明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(旧・化学及血清療法研究所、熊本市)は21年3月頃、臨床試験を開始、実用化の目標を23年度に置いている。

 英アストラゼネカが2月5日、新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を申請したことで、国内でもワクチン供給の準備に入った。ワクチンの基となる原液は中堅製薬のJCRファーマ(東証1部上場)が受託生産する。アストラゼネカは1億2000万回分を供給する契約を政府と結ぶ。そのうち75%に相当する9000万回分以上を国内で生産する、と報じられている。

 アストラゼネカは同日、第一三共とKMバイオロジクス、Meiji Seikaファルマの3社と正式契約を結んだ。第一三共とKMバイオはJCRファーマが製造した原液をそれぞれ自社工場で容器に充填して製剤化する。Meijiはワクチンの保管や配送を受け持つ。ワクチンの開発を担っている第一三共とKMバイオが海外ワクチンを委託生産する。

 国内ワクチン開発で最有力とみられているのが塩野義製薬。昨年12月に臨床試験を始めた。国から約400億円の援助を受け、リスクをとって今年末までに3000万人分を目標に工場を整備し、並行してワクチン開発を進めている。さらに1億人分まで生産能力を上げるとしている。

日本が周回遅れとなった理由

 ワクチン開発には年単位の時間がかかる。その一方で平時は需要が限られる。ひとたび副反応が出ると経営への打撃が大きく、国の支援がない限り製薬企業にとって手を出しにくい分野だ。ワクチン学が専門の東京大学医科学研究所の石井健教授は、「ITmedia ビジネスオンライン」(21年1月9日付)のインタビューで、「周回遅れの日本 投資額が雲泥の差」と次のように語っている。

<研究開発の規模とサーポートシステムの面で、欧米・中国と日本とでは雲泥の差があります。米国政府は1兆円を投じ、ファイザーも自腹で2100億円の資金を調達しました。欧州は日本を含む各国から約1兆円をかき集めて投資。中国は国を挙げておそらくそれ以上を投資して開発を急ぎました。

 一方、日本は20年の2、3月に国としてワクチンに使った予算は約100億円程度。しかもこれを基礎研究者、医師主体の評価委員会にかけて、いくつかの産学のチームに振り分けました。投資額だけでも日本と比べて100倍大きい。特に初期投資においての投資規模の格差が明らかにあります>(「ITmedia ビジネスオンライン」より)

 船頭多くして、ワクチン開発の本物の司令塔機能を欠く日本政府とリスクのある巨額投資に二の足を踏む国内製薬企業。平時に対策を怠ってきたツケが、国民の健康に直結する“ワクチンの安全保障”に影を落としている。これが「3周遅れ」と酷評されるコロナワクチン敗戦の真相だ。

(文=編集部)

【続報】

 KMバイオロジクスは2月17日、治験計画を国に提出した、と共同通信が伝えた。3月下旬に成人を対象とした臨床試験に入り、2023年度中の実用化を目指す。「将来、繰り返し接種が必要になる場合も考慮すべきだ」として、安価な国産ワクチンの必要性を強調した。

 KMバイオロジクスが開発するのは、毒性をなくしたウイルスを用いる不活化ワクチンと呼ばれるもの。米ファイザーなどとは製造手法が違う。不活化ワクチンはポリオなどの感染症で既に実績があり、「副反応のリスクが比較的低くなると期待できる」という。

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