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農水省、農家交付金の制度設計ミスで税金「1300億円」追加投入…究極の“バラまき”策

文=編集部
農水省、農家交付金の制度設計ミスで税金「1300億円」追加投入…究極の“バラまき”策の画像1
農林水産省 HP」より

 大失策で1300億円の損失が発生したら、民間企業ならトップと担当役員はクビ。しかも裁判沙汰になり、私財を失いかねない。霞が関にはそんな一般論が通用しない。農林水産省が所管する農家向け交付金の制度設計が甘かったため、1300億円超の税金が追加投入された。しかし、大臣は給与を返納せず、担当局長もお咎めなし。農水省は無責任とのそしりを免れない。

なんでもいいからバラまけ!

「なんでもいいからバラまけ!」

 新型コロナウイルスが感染拡大する昨春、江藤拓農水大臣(当時)の大号令によって打ち出されたのが、「高収益作物次期作支援交付金」という制度だ。コロナで苦しむ農家に対し、翌シーズンの生産に必要な苗や種、機械などの購入費を支援することが目的。

 この制度は、コロナで苦しむ農家を応援することが趣旨にもかかわらず、コロナで減収したかどうかを問わないという矛盾した設計になっていた。「農家を補助金漬けにすることを信念とする」(全国紙記者)江藤氏がゴリ押ししたからだ。

 見通しの甘い農水省は事業が予定通り進むと読んでいたが、落とし穴にはまった。予算額をはるかに上回る申請が農家からあった上、次回公募の予算が枯渇したことが昨年秋に発覚。要件が緩いので、殺到するのは当然のこと。財務省は、大臣が農林族の江藤氏から農政に詳しくない野上浩太郎氏に替わったタイミングを機に、農水省に支給要件の厳格化を迫った。

 しかも、申請済みの農家にも厳しくした要件を適用する荒技に打って出て、乗り切ろうとしたが、そうは問屋が卸さない。はしごを外された農家はもちろん、与党の怒りも頂点に達した。

「詐欺だ」「選挙に負ける」「自民党はもう支持できないと言われた」。与党議員の怒りの矛先は制度を所管する農水省の水田正和生産局長に向いた。本来なら、水田氏が江藤氏に対し、しっかりした要件を付けるよう粘り強く説得すれば、こんなことにならなかった。ただ、「判断能力がない」(農水省職員)とされる水田氏はもはや、なすすべもなく、当事者能力を失っていた。

 ちなみに水田氏は、鶏卵大手アキタフーズから賄賂を受け取ったとして収賄罪で在宅起訴された元農水大臣の吉川貴盛被告と同社前代表=贈賄罪で在宅起訴=の会食に同席していたことが発覚。与党筋は「交付金と会食の件で終わりだろう」とみており、省内で肩身の狭い水田氏は、今夏にも役所を去ることになりそうだ。


菅側近が事態収拾、江藤氏は……

 結局、事態収拾に動いたのは菅義偉首相の側近、森山裕自民党国対委員長だった。農林族として強大な政治力を持つ同氏が財務省に働き掛け、すでに苗などを購入した農家は全員救済するという条件を飲ませた。片や製造物責任者の江藤氏はどうか。

 江藤氏は「私にも責任の一端はあるが、生産局の諸君も反省しなくてはいけない」という趣旨の発言を会合でしたとされる。責任転嫁も甚だしい。江藤氏周辺は「(コロナで減収したかどうかは問わないということで)財務省と手を握れていた」と話しているが、同氏が問題発覚後、同省と交渉するなど汗をかいた形跡はない。農水省キャリアは「せいぜい官房長官のところに申し入れて終わりという程度」と断じる。「言うだけ番長」というのは、このことだろうか。

 結局、交付金に必要な財源を盛り込んだ2020年度第3次補正予算は今年1月に可決・成立。交付金をめぐる混乱は収まったが、政府・与党によるバラまき体質は今後も続きそうだ。真に農家の自立を促していく姿勢とはほど遠い。補助金漬けにして小規模農家をいかに守るかという現在のスタンスに腐心していては、国際競争力はますます落ちる。これでは農政への信頼が低下し、最終的に不幸になるのは国民だ。

(文=編集部)

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