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成馬零一「ドラマ探訪記」

綾瀬はるか&高橋一生の魅力を引き出す『天国と地獄』隙のないドラマに感じた“唯一の不満”

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』|TBSテレビ」より

 宮藤官九郎、岡田惠和、北川悦吏子といった人気脚本家の作品が多数出揃った2021年の冬クールドラマだが、初回平均視聴率16.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という好スタートを切ったのが、森下佳子脚本のドラマ『天国と地獄 ~サイコな2人~』だ。

 TBS系の日曜劇場(日曜夜9時放送)で放送されている本作は、綾瀬はるかが主演を務める刑事ドラマ。猟奇殺人事件の容疑者である創薬ベンチャー企業「コ・アース」社長・日高陽斗(高橋一生)を追う警視庁捜査一課の刑事・望月彩子(綾瀬はるか)は、日高とつかみ合いになって歩道橋の階段から転落。その後、2人の心と身体は入れ替わってしまう。

(日高の身体となった)望月は元の身体に戻り、日高を逮捕しようとするが、(望月となった)日高は刑事として振る舞い、日高(の身体に入った望月)が逮捕されるように仕向けていく。果たして、望月は元の身体に戻り、日高を逮捕できるのか?

 古くは大林宣彦の映画『転校生』、近年では新海誠のアニメ映画『君の名は。』でも描かれた男女入れ替わりモノは、さまざまなフィクションで定番化しているが、刑事(女)と殺人犯(男)の入れ替わりという本作のアイデアはとても斬新で、今までにないミステリードラマとなっている。

 見どころは何といっても、人格の入れ替わった姿を巧みに表現する高橋一生と綾瀬はるかの芝居だろう。

 森下は『義母と娘のブルース』(TBS系)を筆頭とする数々の作品で綾瀬はるかと組んでおり、高橋一生とは大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)で組んでいる。それだけに両者の魅力を熟知しているのだが、2人の心と身体を「入れ替わらせること」で、今までにない魅力を見事に引き出している。

 特に綾瀬はるかが演じる悪役はとても鮮烈で、日高と入れ替わったことで見せる大人の色気や、猟奇殺人犯として殺人を行う姿には凄みがある。一方、高橋一生は『岸辺露伴は動かない』(NHK)等で見せた変人キャラがミステリアスな日高にハマっていたが、(望月と入れ替わった後の)ナヨナヨとした情けない日高もチャーミングで、見事に魅力を引き出している。

 物語は、謎の殺人事件と「人格の入れ替わり」という2つの謎を追っていくアクロバティックな構成だが、小出しにされる謎が小気味よく、ミステリーとしても、もちろん楽しめる。

 望月の家に居候するヒモ男・渡辺陸(柄本佑)も怪しい動きを見せており、実は彼こそが真の犯人なのではないか? といった疑惑も生まれるなど、SNSでの考察も盛り上がっている。その意味で、同枠で昨年ヒットしたミステリードラマ『テセウスの船』の流れもうまく押さえており、隙のないつくりだというのが、現時点での評価だ。

『天国と地獄』の唯一の不満とは

 ただ、唯一の不満は、映像として演出がわかりやす過ぎること。登場人物がショックを受けた場面でベートーベンの「運命」(交響曲第5番)のダダダダーンというイントロが劇伴として多用されていることを筆頭に、見せ方がとにかく安直。万人に向けてつくろうとするあまり、あらゆる要素が説明過多で、映像作品としては歯ごたえに欠ける。

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