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長澤まさみ、上白石姉妹、浜辺美波を生んだ「東宝シンデレラ」の闇と斉藤由貴の“黒歴史”

文=ミゾロギ・ダイスケ
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女優・浜辺美波(20歳)。第7回「東宝シンデレラ」オーディションで、新設のニュージェネレーション賞を受賞し芸能界入りを果たした。現在放送中のドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ)や、NTTドコモ「d払い」のCMでも「とにかくかわいい」と話題だ。画像は本人Instagramより。

「d払い」CMのあまりのヘビーローテーションに対し、「うざい」「でもかわいい」と話題を集めた浜辺美波

『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)に出演中で、2021年度後期連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に主演することが発表された上白石萌音

 姉の上白石萌音に続いて、2022年春スタートの連続テレビ小説作品に出演することが決まった上白石萌歌

 出演した中国映画『僕はチャイナタウンの名探偵3』(原題は『唐人街探案3』で、2021年2月に中国で公開済み)が、中国映画界における興行収入記録を更新した長澤まさみ

 歌手デビュー35周年を迎え、アイドル時代の全10曲を収録したセルフカバーアルバム『水響曲』をリリースした斉藤由貴

 主演ドラマ『科捜研の女』(テレビ朝日系)の映画化が発表された沢口靖子

 ここ最近メディアを賑わせているこれら20代から50代までの6名の女優にはひとつ、共通点がある。全員が、大手映画会社「東宝」が主催する「東宝シンデレラ」オーディションをきっかけに女優デビューした、ということだ。

沢口靖子、斉藤由貴がバトンをつないだ『ゴジラ』や黒澤映画から続く正統派女優の系譜

「東宝シンデレラ」のオーディションは、東宝創立50周年記念イベントとして1984年に第1回が開催された。東宝は以後35年以上、不定期に開催してきた同オーディションを通じて人材を発掘し、系列の芸能プロ「東宝芸能」に所属させ、女優として育成するシステムをとり続けている。

 ライバル会社の東映、松竹もグループ内に芸能プロを有しているが、新人(主に女優)の発掘、育成の面においては、東宝の実績がずば抜けている。それは「東宝シンデレラ」という窓口のブランド価値と、スカウティング能力の高さによるものなのだろう。

 もともと東宝には、明朗で健全な娯楽映画を提供してきた歴史がある。他社がセックスやバイオレンスを強調した刺激路線に走った時期にも、東宝は自社のカラーを守り続け、それは今に至るまで一貫している。

 1970年代前半までの日本映画界では、各映画会社が俳優と専属契約を結んでいたが、東宝専属のスター女優の顔ぶれには、各社の社風が反映されていた。

 黒澤映画に出ていた司葉子、団令子、内藤洋子、特撮映画のヒロインを務めた河内桃子、白川由美、サラリーマン映画を華やかにした新珠三千代、浜美枝、藤山陽子、『若大将シリーズ』のマドンナ・星由里子、酒井和歌子……。東宝女優の系譜は、コメディもこなせる明朗な正統派女優の系譜ともいえた。ヌードシーンや過激な濡れ場の経験者もほとんどいない、という共通点もある。

 そして「東宝シンデレラ」オーディションでの人選にも、そのカラーが継承されている。映画制作のシステムが変化し、自社製作の作品は減ったが、基本的には、東宝配給作品にハマるような「正統派女優」候補生を選んでいるのだ。

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80年代後半のトップアイドルにして、たびたびの不倫スキャンダルを経ていまだ第一線で女優活動を続ける斉藤由貴。画像は、2021年2月21日に発売された、斉藤由貴のデビュー35周年記念セルフカバーアルバム『水響曲』初回限定盤( ビクターエンタテインメント)ジャケット。

諸事情で公式プロフィールにないが、斉藤由貴も「東宝シンデレラ」出身者

 多くの人材を世に送り出した「東宝シンデレラ」オーディションだが、ガラスの靴を手にした新人女優のすべてが、必ずしも芸能界の階段を駆け上がったわけではない。むしろ、残酷なまでに明暗が分かれているといってもいいだろう。

 第1回(1984年)のグランプリ受賞者は、沢口靖子である。彼女は、東宝が9年ぶりに復活させた『ゴジラ』(1984年)などの映画出演を経て、1985年にNHK連続テレビ小説『澪つくし』のヒロインを演じることで、全国的な知名度と人気を獲得。以後、主演級美人女優として、長い間活躍を続けている。

「東宝シンデレラ」オーディションでは、準グランプリに相当する「審査員特別賞」という賞が毎回設けられるが、第1回の受賞者は、藤代美奈子(のちに藤代宮奈子)という人物だった。しかし彼女は、同じく第1回で発掘された、もうひとりの逸材の影に隠れてしまうという悲運を味わうことになる。

