ビジネスジャーナル > 自動車ニュース > アウディ初のEVは量産狙い?
NEW
木下隆之「クルマ激辛定食」

アウディ初のEV「e-tron」は量産狙い?意外なほど常識的、乗り心地は驚異的に極上

文=木下隆之/レーシングドライバー
【この記事のキーワード】, , , ,
アウディ初のEV「e-tron」は量産狙い?意外なほど常識的、乗り心地は驚異的に極上の画像1
アウディ「e-tron」

e-tron」は、アウディ史上初のEV(電気自動車)である。先進技術を多く抱え、世界初のタイトルを好むアウディとしては、EVに後発の参画になることが不思議ではある。

 一方でモータースポーツの世界では、”EVのF1″ともいえるFIAフォーミュラE世界選手権に積極参戦。伝統のル・マン24時間レースで連勝を重ねていながら、ガソリンエンジンが主体の同レースから撤退。自動車メーカーとして、いち早くEV化に舵を切った。

 そんなアウディが発表した初のEVに興味が注がれるが、意外なことに常識的な雰囲気をまとって誕生したのである。

アウディ初のEV「e-tron」は量産狙い?意外なほど常識的、乗り心地は驚異的に極上の画像2 カテゴリーはSUV(スポーツ用多目的車)。全長は4900mmで全幅は1935mmというから、ミドルサイズとしては大きい。全高は1630mmに達する。コクピットに収まるのに苦労することはなく、よじ登るような姿勢を強いられることもない、ギリギリの高さである。

 車両重量は2400kgを超える。というのも、71kWhという力強い駆動用バッテリーを搭載しており、そんな蓄電池だけで700kgを超えるというのだから、その重量に達するのも納得する。それほどの駆動用バッテリーであり、電動機のパワーは力強い。極低回転域からのスタートはスムーズで力強い。2.4トンもの巨体をスルスルと加速させる。モーター駆動の常として、速度が上昇し高速クルージングに達してからの加速は凡庸だが、気がついたら法定速度を犯しそうになって焦る。クルマとしての安定感は抜群なのである。

 電子制御エアサスペンションを組み込んでいるから、乗り心地は驚くほど優しい。路面からの突き上げを飲み込むように消してしまうあたり、いかにもエアサスらしい衝撃吸収マジックだが、それでいてフワフワと船が揺れるような曖昧さはなく、聞かされなければ金属のコイルを巻きつけた従来型のサスペンションかと錯覚しそうだ。それほど違和感がないのである。

アウディ初のEV「e-tron」は量産狙い?意外なほど常識的、乗り心地は驚異的に極上の画像3 e-tronはアウディ初のEVではあるものの、当然のごとくクワトロ(4輪駆動)であり、いつでも高いスタビリティと圧倒的なトラクションを発揮する。

 とても乗り心地が良く高級感に溢れているのだが、道無き道を突き進むことも可能だ。ヒルディゼントコントロールは、前転しそうになるほどの急激な下り坂をゆるゆると下ってくれるシステムだ。人間のブレーキ操作ではおぼつかない急坂を、コンピュータ制御を頼りに下っていくのである。といった装備が組み込まれていることで、e-tronがオンロードだけでなく、カントリーロードも守備範囲にすることを語っている。

アウディ初のEV「e-tron」は量産狙い?意外なほど常識的、乗り心地は驚異的に極上の画像4 そもそも液晶表示の計器類の片隅に、標高が数字で表示されているのだ。アルプスを彷彿とさせるような山並みが描かれている。e-tronは都会型SUVに電気駆動を持ち込んだのではなく、電動ならではの反応の良さをクロスカントリーで再現したように思う。

 気になる航続距離は、1回の満充電で316km(WLTCモード)。バッテリー容量は71kWhである。急速充電設備が身近になければ、日常で使用するのは困難なほどのビッグパワーEVだが、最新モデルらしい魅力がある。

 それにしてもe-tronは、日常にそっと溶け込むような受け入れやすいEVである点が特徴だ。外観からして、近未来感をいたずらに強調するようなデザインではない。フロントグリルの色味や素材でEVであることを感じさせるが、これみよがしの押し付けがましさがない。

 コクピットも、比較的穏やかな時間が流れる。座ってスターターボタンを押せば、それだけでスタンバイ完了というあっけなさ。たとえばトランクスペースなどは、巨大なバッテリーを搭載していることなど思わせないほど低いのだ。走ってみて初めて、その圧倒的な静粛性に気づくというおくゆかしさである。

 先進技術を大好物とするアウディにしては、落ち着きのある佇まいである。それはつまり、量産を期待している証である。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

アウディ初のEV「e-tron」は量産狙い?意外なほど常識的、乗り心地は驚異的に極上のページです。ビジネスジャーナルは、自動車、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!