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ルネサス、やっとチャンスが来た…世界の半導体需給が逼迫、強み持つマイコンの重要性増す

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 しかし、生産を自前で行うことができないと、需要の急速な高まりに対応することは難しくなる。それは半導体業界におけるファブレス化のリスクだ。現に、現在の世界経済では自動車関連の半導体の供給が需要に追い付いていない。重要なことは、ルネサスが台湾積体電路製造(TSMC)などファウンドリーへの生産委託を増やしつつも、自社の生産ラインを手放さなかったことだ。

 今後、同社はより効率的な生産ラインの運営を目指さなければならない。別の観点から考えれば、重要なのはバランスだ。ルネサスはファウンドリーへの生産委託と自社生産の、より良いバランスを目指す必要がある。

変革期を迎える世界の自動車業界

 やや長めの目線で考えた場合、自動車関連の半導体需要は高まるだろう。需要が確認されたことに加えて、さらなる変化が予想される状況は、ルネサスにとって重要だ。

 主要国では、自動車の可能性を探り、将来の成長につなげようとする企業の取り組みが出始めている。代表例として、米アップルや中国の百度(バイドゥ)がEVの開発に着手し始めている。すでに、中国などでEVが普及していることを考えると、IT先端企業による自動車分野への進出には、さらなる成長の機会を手にするために、現時点では明確になっていない社会変革の方向性を探ろうとする考えがあるだろう。かねてから宇宙旅行への計画を持ってきたアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が同社CEOを退任することも興味深い。いずれにせよ、世界の自動車業界を取り巻く環境は大きく変化している。

 その背景には、コロナショックによって世界の常識が大きく変わり、変化が前倒しで進み始めたことがある。世界的な自動車のペントアップディマンドが急速に発現したことは、自動車の可能性を確認する良い機会になった。より有意義に車内での時間を過ごすために、自動運転などに関する取り組みはこれまで以上のスピードで進む。さらには、自動車が生活や都市空間の一部として組み込まれることも考えられる。突き詰めていえば、これまでには誰も考えなかった自動車の機能(社会的役割)をどう実現し、それによって人々の生活、さらには生き方をより良いものにするかが求められている。

 そうした展開を考えると、世界的な半導体の需給ひっ迫によって、自動車のサプライチェーンにおけるルネサスの重要性が確認されたことは大きい。環境の変化に応じて生産体制を調整する力を世界に示すことによって、ルネサスは各国自動車メーカーからの信頼を得ることができるはずだ。それは当面の収益獲得に欠かせない。それに加えて、同社は半導体の設計・開発にも注力しなければならない。そのために重要なことは、より多くの新しい発想を組織に取り込んで、新しい機能の実現を支えるチップの開発を目指すことだ。

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