 その“逸材”とは、80年代後半のトップアイドルにして、たびたびの不倫スキャンダルを経ていまだ第一線で女優活動を続ける斉藤由貴だ。

 斉藤の公式プロフィールでは、「1984年、『少年マガジン』(講談社)第3回ミスマガジンでグランプリに選ばれる」というのが、芸能界入りのきっかけとされている。しかし、彼女はもともと「東宝シンデレラ」の決戦大会に進出しており、その後、東宝芸能所属でデビューしていることから、「ミスマガジン」のグランプリは、東宝と講談社のタイアップだった……と見るのが正しいのかもしれない。

 しかしいずれにしても、『少年マガジン』のグラビアやCMでの露出を経て、1985年2月にシングル「卒業」で歌手デビューした斉藤の人気はすぐに爆発する。人気絶頂期の1986年にはNHK連続テレビ小説『はね駒』のヒロインを務め女優としての地位も確立、東宝製作の主演映画も続々と公開された。一方で、その斉藤より2学年下の藤代は、1986年に歌手デビューするもヒットはならず、女優としても大々的にプッシュされることもなく、映画やテレビドラマに主演経験のないまま、1994年頃に芸能界を離れている。

第2回の小高恵美、第3回の今村恵子は引退状態も、ゴジラ映画に出演で世界に知られた存在に

 第2回「東宝シンデレラ」は、3年後の1987年に行われた。

 グランプリ受賞者・小高恵美は当時14歳の若さで、1988年春に「正統派少女」というキャッチフレーズでアイドル歌手デビューし、同時期にテレビドラマ『花のあすか組!』(フジテレビ系)に主演する。しかし、80年代終盤は女性アイドルが供給過多によって飽和状態になっていた時代であり、小高は第2の斉藤由貴にはなれなかった。ただし彼女は『ゴジラvsビオランテ』(1989年)以後、『ゴジラ』シリーズに6作連続で同じ役で出演したことで名前を残した。2000年に引退しているが、2010年以降はゴジラ関連のイベントに出席する、取材を受けるなどしている。

 その小高よりも高い知名度を得たのが、第2回の審査員特別賞を受賞した水野真紀だ。彼女は歌手デビューすることなく女優業に邁進。多くのテレビドラマに出演し、2時間サスペンスものではいくつもの主演シリーズがある。2004年に自民党所属の衆議院議員・後藤田正純と結婚後も女優活動を続けている。

 1991年に行われた第3回「東宝シンデレラ」は、「明か? 暗か?」でいえば「暗」だろう。

 グランプリの今村恵子、審査員特別賞の大沢さやかという2名の新人がデビューしているが、両者はその後、東宝系の映画に主演することも、先輩たちのようにゴールデンタイムの連続ドラマや、NHK連続テレビ小説のヒロインになることもなかった。今村は往年の東宝女優を彷彿させる正統派美人だったが、今は東宝芸能に籍がない。またものまね芸人の栗田貫一と結婚した大沢は、東宝芸能に所属はしているものの、ここ何年も目立った女優活動を確認できない。

 ただし、両者は揃って『ゴジラvsモスラ』(1992年)など3本の『ゴジラ』映画において、かつてザ・ピーナッツが演じた「小美人」に相当する「コスモス」の役で出演しているので、世界のゴジラファンには知られる存在ではある。

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第5回「東宝シンデレラ」で、東宝は金脈を掘り当てたといえる。グランプリ受賞者の長澤まさみ(当時12歳)だ。画像は、2020年に発売された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』の通常版DVDジャケット( ポニーキャニオン)。

過去の不作を補ってなおあまりある、第5回・長澤まさみの発掘

 第4回「東宝シンデレラ」は5年後の1996年に開催され、 野波麻帆がグランプリ、田中美里が審査員特別賞を受賞した。

 野波はデビュー2作目の映画『愛を乞うひと』(1998年)での演技で各映画賞の新人賞などを得る実績もあった。ただし、東宝が毎年リリースする「東宝カレンダー」の表紙を飾るようなスターにはならず、バイプレーヤーとして今も活動中だ。

 一方、田中は野波よりメジャーな活動をした。1997年にNHK連続テレビ小説『あぐり』のヒロインの座を射止め、翌年にはテレビドラマ『WITH LOVE』(フジテレビ系) で竹野内豊の相手役を務めた。また、映画『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(2000年)では東宝シンデレラとして初めてゴジラと戦うヒロインを演じ、メガヒットした韓国ドラマ『冬のソナタ』でのチェ・ジウの吹き替えを担当したことでも知られる。ところがその田中も、2012年に東宝芸能を離れてしまった。

 4年後の2000年の第5回「東宝シンデレラ」で、東宝は金脈を掘り当てた。グランプリ受賞者は、長澤まさみ。当時12歳だった長澤はその後、興行収入85億円を記録した『世界の中心で、愛をさけぶ』でヒロインを演じ、最近作の『コンフィデンスマンJP』シリーズなど、数々の東宝配給映画に主演することになる。話題作『シン・ウルトラマン』の公開も控える彼女は、まさに東宝シンデレラの名にふさわしい存在だろう。

