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池上彰氏、テレビで誤った解説?自民党内から批判…「トランプは中国の人権問題に無関心」

文・構成=編集部
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『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日系)公式サイトより

 米ドナルド・トランプ前大統領は「人権」に興味があったのか、それともなかったのか――。1月30日放送のニュース解説番組『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日系)の一コマで、司会のジャーナリスト・池上彰氏が行った解説が、一部の国会議員から猛反発を受けている。池上氏が番組で新疆ウイグル自治区や香港の民主化デモに関し、トランプ氏が「人権問題に関心がなかった」などという趣旨の発言をしたことに対し、「事実と違う」などと指摘が上がったのだ。

自民・和田政宗氏「池上氏はキャスター失格」

 同日の放送では、共和党のトランプ氏から民主党のジョー・バイデン大統領への政権交代に関し、池上氏が解説していた。その発言内容に対し、自民党参議院議員の和田政宗氏(比例、元内閣府政務官・元党広報本部副本部長)がかみついたのだ。和田氏は2日、提言型ニュースサイト『BLOGOS』上に記事『池上彰氏が全く事実に反する発言 降板すべきでは?』を投稿し、次のように池上氏を糾弾している。以下、引用する。

<様々な方が「酷かった」と指摘しているので、「池上彰のニュースそうだったのか!!」(1月30日放送・テレビ朝日)の録画を見たが、番組内で池上氏は周知の事実について、全く事実に反する発言を行っており、キャスターとしてもジャーナリストとしても完全に失格。

 自ら降板すべきではないか。

 池上氏は番組内で、

『例えば、新疆ウイグル自治区の、あそこの多くの住民が強制収容所に入れられてるとか、香港の民主化運動の人たちが次々に捕まっているという、ああいう問題に関してトランプ大統領は、これまで何も言ってきませんでしたからね。全然、人権問題に関心がなかったわけですね。ところがバイデン大統領、あるいは民主党というのは人権問題を重視するので・・・』

と述べたが、

 トランプ大統領は繰り返しウイグル問題、香港問題において人権を守るために強い姿勢を示してきた。

 テレビ朝日は、あまりにキャスターとして無知であり、もし知っていたなら事実に反する「嘘」を発言したキャスターをこのまま起用し続けるのだろうか?>(原文ママ)

 和田氏の前職はNHKのアナウンサーだ。マスコミの裏側を知っていることもあり、各社の報道内容に関してインターネット上で批判を展開することもしばしばだ。またテレビ朝日系列の各番組に対しては鋭い舌鋒で知られ、そうした姿勢は当サイトでも昨年5月18日公開の記事『和田政宗議員、『モーニングショー』自民党“3密”会議報道に誤報だと猛反論…真相は?』で取り上げた。

 番組の放送内容の真偽に関する批評はあってしかるべきだが、池上氏個人に対し「キャスター失格」「無知」と攻撃するのは穏やかではない。池上氏が放送内容や番組内のコメントに関して一定程度の責任を負うとしても、司会者の池上氏本人がすべてを取材しているわけではないだろう。ましてや、キー局のニュースキャスターが自ら取材現場に赴く例は、残念ながら多くはない。一般論として、番組スタッフの取材や収集資料を踏まえて放送をしているのだから、ファクトチェックは局の責任だと考えるのが妥当だろう。

米トランプ前政権は人権を外交カードとして利用

 実際、トランプ政権は「人権」をどのように考えていたと見ればいいのか。外務省のある在外公館関係者は次のように語る。

「トランプ前大統領の外交政策に関しては、世界中でいろいろな意見があります。いずれにしても、政権として関心があったのかということと、トランプ氏個人が興味があったのかは別に考える必要があると思います。

 一番わかりやすい事例は2018年6月19日、トランプ政権が国連人権理事会からの脱退を表明したことでしょう。国際的な人権擁護の枠組みから脱退するという点だけ見れば、トランプ政権は人権に興味がないように見えます。しかし当時、ポンペオ前国務長官は脱退の理由を『イスラエルに対する恒常的な偏見があり、中国やロシアなど人権侵害国が理事国になれるような仕組みが問題だ』と主張していました。

 つまり多国間協調主義による活動はせず、米国単体の外交戦略として人権問題を取り扱うというのが、トランプ前政権の基本的なロジックだったのではないかと、個人的には思います。

 新疆ウイグル自治区の人権侵害に関しては今年1月19日、退任間際だったポンペオ前国務長官が『ジェノサイドに認定する』との見解を示し、バイデン新政権の国務長官のブリンケン氏もこれに同意すると一部報道(1月26日付、日経新聞インターネット版記事『ウイグル 米中の新たな火種に(The Economist)』)でも出ています。

 ウイグル問題など特定の外交分野以外で、トランプ前大統領個人が人権問題に熱心だったのかどうか、自伝でも出版されなければわかりません。ただ、ポンペオ前国務長官をはじめとする米外交当局は、現実主義的外交戦略の一環として、一連の人権問題を対中国、対ロシアの重要なカードとして位置付けていたことは間違いないと思います。

 世界各地で今も続く人権侵害は、歴史的な背景や見方によって、構図が変わるものが多々あります。例えば、ある国の民族紛争で特定の民族が迫害されていることを理由に、大国が介入に乗り出し、別の民族が迫害されることになったという事例も歴史上、枚挙にいとまがありません。難しい問題です」

テレ朝「人権問題に深くコミットしてこなかったのではないか」

 今回の放送内容に関して、テレビ朝日広報部は8日、Business Journalの取材に対し、次のように回答した。

「今回の放送は、トランプ前大統領の4年間をみると、人権問題に深くコミットしてこなかったのではないか、という趣旨を述べたものです」

 ホワイトハウスを去っても、トランプ前大統領が残した各種論争の火種は当面、消えそうにない。

(文・構成=編集部)

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