年、伊勢谷友介くんや沢尻エリカさん、ピエール瀧さんなど、芸能界で薬物逮捕者が増えていますし、田口淳之介くんや田中聖くんといった元ジャニーズも大麻所持の疑いで逮捕されていますから、ジャニーズ事務所が注意深くなるのも当然といえば当然。加えて、2019年7月にジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏が亡くなってから、一部で「ジャニーズ事務所の体制が崩れた」「退所者が続出している」などといわれていることもあり、徹底的に事務所内のクリーン化を図っているのかもしれませんね。

SMAP独立騒動あたりから、すでに“崩壊”が始まっていたジャニーズ事務所

 確かに、ジャニー喜多川氏が現役だった頃は「ジャニーさんがいるから辞めない」というタレントがたくさんいて、彼の死をきっかけに「いなくなったからもう辞める」というメンバーもいました。例えば、中居正広さんはSMAP解散後もしばらくジャニーズ事務所に在籍していましたが、それはジャニー喜多川氏に対して恩を感じていたからこそで、ジャニー喜多川氏が亡くなって事務所の幹部が代替わりしたタイミングで独立しています。“ジャニー喜多川氏の最高傑作”ともいわれている少年隊のメンバー、錦織一清さんと植草克秀さんも、彼の死をきっかけに退所を申し出たそうです。

 とはいえ、ジャニーズ事務所はジャニー喜多川氏が亡くなるだいぶ前である、SMAP独立騒動あたりからすでに崩壊していたように思います。SMAPの解散は誰がどう見ても“何かあった”と思わせるようなものでしたし、そもそもの発端はメリー喜多川氏と当時SMAPの敏腕マネジャーだった飯島三智氏が社内分裂したこと。社内で解決すべき問題だったはずが、彼女たちの溝は広がっていくばかりで、最悪の結末を迎えてしまった。

 加えて、Hey! Say! JUMPやKis-My-Ft2、Sexy Zoneなど、デビューから10年ほど経つ中堅グループは、年齢的に“ポストSMAP”、“ポスト嵐”となってもおかしくなかったはずが、国民的人気を誇っているとはいい難い。ここ数年、ゴタゴタ続きだった状況を、タッキーと社長のジュリーさんが中心となって必死に立て直している最中……と見るほうが、むしろ正確でしょうね。

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嵐・大野智の大麻使用疑惑、セクシー女優のジャニタレ肉体関係騒動

 また、このところジャニーズタレントの未成年飲酒や熱愛などのスキャンダルが相次いでいることについて、「ジャニーさんがいなくなったことで、ジャニーズ事務所からスキャンダルをもみ消す“政治力”が失われた」などともよくいわれます。しかし、よくよく思い出してください。ジャニーズ事務所は以前から、所属タレントの素行不良や女性スキャンダルがスクープされています。薬物使用疑惑が報じられたタレントだって、昔からいました。

 たとえば2008年には「週刊現代」(講談社)が、嵐の大野智くんがカラオケボックス内で大麻を使用し、2人の女性と性行為に及んだ……なんていう特大のスキャンダルを報じています。また、元歌手でセクシー女優のAさんが「週刊文春」(文藝春秋)誌上で、「櫻井翔以外の嵐メンバー全員、その他複数のジャニーズタレントと肉体関係を持った」と衝撃的な告白をした上、2010年に自ら命を絶ったという出来事もありました。

 前者の真偽はともかく、後者のほうは、さまざまな状況証拠から一定の信憑性のある話だと業界内でも噂されていましたが、いずれにせよどちらのネタも、ワイドショーなどで大々的に報じられることは一切ありませんでしたよね……。

 確かに数年前までは、テレビや紙媒体をコントロールしておけば、スキャンダルが明るみになることはなかった。しかしネットありきの現代では、ありとあらゆる情報が均質に表に出て、そしてあっという間に拡散してしまう。SNSによって世間がタレントをより直接的に持ち上げたり攻撃したりすることが可能になっていて、そして一方のタレント側も、事務所やメディアを介さずにダイレクトに自己発信できる。それがこの数年、タレント、マスコミの距離感や役割を大きく変化させてきたのは周知の事実です。

 その結果、どんなに大きな芸能事務所でも、所属タレントに関する情報をすべて支配することはできなくなった。ジャニーズ事務所に関しても、結局のところ「ジャニーさんがいなくなったからスキャンダルが世に出るようになった」のではなく、「スキャンダルが拡散することを止める術がない」という状況でしょう。この影響から、芸能界の在り様が本質的に変わり始めていると感じる機会が増えています。