 なお、その長澤と共に『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)などで小美人役を演じ、2017年に俳優・鈴木浩介と結婚した大塚千弘(以前は大塚ちひろ)は、第5回の審査員特別賞受賞者である。

第6回は3万超の応募からグランプリ・黒瀬真奈美らが選ばれるも、“早期離脱”の悲劇

 長澤人気もあり、2006年の第6回には、過去最多の3万7443人の応募者があったという。しかし残念ながらこの回は、不作といってもよい結果となった。東宝芸能はグランプリの黒瀬真奈美、審査員特別賞の増元裕子、池澤あやかの3名をトリオで売り出し、グラビアアイドルとしても活動させたが、不発に終わったのだ。

 黒瀬は2007年に松嶋菜々子主演の映画『眉山』や、テレビドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)にレギュラー出演したものの、わずか4年で活動休止を発表。増元も芸能界を去った。コンピューターのプログラマー、ソフトウェアエンジニアとしてのスキルを得た池澤は今も東宝芸能所属だが、女優ではなく専門分野での活動が中心になっている。

 黒瀬が去った後、第6回の決戦大会に残ったことをきっかけに東宝芸能入りしていた朝倉あきがプッシュされたが、彼女も2014年に芸能活動休止を理由に東宝芸能を離れてしまった(その後、別事務所で復帰)。

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第7回「東宝シンデレラ」は空前の“大豊作”で、東宝芸能は多くの新人を獲得した。画像は、この年のグランプリ受賞者・上白石萌歌の1st写真集『まばたき』(宝島社)。姉の上白石萌音は審査員特別賞を受賞し、姉妹そろって大活躍中だ。

一転、第7回は上白石姉妹、浜辺美波ら空前の“大豊作”に

 一転して大豊作といえるのが、2011年の第7回だ。

 グランプリは上白石萌歌(当時10歳)で、審査員特別賞に上白石萌音(当時12歳)、秋月成美(当時14歳)、松島純菜(当時13歳)、山崎紘菜(当時16歳)の、過去最多の4名が選ばれた。

 さらに、新設された「ニュージェネレーション賞」を小川涼(当時10歳)、浜辺美波(当時10歳)の2名が受賞している。このほか、決戦大会に残った吉田まどか(当時13歳)、兼尾瑞穂(当時14歳)、鎌田楓子(当時14歳)の3名も併せ、東宝芸能は一気に上記10名の新人を獲得。これは新世代のスター候補を育成しようとする意気込みの表れであるとともに、ハロプロ、AKB以降のグループアイドルブームの影響をうかがわせるものだった。 

 メンバーにローティーンが多かったこともあり、東宝芸能は彼女たちを時間をかけて育てる戦略をとった。特にグランプリ受賞者の上白石萌歌だけを大プッシュすることもなく、それぞれにチャンスを用意した。見方を変えれば、新人たちをふるいにかけ、過酷な生存競争を課したともいえる。その過程で、ひとり、またひとりと芸能界から姿を消し、生き残った上白石萌音、上白石萌歌、浜辺美波が若手主演級女優としてブレイク。もうひとりの生存者である最年長(現在26歳)の山崎紘菜はモデル業もこなし、海外の作品に出演するなど活動の幅を広げている。

上白石姉妹、浜辺美波ブレイクの反動か、第8回のメンバーはいまだ温存状態が続く

 今のところ最後に行われたのは、2016年の第8回である。

 ここから、グランプリの福本莉子(当時15歳)、審査員特別賞の井上音生(当時12歳)、柿澤ゆりあ(当時13歳)、神谷天音(当時13歳)、鈴木陽菜(当時13歳)、決戦大会出場者の稲川美紅(当時13歳)、高橋菜加(当時10歳)、中田乃愛(当時13歳)らが東宝芸能入りした。

 だが、オーディションからすでに4年以上が経過した現在、このメンバーから誰もが知る若手人気女優が育ったとは、いまだいい難い状況だ。公式サイトに名前はあるが、活動実績が皆無に近い者もいる。東宝はあえて若い彼女たちを温存しているとみることもでき、これから本格的に売り出していく可能性も高い。果たして、そこから上白石姉妹、浜辺美波に続く者が現れるのか? 

ミゾロギ・ダイスケ

ミゾロギ・ダイスケ

ライター・編集者・昭和文化研究家/映画・アイドルなど芸能全般、スポーツ、時事ネタ、事件などを守備範囲とする。今日の事象から、過去の関連した事象を遡り分析することが多い。著書に『未解決事件の昭和史』(双葉社)など。

Twitter:@D_Mizorogi

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