テレビも扱わざるを得なかった「近藤真彦・不倫」というビッグスキャンダル

 昨年末に「週刊文春」で報じられた“ジャニーズの長男”マッチこと近藤真彦さんの不倫は、まさにその典型例でしょう。数年前ならジャニーズパワーによって、ワイドショーではスルーされていたであろうネタですが、ネットで大騒動になったことから、テレビでも扱わざるを得なくなった。この一連の流れは芸能界全体にとっても衝撃的で、時代が変わったな~と実感させられました。

 しかもタイミングが悪いことに、近藤さんは昨年がデビュー40周年という記念すべき年で、メディア露出にめちゃめちゃ力を入れていたんです。というか、だからこそ文春は、このタイミングでこのネタをブッこんできたのでしょうが……。

 不倫報道で芸能活動無期限自粛を発表した後に発売された週刊誌「SPA!」12月8日号(扶桑社)において、近藤さんはなんと表紙を飾っており、4ページというロングインタビューも掲載されていた。記事中に、「編集部注:今回の取材は10月20日に都内で行われたものです」と添えられていたのが、なんとも切なかったですね……(笑)。

 近藤さんの不倫報道については、芸能界でもさまざまな人が言及していましたが、これもまた異例のことでした。かつてならジャニーズのスキャンダルは、芸能人なら誰もが触れたくない面倒な話題だったからです。

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記念すべきデビュー40周年の年に不倫を報道された近藤真彦。かつてならジャニーズのスキャンダルは、芸能人なら誰もが触れたくない面倒な話題だったが…。画像は2015年にSMRから発売された、近藤真彦35周年YEARシングル「大人の流儀」のジャケット。

松本人志、加藤浩次が開けた、ジャニーズタブーの“パンドラの箱”

 ダウンタウンの松本人志さんは、昨年11月15日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、近藤さんの不倫が報じられているにもかかわらず各局のワイドショーで扱われていないことについて「いろんな地上波がやらないし、スルーするから。テレビが好きな人間からするとつらい」とコメントした上で、同月22日放送の同番組でも、「ジャニーズ事務所をみんながいじれるというか、ほかの事務所の芸人がちょっとずつでもできるようになってたら、今回のことはこんなふうになっていなかったのでは」と指摘していました。

 さらに極楽とんぼの加藤浩次さんも同月17日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)で、近藤さんの不倫報道が直後にワイドショーで扱われなかったことについて、「週刊誌で出たのをそのまま流すことはできない。しっかりジャニーズ事務所の裏とか、マッチさんがコメントを出した上で我々はやるということ。週刊誌だけを鵜呑みにして流してしまうと、報道として責任がないことになってしまいますから、そこのルールがあってやれなかったというのがある」と持論を展開。加藤さんのこの意見には、ネットで「結局はジャニーズへの忖度かよ」といった声もありましたが、そもそも「うちの番組はジャニーズに事実確認しているのだ」ということを、ましてや芸能レポーターではなく司会者が番組内で言及することなど、最近のワイドショーではあり得なかった話なわけです。だからこそ、やはり加藤さんの発言にはとても大きな意味がある。まさに、芸能界の“パンドラの箱”を開けたのですから。

 マッチさんの不倫報道には、ネットで「なぜテレビで扱わないのか?」との指摘が相次ぎ、一部ではマスメディアに対する不信感も漂っていたなか、松本さんや加藤さんのような本音で語るコメンテーターが言及したことは、今後ジャニーズによるスキャンダルの扱いが変わっていく潮目になったはずです。おふたりは吉本興業の闇営業問題でもいろいろと“大活躍”した経験もあって、ネットの声やファンの反応に意識的、かつ自覚的な方。だからこそ、スルーを貫くわけにはいかなかったのでしょうね。
(構成=田口るい)

芸能吉之助/芸能マネージャー

芸能吉之助/芸能マネージャー

弱小芸能プロダクション“X”の代表を務める、30代後半の現役芸能マネージャー。趣味は食べ歩きで、出没エリアは四谷・荒木町。座右の銘は「転がる石には苔が生えぬ」。

Twitter:@gei_kichinosuke

田口るい

田口るい

音楽誌の編集部勤務を経て、フリーランスとしてエンタメ系やカルチャー系の記事を執筆。

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